焔【ほむら】と雪【ゆき】 京都探偵物語

  • 早川書房 (2023年8月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784152102645

作品紹介・あらすじ

探偵・鯉城は「失恋から自らに火をつけた男」には他に楽な自死手段があったことを知る。それを聞いた露木はあまりに不可思議な、だが論理の通った真相を開陳し……男と女、愛と欲――大正の京都に蠢く情念に、露木と鯉城が二人の結びつきで挑む連作集

みんなの感想まとめ

大正時代の京都を舞台にした探偵ミステリーは、元警官の鯉城と病弱な伯爵の血を引く露木のコンビが織りなす物語です。彼らは様々な事件に挑みながら、独特の絆を深めていきます。連作短編形式で構成されており、各章...

感想・レビュー・書評

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  • 大正時代の京都で起こる奇妙な事件、かつての時代にタイムスリップさせてくれる探偵ミステリー #焔と雪

    ■あらすじ
    大正時代の京都。元警察官であった主人公、鯉城は探偵業を営んでいた。能力も人脈もあった彼のもとには、様々な事件や調査の依頼が舞い込んでくる。華族でありながらも病弱であった友人、露木とともに難題な謎に取り組んでいく。

    ■きっと読みたくなるレビュー
    コージーミステリーかなと思って読み始めましたが、各章ごとにつぎつぎと放火や殺人事件が発生する、しっかりとした探偵ものです。書き下ろしですが連作短編の構成になっており、全五編の気の利いたミステリーを楽しめる作品。

    大正時代の社会や世の中が見えてくるし、文章の表現もレトロ調で素敵。かつての日本にタイムスリップさせてくれるんです。

    本作は主人公の探偵鯉城と友人露木、この二人の関係性や掛け合いが面白い。まさにテレビドラマの相棒を見ているかのようで、信用信頼だけではない、ちょっと風変わりな繋がりが魅力。

    謎解きも思った以上にハッとするものがあって、なかなかスゴイ。特に後半からの展開は二人の距離感や価値観にも関連してきて、作品としてもぐぐっとレベルアップしていきますね。
    そして大正時代の出来事にも関わらず、裏にある動機は現代的だったりするんです。でも、行動としては前時代的なの。これが奇妙で興味深い、上手に組みあわせたなぁと感心しちゃいました。

    ミステリーでありながら、大正時代の文化や社会を体験することができる、時代文芸作品としても味わい深い作品でした。

    ■ぜっさん推しポイント
    本作、メインの二人の描写が素晴らしいのですが、事件に巻き込まれる登場人物たちにも引き込まれてしまう。当時の社会や環境、時代背景のなかで、彼らはどんな思いで生活をしていたのか。

    いつの世も男と女、金と欲…、不満や欲望を抱える我々人間社会。周りの人々を幸せにするために、できることは今も昔も変わらないような気がしますね。

  • 大正時代の京都を舞台にした探偵バディもの。
    元刑事の鯉城(りじょう)が調査を担当し、貴族の隠し子で病弱で家から出られない露木が安楽椅子探偵のように謎を解くという構図。
    二人は共同経営者であるが幼馴染。鯉城にとって露木は謎を解き明かしてくれる名探偵であり彼の縁故もまた探偵事務所の経営に一役買ってくれているのだが、露木にとってもまた鯉城との探偵業経営は外との世界を繋ぐものでもあり、また鯉城との絆を深めるものでもあった。

    誰もいないのに騒ぎ声が聞こえる山荘。
    ストーカーの焼身自殺。
    浮気調査を受けた夫婦とその疑いを受けた男三人の斬殺事件。
    社長夫人を脅迫する元夫と現夫の死。

    男女の情念が絡んだ事件を、表向きの物語とは違う真相を露木が解き明かすのだが、それが本当の物語かどうかは分からない。
    だがこの作品は推理が正しいのかどうかが本筋ではなく、鯉城と露木とのバディとしての物語。特に露木が謎解きをする意味は、露木のそれまでの人生もあって切ない気持ちになる。
    それは露木の世話係である溝呂木にも通じるものがあって興味深い。
    狭い世界で生きる露木と、外の世界で様々な人たちと交わりながら胸に抱える者もある鯉城との関係は個人的には好きなタイプなので面白く読んだ。
    出来れば二人の今後も見たいが、何しろ虚弱体質の露木だけに難しいか。

  •  伊吹氏の過去2作品には、実在の人物が登場したが今回は誰もいない。
    主人公鯉城武史は元刑事で、ある理由から警察官を退職した。

     露木という人物から声をかけられ、探偵事務所を開き共同経営をしている。屋号は、鯉城探偵事務所という。なぜか露木の名前が入っていない。物語を読み進めると、探偵の依頼を鯉城が受け、実際の調査活動も鯉城が遣っているからなのだろうと推測していた。

