- 本 ・本 (560ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152102737
作品紹介・あらすじ
セイディはMITの学生。ある冬、彼女は幼い頃一緒にマリオで遊んだ仲のサムに再会する。二人はゲームを共同開発し、成功を収め一躍ゲーム界の寵児となる。だが行き違いでゲーム制作でも友情でも次第に溝が深まっていき――。本屋大賞受賞作家による最新長篇
感想・レビュー・書評
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★5 秀才ゲームクリエイターの愛と友情の物語 #トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー
■はじめに
子どもの頃、友人と一緒にファミコンで遊んだ日々が懐かしい。スーパーマリオ、ゼビウス、ドルアーガの塔、ドラゴンクエスト…数々の名作を思い出す。
大学生の頃はアルバイトで稼いだお金を全て話題作につぎ込み、休み前は友人宅で夜通しで対戦ゲームに入れ込み、初めてつないだオンラインゲームで、見も知らずの外国人と朝までチャットに興じたり。
今ではあまりゲームに時間を割くことは少なくなりましたが、私も本作の登場人物と同じように、ゲームが大好きなひとりなんですよね。ゲームクリエイターたちの物語があると知り、ぜひ読んでみたいと思いました。
■あらすじ
ハーバード大学に通っているサムは、ある日幼馴染のセイディと出会う。彼女もMITに通う大学生であった。彼らは幼い頃にスーパーマリオを楽しんだ仲だった。ゲームに対する愛情とスキルを持っていた二人は、サムの友人であるマークスと共に、自分たちだけでゲーム制作に挑戦する。そして完成した「イチゴ」というゲームは世界中で大反響を呼ぶことになるのだった。
彼らはさらに面白いゲームを作り続けるはずだったのだが、少しずつ価値観がずれ始めていき…
■きっと読みたくなるレビュー
友人、親友、仕事仲間、恋人、夫婦、家族…人と人との繋がりは様々な種類がある。そして人の環境は常に変化し、日々生活をしながら年齢も重ね、さらに価値観や経験値もアップデートされてゆく。本作はゲーム作りと会社経営を通して、人間の色々な絆の形を描いた作品です。
本作は粘り気のある強い文章で綴られており、読者の胸を締め付ける気の利いたセリフが印象的。読めば読むほど、人の心の深みに入ってしまう感覚に陥ってしまい、感情移入が半端ないのよ。
様々な過去の経験から、少しだけ偏った性格を持ち合わせた彼ら。大人が端から見ていると、もっと相手の気持ちを考えて仲良くやれよって思うかもしれませんが、それだとモノづくりなんて成功しないんですよね。個々の想いと情熱をぶつけることで、はじめて最高傑作が生みだされる。
そして出会った頃から異性としても惹かれ合い、誰よりも相手を思いやる気持ちはあるにも関わらず、いつも喧嘩が絶えない。相手のことは誰よりも知っているのに、自分と相手の間にある食い違いを理解し、それを調整しようとする意思がない。友情も愛情も超えた精神的な部分でつながっているのに、決して幸せにはならない。ゲーム制作という夢が実現して、経済的にも成功しているのに…
ゲームでハッピーエンドを迎えるのは容易ですが、人が幸せになるのは、本当に難しいですね。しかし彼らの努力はしっかり目に焼き付けました。「よくがんばったね」と、彼らを抱きしめたくなる、そんな素敵な作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
〜明日、また明日、そしてまた明日と、
記録される人生最後の瞬間を目指して、
時はとぼとぼと毎日歩みを刻んで行く。
そして昨日という日々は、阿呆どもが死に至る塵の道を
照らし出したにすぎぬ。消えろ、消えろ、束の間の灯火!
人生は歩く影法師。哀れな役者だ、
出番のあいだは大見得を切って騒ぎ立てるが、そのあとは、ばったり沙汰止み、音もない。
白痴の語る物語。何やら喚きたててはいるが、
何の意味もありはしない。〜
ちくしょう、シェイクスピアめ!-
一Qさん
分かる!
ゆーさんが春画でぬらぬらとか言うても、「また下ネタか!」って思うだけだもんな!一Qさん
分かる!
ゆーさんが春画でぬらぬらとか言うても、「また下ネタか!」って思うだけだもんな!2025/01/18 -
2025/01/18
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ですよねー、ひま師匠!
困ります┐(´д`)┌ヤレヤレ
いとうあさこ<大久保佳代子<ゆーき本
という構図ですなですよねー、ひま師匠!
