甘くない湖水

  • 早川書房 (2023年11月7日発売)
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本 ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784152102768

作品紹介・あらすじ

私の母は掃除婦をしながら四人の子どもを育て、障がいを持つ夫を支えた。だが母の厳格さがいつしか私を暴力的にしていった――。湖のそばの貧困家庭で成長していく少女の、十代から二十代までの内面を克明に描くイタリア文学界新星によるカンピエッロ賞受賞作

感想・レビュー・書評

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  • L’acqua del lago non è mai dolce: la recensione del libro
    https://www.harpersbazaar.com/it/cultura/libri/a36001439/l-acqua-del-lago-non-e-mai-dolce-recensione/

    振り返る学習小説6冊 | ベジア
    https://onl.sc/xZnD1UF

    Giulia Caminito, biografia: curriculum, libri e storia
    https://biografieonline.it/biografia-giulia-caminito

    湖の水は甘くない ジュリア・カミニート(著・文・その他) - 早川書房 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784152102768

  • 「私の足はかさついていて、パーカーは大きすぎで、頭はからっぽで、どんな未来があるのかわからなかった」(p83)
    この文末の飛躍が、遊園地で楽しんでいる時でさえ将来に対する不安がつきまとっているのが感じられる。名文!
    第9章の冒頭、「私がこの数年間してきたことは」の書き出しを連ねて過去を振り返るくだりも良かった。

    自分だけが正しく、しかも良かれと思ってガミガミ言ってるので、自分が娘を傷つけ苦しめてるとはまるで気づかぬ母親に向かって「私の人生はお母さんのものじゃない」
    今までさんざん抑圧されてきた末に出た、主人公ガイアの叫び。そこまで言えたなら、もう一歩踏み出して自立して欲しかった。


  • 依存はなく己を律し容赦ない。障害者となった夫を護る大黒柱の母と思いやる子供達。娘はぎりぎりの生活から這い上がるように勉学し思春期は負けじと卑屈をひた隠す。母親の強い愛と娘の自我が湖の佇まいと呼応する。甘酸っぱい傑作。

  • 一人の少女ガイアの成長物語。湖水も人生も甘くない。

  • デビュー作なのか、力いっぱいぶつけましたっ、って感じがイタイ。あんまり文章の書き方も、取り上げた内容(女の愛憎)も好みでない。といいつつも読後は、同郷のエルサ・モランテらしさが余韻として残った。やっぱイタリア人というのは情感豊かな国民性だと思うが、文化的には(ペドロ・アルモドバル映画監督とか)必要以上に傷を治す方に持ってかないで、いかにより多くただれるか挑戦してるように思えるんだが。

  • 973/カ

  • 【企画展示】姫路大学学生の 読みたい本 読んでほしい本
    姫路大学附属図書館の蔵書を確認する→https://library.koutoku.ac.jp/opac/opac_link/bibid/BB00003848

  • 兄と私、双子の弟たち、母と父親。母は法を犯さないように自分の権利をまげることなくしっかりと主張する人で、貧困のなかで家を支える。そして父は現場で怪我をおったために下半身不随となり仕事ができなくなってしまった。そんな一家が湖畔の近くの集落に移住してからの、私の物語。
    自分を押し殺し、気持ちを伝えることのない私。家や学校では中立の立場を保つ。空気のように、いないかのように。他の家に普通にあるものがない。新しいノートもペンも服もリュックも。携帯電話もテレビも車もスクーターも自転車も。
    そして私は自分の持ち物であるラケットを壊した男の子の膝を殴打し、射的場で缶をすべて撃ち落とし、年上の同級生にビンタをくらわすし、自動車に火を放つ。
    誰も私を顧みてくれない、私の気持ちを慮ってくれない、持っているものを分かち合う気持ちは周りにはなく、私を認識してくれる人はいない。
    自分のなかにあるこういった思い、とくに成人式の祝に本人である私は本当にイヤでやめて欲しいと思う気持ち。周りが楽しんでいる空間で息苦しくなる気持ち。激情といったものの処理しきれなさが10代の頃に経験した思いと重なって苦しくなる。ここまで実行に移すということはなかったけれど。そして重なる部分がものすごくピッタリと重なるからこそ、重ならない部分だったりもはっきりと見えて、主人公の私と読者である私はちゃんと別の人間だと思ったりもした。ここは著者の覚書を読んでなおさら思ったところでもあった。
    大人になって振り返った時に気づくものは当時では絶対に気づかなくて、息苦しさを感じながらも同時に自分の情にたいして落とし所のような部分も見つかってほっともした物語だった。

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