     露木は、事務所にも出勤していない。判断に困る案件があった時だけ、鯉城は露木の家を訪れ相談をしている。事件があっても現場には赴かず、主に鯉城から状況説明や資料を基に推理に徹している安楽椅子探偵なのだ。

     目次は以下の通り
     第一話 うわん
     第二話 火中の蓮華
     第三話 西陣の暗い夜
     第四話 いとしい人へ
     第五話 青空の行方

     鯉城と露木の関係は、唯一無二の幼友達とだけ伝えておこう。そして出生の秘密がある。
     彼の推理は、いつも鯉城を呻らせる。しかし探偵事務所は、犯人を逮捕する必要がないのだ。露木の推理がどんなに素晴らしくともそれが真実とは限らない。
    鯉城の推理は、自分にとって都合のいい物語を創った。
    露木が反論「真実が人を救うとは限らないじゃないか」

     〈ときに熱く ときに冷たく きみと謎解くいとしさよ〉(帯より抜粋)
     過去の作品の中で、この作品が一番面白いと感じた。
     読書は楽しい

  • 大正時代の京都が舞台の探偵モノ。

    寺町二条に事務所を構える元警官の探偵・鯉城と、事務所の共同経営者で伯爵の血筋である露木が、様々な謎を解いていく連作五話が収録されております。

    京都の風情と、各々の事件の背景に渦巻く“人の業”といった“陰”の気配が絶妙にマッチして、全体的に薄暗いけどしっとりとした雰囲気が漂う物語。
    で、この雰囲気自体は結構好きなのですが、これは文体との個人的な相性だとは思うのだけど、ちょっと読みにくかったかな・・というのはありました。
    さて本書は、外で探偵業務をする鯉城に対して、蒲柳の質で家から出れない露木が、鯉城から事件の情報を聞いて安楽椅子探偵ばりに推理をするという流れなのですが、いわゆる“事件解決”的なものではなくて、あくまで露木の“考察”というか持論的なものを述べている感じなので、その辺りが一般的なミステリとは違って独特な印象を受けました。
    なので、第一話から第三話までは露木の推理に対して“仮説”っぽさがぬぐえず、特に第二話「火中の蓮華」での、執着していた女性の家に付け火をしたという疑いを持たれた男が焼死した理由については、もはや推理ではなく露木の妄想では?と、モヤっていたのですが、第四話「いとしい人へ」で語られる、露木の生い立ちと彼の鯉城への想いを読むと、露木が真相云々より“鯉城の為に”謎解きをしていることが判ってくるのですよね。
    その辺を理解すると“なるほどねー・・”と腑に落ちると共に何とも切ない気持ちになった次第です。
    そして、第五話「青空の行方」では鯉城も露木的なスタンスで“ある人の為の謎解き”をしていましたね。

    事件内容が痴情の縺れが絡んだものが多かったという事もあるかもしれませんが、真相を解明するだけではない、人の心情をくんだ“謎解き”というのもある意味アリなのかな・・と思わせて頂いた内容でした。

    因みに、鯉城と露木の友情(バディっぷり)も勿論良いのですが、個人的に気になったキャラは、露木家の家令・溝呂木さんが有能&いぶし銀で好きでした~。

  • せつない一冊。

    大正時代、京都、探偵のワードに惹かれて手にした作品は病弱な露木と元警察官のアクティブな探偵、鯉城、この二人がさまざまな謎を独自に解き明かす五話からなる連作ミステリ。

    露木の目から鱗の謎解きはハッとするほどの見せられ感。

    この安楽椅子探偵の鮮やかな謎解きが、ある意味単調さが続くのかと思いきや、ある時点でガラッと色味が変わる。
    まさにせつなさ色にせつない吐息。

    秘め事ほど心キュッとくるものはない。

    降り積もる雪はまるで一変する景色、胸の内を隠し何かを隠す象徴のよう。

    こういうテイスト好き。また会いたい二人。

  • 普段推理小説はあまり読まないので、事件の真相にこじつけ感がある気がするが、創作だとこんなものなのだろうと思い込んだ。

    だから、第四話で全ての事件の真相はみ「鯉城のための作り話」と知ったときは、驚きで鳥肌が立った。この話からようやくページをめくる手がスラスラ進むようになった。

    タイトルの焔と雪。最初は表紙の構図をみて2人の位置に違和感があった。だけど、最後まで読むと、一見穏やかだけど心に熱い気持ちを隠す露木と、熱血漢に見えるが自身を冷たい人間だと思う鯉城を焔と雪に例えていることが分かる。深くていいタイトルだと思った。