困ります┐(´д`)┌ヤレヤレ
いとうあさこ<大久保佳代子<ゆーき本
という構図ですな2025/01/18
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読書備忘録911号。
★★★★★。
久しぶりの翻訳本。堪能しました。
作者はあとがきで、この作品は働くことの小説である。と言っています。
さらに作者は、この作品は愛についての小説である。とも言っています。
加えてシンタローは、この作品は家族についての小説である。と言っています!
しつこくシンタローは、この作品は生きることについての小説である。とも言っています!
アンフェア・ゲームズ社のメンバーは家族ですよ。
どんなにすれ違っても、いがみ合っても、愛し合っても家族という関係だったんだと思う。
なので絶対に見捨てず、置き去りにせず、寄り添う。家族だから。
そして最後、さて次のゲーム作ろうか!で終わる。
主人公サム・メイザーとセイディ・グリーンは幼馴染み。
大学生となったサムはハーバード。セイディはMIT。
ボストン近郊ケンブリッジで再会した。
そしてゲーム制作に賭けた彼らの30年が語られる。
11歳の頃、彼らはロスの病院で出会った。
セイディは小児がんで入院する姉のお見舞いで。
サムは交通事故で負った二十数か所の骨折の治療で。
サムはゲーム(スーパーマリオ!)をしていた。それを後ろから見ていたセイディ。
サムはコリアンタウンで祖父母と共に住む貧困の少年。
セイディはユダヤ系でビバリーヒルズの高級住宅街に住む金もち。
サムは心を閉ざしていた。それをセイディが開いた。
そして唯一無二の友達になるが、誤解が彼らの仲を引き裂く。
(この誤解は物語の30年を通じて禍根を残し続ける)
大学生となり再会したした二人。
サムはセイディから課題で作ったゲーム「ソリューション」を渡される。
ルームメイトのマークスとソリューションをやったサムはその出来栄えに衝撃を受ける。
一方セイディは、MITでゲーム制作を教えるカリスマクリエーターのドーヴ・ミズラー(妻帯者)と恋人関係。そして破局。
セイディは外界との接触を一切拒絶した。
サムの献身的な働きかけで復活したセイディは、マークスを加えた3人でアンフェア・ゲームズを立ち上げ、世界的な大ヒットゲーム「イチゴ」をリリースする!
という感じで物語の導入部は語られる!
そんなに厚くない本なんですが、紙が薄い薄い!550pくらいあるので、このあたりで200pくらいか・・・。
ここからは、ゲーム開発に情熱を注ぐあまりすれ違い、仲違いしつつも、家族であり続ける彼ら3人の生き様が語られる。
備忘録として全てカット!割愛!面倒くさい!
こういう小説って、読んでる自分も彼らのそばでずっと寄り添っていたと錯覚させる。
備忘として主人公3人の物語を整理してみた。
天才ゲームプログラマーのセイディ。愛情深く、だけど嫉妬深く、妬み、嫉みに溢れ、頑固で多感な少女の物語。
天才ゲームデザイナーのサム。コンプレックスのかたまり。不器用が歩いている。孤独。コミュ障と言っても良い頑固な少年の物語。
天才実業家のマークス。いい意味で人転がしの天賦の才を持つ。良いやつ。良い奴過ぎて・・・(T_T)、の物語。
そして作品名はシェイクスピア!
「明日、また明日、そしてまた明日と、
記録される人生最後の瞬間を目指して、
時はとぼとぼと毎日歩みを刻んで行く。
そして昨日という日々は、
阿呆どもが死に至る塵の道を照らし出したにすぎぬ。
消えろ、消えろ、東の間の灯火!
人生は歩く影法師。哀れな役者だ、
出番のあいだは大見得切って騒ぎ立てるが、
そのあとは、ぱったり沙汰止み、音もない。
白痴の語る物語。何やら喚きたててはいるが、
何の意味もありはしない。」
知らんし!ジジイは全然知らんし!
ガブリエル!説明してくれ!ジジイに!
でもこの言葉。この作品の根幹?言い得て妙?
百聞は一見に如かず!
百レビューは一読に如かず!
気になったら、この作品読むべし!-
2025/04/19
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確かに、長いのは、ユッキー化したか?とは思いました〜笑
人を惹きつけるレビューのコツってなんなんでしょうね?
自分の好きに書いてたら、ええと...確かに、長いのは、ユッキー化したか?とは思いました〜笑
人を惹きつけるレビューのコツってなんなんでしょうね?