    露木にとっての世界は鯉城のみだけど、鯉城にとってはそうでないのが切ない。

    続編を読みたいと思ったが、二人の関係が変わらないことを示唆する終わりが、1番綺麗かもしれないとも思ってしまう。

    時代ものだからか、現代ではあまり使わない言葉や漢字が多く、読むのに苦労したけど、諦めず最後まで読んでよかったと思える作品だった。

  • 京都近代バディもの。
    鯉城(りじょう)は豆腐屋の息子として生まれ、警官となったが、事情があって職を辞し、今は探偵として働いている。
    彼のパートナーでもあり、ある種パトロンでもあるのが露木。伯爵の血を継ぐ庶子で、本家には嫌われている。病弱な彼は鯉城のようには動けないが、思慮深く、頭脳明晰で、鯉城に何くれとなくアドバイスする。安楽椅子探偵型ホームズといったところである。
    舞台は大正時代の京都。浪漫漂う世界で繰り広げられる事件には、生臭い情念が渦巻く。
    鹿ヶ谷の別荘に正体不明の化け物の叫び声がする。そこに残されたのは異様に顔が腫れた男の死体。男は化け物に取り殺されたのか?
    聚楽第の娘にかなわぬ恋をした男は娘の家に付け火をする。それに留まらず、自ら油をかぶって焼死する。いったいなぜそんな死に方を?
    西陣の老舗機屋で、男女3人の死体が見つかる。社長夫妻とその弟。これは不倫の代償なのか?
    いずれも混み入った事件。鯉城はそれぞれ、結論にたどり着くのだが、露木はもう一歩、踏み込んだ「解」へと鯉城を導く。

    全5話の連作集。第4話のみ、露木の語りとなり、あとは鯉城の視点で事件が描かれる。
    通常のミステリと少々違うのは、露木の示す「解」にある種の裏事情があることだ。これはなかなか目新しい試みかもしれない。起きた事柄は1つでも、視点を変えればさまざまな見方が「出来得る」というところだろうか。

    正直なところ、個々の事件の筋は混み入り過ぎで、キレも弱い。事件解決の爽快感は得られにくい。現実世界で起こる事件もあるいはこのくらい割り切れぬものもあるのかもしれないが、それにしてもカタルシスは薄い。
    読みどころとなるのは、大正京都の濃い目の仄暗い情感と、2人の探偵の関係性だろう。
    一風変わったブロマンス。「焔(ほむら)」は直情的で頑強な鯉城、「雪」ははかなく怜悧な露木だろうが、表紙では鯉城が雪の中におり、露木は暖かな(おそらく暖炉のある)部屋にいる。いずれにしろ、対照的な2人である。
    さて、この2人、さらなる事件に挑むことはあるだろうか。

  • 大正時代京都が舞台のバディもの
    安楽椅子探偵でしょ?と思って読み進めると……⁉︎

    誰のためなのか、何のためなのか考えさせられる作品でした。
    舞台となっている大正時代の京都が文章から
    伝わってくる美しさ素敵でした。

    読み終わった後に帯を見て納得
    “ときに熱くときに冷たくきみと謎解くいとしさよ”
    この作品が2024年初読みでよかったです
    続編希望!!

  • 元刑事の鯉城が大正時代の京都を舞台に、探偵として事件を追う連作短編集。何より彼の幼少期からの友人の露木の助言で事件解決に向かうと言う設定が良かった。

  • 鯉城探偵事務所は主に依頼人との接触、事件現場の調査をメインとする鯉城と、あらゆる情報を元に推理・解決へと導く露木2人から成る。
    鯉城が「動」なら露木は「静」、これには各々の持つ役割と素性に起因している故もあるのだが。
    洞察力とコミニケーション能力の長けた鯉城に頭脳明晰であらゆる視点から俯瞰する露木は最高のパートナーで、章を追う毎にその推理力にうなる。

    生来の性格もあるのだろうがイケメンひとたらしで魅力的な鯉城。
    生い立ちと儚さからは伺いしれない露木が秘めた想い。
    そして読者は予想もしなかった「解」がある事に唖然とするだろう。

    自身を焼き尽くさんばかりの炎は群れとなり焔となる。
    その手が離れないように、雪は熱を隠す。



  • 最初は文体が合わなくて読みづらかったけど、3話くらいからするっと入ってくるようになった。
    変な言い方だけど良質なBLの香りを感じたので手に取ったのですが、なんとも良い感じのBLでした。表紙の通りの焔と雪っぷりよ。
    妖怪シリーズを読んでる最中に読んだこともあって、割とあっさりな書き方だなあと思ってしまったけど、あっちが極端に執拗なだけでこのくらいが普通なのだと思う。
    帯に「驚愕の火種は最後に燃え上がる」って書いてあって確かにその通りではあるのだけれど、ちょっとネタバレというかそこまで煽らなくてもというかこちらの感情を帯で左右しないでくれとちょっとしょんぼりしました。

  • タイトルを見て、雨と傘のシリーズ新作かと。
    まあまあ面白いけど、そんなに好きじゃないんだよなぁ(失礼)と遅めの読書。

    そしたら、全く違う作品で、しかもかなり面白かった。
    世界観もいい。
    推理がスッキリしきれずやや強引?と思う話もあったが、第四話でそれもクリアに。

    一貫して、真実が人を救うとは限らない、誰のための推理なのかという点に重きをおいている。

    毎度BLっぽくなってしまうのは、もう仕方ないのかな…

  •  舞台設定が大正時代である、鯉城と露木の二人の探偵によるミステリー。鯉城が依頼を受けて調査をしていき、露木が解決していくストーリーかと思いきや、「露木は鯉城のために謎解き、もとい物語を創造している。」という事が分かったとき、某漫画の「真実は人の数だけある。」という台詞が思い浮かんだ。この「露木は鯉城のために探偵行を行う。」「最終的に鯉城も露木のように物語を創造する。」というところが、本格ミステリーに一癖加えた独特な作風になっていて面白かった。

  • なんかミステリー読みたいなと探してたら、BLか同性愛か、まあブロマンスがあるらしいと聞き付けて読んでみた。

    ネタバラシとして4話の露木視点で「恋をしていた。」と独白があるが、個人的にはそこまで沸き立つものは無かったが、まあ面白かった。

    「うわん」
    妖怪か人かの話。妖怪に見せかけた人による殺人だけど、凶器が蜂のアナフィラキシーというのが面白い。鯉城に示した露木の推理もまあ納得が行くけど、その後に死人が出ているので、そっちは自殺か他殺か気になるものの、まあいいかと思った。

    「火中の蓮華」
    鯉城に披露した、同じ火で死にたい狂った男の話は無理があるけど、狂ってるから狂った死に方というのも、まあありだなと思った。でもやっぱ下駄屋の男おかしくない?とも思った。

    「西陣の暗い夜」
    心中の後に、偽装して自殺説。ややこし。実際は強盗の後に自殺。強盗犯捕まんないのダメだと思うが、ここでは鯉城の心情が重要視されているので良かった。妻に蔑ろにされた与一に自分を重ねる鯉城。そのコンプレックスがちょっとよくわからない。弓枝という女性の具体的な人物像が出てこないので。
    妻のことを本当に愛していたのか?とか。妻は幸せだったのか?何を後悔してるのかいまいちピンとこない。
    妻が死んで悲しいのはわかるが、与一のように自分は妻を愛してる自分に酔っていたのでは?ということらしいが、なんかピンと来なかったな。というか、この時代なら周りが縁談持ってきそうだけど、露木が止めてんのかな。

    「いとしい人へ」
    焔と雪の由来の一つの焔がカルラである露木で良いとして、雪がわからん。最後のほう、雪降ってたけど。
    露木のネタバラシ回。鯉城という読者を引き付けておくための推理が良い。鯉城を罪の意識から救うための推理が、この関係を維持するためのものであり、エンタメになっていく。

    「青空の行方」
    亡き妻である弓枝に似た女性を救うために、露木と同じように、彼女のための推理をする鯉城。
    露木はそれに気付くが、鯉城は気付かない。ボーイは気付くと思うんだけどなあ。自分が指示された薬を幸助が持っていって死んだら、あれ?とならんか。

    全体的に大正の雰囲気を感じさせる小物や地図で面白かった。鯉城のほうも露木に対して疑念があれば良かったかなあ。どうなんだろう。
    歪な探偵と助手の関係なら、麻耶雄嵩の木更津やメルカトル鮎が大好きなので、それくらいのやりすぎさがあっても良いかなと思った。個人的には。

    でもまあ、助手のための謎解きをする探偵も良いな。いつまでも親の庇護下にいてね、という傲慢さと依存さがある。

  • 元刑事の探偵鯉城が遭った事件を幼馴染の露木が安楽椅子探偵となって謎を解く・・・という流れの連作短編。

    なんというか・・・露木があかす真相がどれもそんなに意外性がなくてパッとしないな・・と思っていたら露木が語り部となりさらなる真相が。でもなんだろうな、いまいちピンとこなかったかな。真相を隠す露木の心情みたいなものが。あっと驚く真相!というほどでもなかったし・・・むしろイヤミスよりですらあった・・このあたりは好みの問題ですけども。