自分の好きに書いてたら、ええとは思いますけどね。2025/04/19 -
ウルトラさま
私にとって良いレビューは、10年後に読んで、そうそうこういう話やったわ!って思い出せる自分用備忘録!
それって詳しめの粗筋やん...ウルトラさま
私にとって良いレビューは、10年後に読んで、そうそうこういう話やったわ!って思い出せる自分用備忘録!
それって詳しめの粗筋やんか!2025/04/20
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サムとセイディの30年弱を、共に葛藤しながら伴走させてもらった。
私は、こういう主人公と長い時間を過ごせる小説が好きみたい。
深くその人を知れるから。
才能のあるお互いがお互いにとって唯一無二の存在であるふたりが、ゲーム作りを通して時を重ねていくんですが、価値観のズレに傷ついて、猜疑心や嫉妬心で溝ができてしまう。
でも、周りに素敵な仲間や家族がいて、ふたりを見守ってくれている…
たくさんの苦難を乗り越えて、互いの大切さを知る。
等身大の人間っぽさが、すごくよかった!
安っぽくふたりを恋仲にしないのがよかった!
現実の辛さを、ゲームで癒されていく描写もすごくよかった。深くて寄り添ってくれる感じがたまらなかった。
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いやー、おもしろかったぁ…。偶然出会った本で読み終わったあとこんなふうに思えるのは年に2-3回あるかどうかだと思っているけど、それに1月早々出会ってホクホクした気持ち。
物語の前半の舞台は、アメリカ東海岸のボストンはケンブリッジエリア。1990年代、子供の頃の親友であるハーバード大の男子学生サムとMITの女子学生セイディは再会を果たし、ある夏一緒にゲーム開発をする。男女だけど2人は友達。恋人にはならない。恋よりも愛よりも濃い信頼で結びついた2人は、バディとしてゲームを開発し、成功を目指す。
一方は足が不自由なアジア系、もう一方は裕福なユダヤ系。そして彼らを支援しのちにプロデューサーになるのは、日系の同窓生のルームメイト。アメリカらしい多様な文化とスタートアップスピリット。物語の前半は、わくわくする青春ものだ。まだ何者でもない持たざるものが、未熟ゆえに強さを発揮する。
後半の舞台は西海岸。ビジネスに成功した三人はロサンゼルスに移住し更なるゲーム開発を進めるが、大人になるにつれ、人生の苦味が出てくる。人間関係にも変化が…人生は簡単じゃないね。3人の、あるいは2人の友情はいかに…。すれ違い、そして悲劇。
何かに打ち込めること、唯一無二の仕事のパートナーがいて何かを創造できること、素敵だな。苦難に満ちた子供時代を送ったサムを支えたセイディとゲームで遊ぶ日々、そして苦難に満ちた大人時代を送るセイディに救いを差し伸べるサムのゲーム。
なるほど、ゲームの中では誰もが現実の制約からは自由で、ゲームの中では命をなくしても何度でも挑戦ができる。ゲームの世界にはクリエイター自信が反映される。ある人のためだけに世界を作り込むこともできる。
いつだって、いつまでも、僕とゲームを作ろうとセイディを誘うサム。ラスト、この2人は大丈夫だ、また冒険に出かけるだろうという幸せな予感で物語は閉じられる。何かに打ち込む人は、一生、青春なんだなー。ゲームと違い現実の人生はリセットできないしフェアじゃないけど、さまざまなものを抱え込み続けながら前進する姿が、現実の人間の美しさだ。
ちなみにタイトルは、シェイクスピアの戯曲の中のセリフから。そして表紙は北斎だ。著者の教養の深さも物語に厚みを持たせていると思う。-
これ!
ずっと読みたい本リストの中で冬眠してる作品です!レビュー拝見して一気に読みたい熱で雪が溶けそうです!これ!
ずっと読みたい本リストの中で冬眠してる作品です!レビュー拝見して一気に読みたい熱で雪が溶けそうです!2025/01/11 -
Penguinさん、Shintak5555さん、コメントありがとうございます!ネタバレを避けたくてあまり詳細は書けなかったのですが、登場人物...Penguinさん、Shintak5555さん、コメントありがとうございます!ネタバレを避けたくてあまり詳細は書けなかったのですが、登場人物の背景や人物造形、時代設定、開発するゲームの内容など、細部も面白くて。
海外もの特有の読みにくさが最初はあるのですが、この人たちの人生がどうなってゆくのかと、気づくと夢中で読んでました…!