  • 推理があまりスッキリしないなあ…?と思いながら読んでいたら、後半で納得。真実を突き止めながらも、《誰のため、何のため》に謎を解くのかを優先して推理を完結させる探偵の姿は人間味もあって、面白かった。鯉城と露木のキャラクターも名コンビで良かった。

  • バディものの結局そういう設定にはもうゲップが出るのだが…雰囲気はよかったかな。謎解きは、ううむ。

  • 大正時代、京都で探偵事務所を経営する幼馴染の露木と鯉城。元警官の鯉城は調査を担当し、伯爵の血筋であり病弱な露木はその知恵をもって事件の謎を解き明かす。レトロな時代感と二人のバディ関係が読みどころの連作ミステリです。
    さまざまな事件に遭遇し、その謎解きを露木に求める鯉城。行動派の鯉城と頭脳派の露木、という対照的ともいえる組み合わせはありがち……と思ったのですが。焔は露木の方だったのか……。この二人の関係性は良いですねえ。彼らの物語はずっと読んでいたくなります。個々の事件の謎解きも見事……だと思ったのだけれど、一筋縄ではいかない仕掛けがありました。
    お気に入りは「いとしい人へ」。それまでの謎解きがある意味ひっくり返る、驚愕の章です。それと同時に明かされる、彼が謎を解く理由。探偵としてこの謎解きが正しかったのかどうかはわかりませんが、しかし物語としてはこれが最適です。

  • 大正の京都。伯爵の血筋でありながら一族に忌み嫌われる露木の病弱な体は、日々蝕まれていた。だが祇園祭の宵山も盛りの頃、露木は鯉城に出逢う。頑強な肉体の彼が、外の世界を教えてくれたから、心が救われた。その時から、露木は鯉城のために謎を解く。それが生きる証…… ある日、鯉城は女から恋人のふりをしてほしいとの依頼を受けるが、恋に取り憑かれた相手の男が月夜に女の家に付け火をし、自らに火をつけて焼死したと聞く。男は猟銃を所持していたが、なぜ苦しい死を選んだ? この事態に悩む鯉城のため、露木はあまりに不可思議な男の死の理由を推理する。 その他「鹿ヶ谷の別荘に響く叫び声の怪」や「西陣の老舗織元で起こる男女の愛憎劇の行方」など、京都に潜む愛と欲の情念はさらに渦巻き、鯉城と露木の二人は意外な結末に直面する。


    探偵事務所を営む鯉城と安楽椅子探偵の露木のお話。鯉城が調査した事件の全貌を露木が解いていくというかたちで話が進んでいく。
    大正時代の雰囲気とかが文章から伝わってくるかんじだった。この時代の話が好きだから良かった。


    今で言うストーカーに遭ってしまった女の子の話は、最初はなんだか「そんなかんじなの?」って思ったが、まさかの4章で明かされた本当の事件の全容と露木が探偵をする本当の意味。まさかだった。露木は外の世界を全て鯉城の教えてもらった。露木の全ては鯉城。

    「謎を解かなければ、鯉城は行ってしまう。僕には耐えられない。到底、耐えることなど出来ないのだ」

    露木の本音。切ないなぁ。そして、最後の鯉城が行った依頼人への優しい嘘。もう本当になんなの。最後の最後にこんなに切ない話になるの。はぁ、尊い。ただそれだけだ。


    2023.10.29 読了

  • 初読の作家さん、ノスタルジー漂う雰囲気いいですねー。漢字たっぷりなのも、文字フェチには堪えられません。舞台となる京都もなんとなく雰囲気わかるので、風景がイメージできて楽しめました。二人の関係性もよかったです。冒頭の「うわん」.こんなふうに聞こえるものか、と思えましたね。諸事情で◯◯にトラウマにありますが、さらに高まりました。

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著者プロフィール

ミステリ作家。1991年、愛知県生まれ。同志社大学ミステリ研究会出身。「監獄舎の殺人」でミステリーズ!新人賞を最年少受賞。2018年に同作を収録した『刀と傘 明治京洛推理帖』(東京創元社)で単行本デビューし、翌年に本格ミステリ大賞を受賞した。このほか著作に、『刀と傘』の前日譚となる『雨と短銃』(東京創元社)、『幻月と探偵』(KADOKAWA)がある。

「2022年 『京都陰陽寮謎解き滅妖帖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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