日本の要素も取り上げられてて興味深いです。2025/01/14 -
2025/01/14
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映画化されたらいいなと思いながら読んだ。サムとセイディは友情、愛情以上のもので繋がっているんだな。*「明日、また明日、そしてまた明日 [中略] プレイを続けてさえいればいつか勝てるという希望だ。」
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前々から面白そうと気になっていたけど、結構なボリュームでちょっと尻込みしていた。でも読み始めてみたらボリュームは問題にならないくらい、面白く、切なく、でもとにかく読んでよかったと思う一冊となった。
ゲームが好きな人はもちろん、あまりやったことのない人でも、ゲームの世界の魅力を十分に味わえるし、その制作の過程で生じる葛藤や衝突、成功と挫折、評価と中傷が高解像度で描かれていてそれもこの作品の魅力になっている。
ゲームをきっかけに出会い、作る側となって一躍有名になって、幾度か断絶の危機を経ながらも四半世紀続くサムとセイディの友情は何と名付けられるだろう。二人が抱える孤独や傷、痛みや苦しみが理解を遠ざけ、すれ違いを生むけれど、愛以上のものを互いに抱いている。二人の間にできた溝は愛ゆえにということか。冒頭にあるエミリー・ディキンソンのたった4行の詩が作品全体に投げかける問いは深く、一読ではなかなかクリアできそうにない。
後半で起きた悲劇は辛く、ゲームの世界ではやり直しできても、現実はそうではない。生きている限り刻まれた傷も、重い体も心もすべて引き連れて生きていくしかない。そして死んだ者はリセットボタン一つで生き返ることはない。
たった一度きりのプレイしかできない人生というゲームを続けることは時にとても難しく感じる。それでもときに現実から離れてのめり込める好きなことや、出会えてよかったと思える人がいることは救いになる。ゲームに救われたサムやセイディのように。二人が出会った奇跡のように。
ゲームと人生がこんなに深くつながっていると思わなかった。また時をおいて再読してみたい。 -
なんだか最近レトロ・ゲーム愛が止まらない。年とった証拠か。
そんなゲームの制作を背景にした男女の物語があると聞いて読んでみる。うーん、男女の友情?愛が一周回って友情ってなる?
中身はそんな薄っぺらな話ではなかった。80年代から2010年代付近までのゲーム開発に情熱を傾ける人々の物語であり、その時代ごとに変わっていく愛についての物語でもあった。男女の愛が一周まわって友情になんかならないから悲劇も生まれるわけだけれども、そんな中でも結局尊敬しあい支え合って生きていく姿はなんだかホッとするとともにとても切ない感じです。
登場人物の一人に、愛とは結局のところ何ものだ?と語らせています。「進化のために競争を忘れてまで他人の人生の旅路を楽にさせてやりたいと願う不合理な欲求でないとしたら、いったい何だ?」これについてはドーキンスがその著書「利己的な遺伝子」の中で既に答えを出しているように思える。そこを乗り越えての物語になっていたらもっとハードな作品になっていたのではないかと思います。それでも十分に胸にせまる作品であり、また読んでみたくなります。傑作。代表作でもある「書店主フィクリーのものがたり」も読んでみようかな。
さらに、自分でもゲームを作ってみたくなります。やっぱりゲームはプレイするより作る方が面白いのかもしれない。 -
子供の頃に出会った男女。友達以上、恋人以上、の想いをお互い持つが故にぶつかり時には憎しみ、何年も口聞かない、とか極端な行動もするのに、根っこの部分でリスペクトと、お互いをかけがえの無い存在だと認めているから、時が経つとまたお互いを必要とする人間関係性にとてつもなく惹きつけられました。
2人の関係が男女の恋愛じゃ無いけど、そこに確実な何かがずっとあるのがひしひしと伝わってきました。
サムもセイディも素直で、でも素直になりきれなくて、勝手な誤解や妬みがあってピタッとハマる時もあれば思い切りぶつかる時もある。ぶつかる時は思い切りソッポ向いちゃうのがなんかアメリカらしいな、なんて思ったりしました。
そんな二人の隙間を埋めるマークスが本当にいいやつで。だから、物語の展開は辛かった。。。
私はサムのコンプレックスや思いやりなど、彼の気持ちに寄り添えることの方が多かったですが、主人公2人とも気持ちのアップダウンが人間らしくて好きでした。
ドーヴみたいな大人も憎めないし、出てくるキャラクターがどれも良かったなぁ。
決して楽しい作品では無いけど、とある男女の人生を子供から大人までしっかり堪能できるいい作品だと思います。
2025.3.2
48
ガブリエル・ゼヴィンの作品





