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本 ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784152102843
作品紹介・あらすじ
古田織部の自死から十八年――上段末尾に「遊びをせんとや」、下段末尾に「これにて仕舞」と記された、織部最後の茶会の指示書が見つかる。この席に誰が招かれ、これは何を意味するのか? 毛利家内での諍いに苦しむ中、茶の弟子である毛利秀元が真相を探る。
感想・レビュー・書評
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茶人・古田織部の最後の茶会を追う、時代ミステリィ、といったところでしょうか。北村薫さんの最近の文学ものに通じるところもあるな、と思いました。この本を読む前に、マンガ「へうげもの」を懐かしく読み返しました。主題は織部さんですが、主役はあくまで探偵役の毛利秀元さん。なかなか魅力的な人物で、最後まで退屈せずに読めました。
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面白かった。古田織部の最期から18年の年月を経てその時を知ろうとする謎解きをめぐる物語。
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茶の器で著名な古田織部。家康の名により切腹させられていたとは知らなかった。秀吉と千利休に関係に通ずるものもあり、歴史の再発見も面白く、楽しめる一冊。主人公は毛利秀元で、茶の名人でもある。吉原の花魁である白菊とも心を通わせるが。毛利藩主との関係、他の大名との関係、戦国大名の生き残りという自負など、いろいろな思いを拗らせている。もう過ぎ去ったこと、終わったことだが、大事なことを、人は忘れがちだが、自分を棚に上げて人を論う。自分の思いを貫き通すには、最終的には利休のように死を迎えるしかないのか。でも逍遥として受け入れている。読後、考えさせられるとても良い一冊。この著者の歴史小説は、歴史上の人物の再発見になって面白い。
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2024.7.29
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巻頭に茶室の展開図があったせいで「すわ、密室殺人?!」と早とちりしたアンポンタンは私です。
まあでも、主人公・毛利秀元が師匠・古田織部の自死の謎解きをするんだから、ミステリっちゃあミステリよね。
「どうする家康」とは大分違う神君像(笑)。
個人的には贔屓の本阿弥光悦、名前のみで登場しなかったのが残念。 -
「尚、赫々たれ 立花宗茂残照」でデビューした著者の二作目です。今度の主人公は毛利秀元…正直今まで知らなかった人物です。千利休のあと茶の湯の世界の頂点に立った古田織部を信奉する武将であり、関ヶ原前後の変化の時代を生き抜いた存在です。むかし「ひょうげもの」という古田織部を主人公にしたアニメを楽しみにしていましたが、千利休が秀吉に切腹させられたように家康に切腹させられていたんですね。それは権力と茶の湯の密接な繋がりがあった時代で舞台であり、政治と文化の持ちつ持たれつがテーマのひとつだと思います。前作とほぼ同じ徳川幕府の治世が確立していく時代を、違う主人公視点で文化というフィルターで描いた作品だと思います。実際、立花宗茂も登場してきますし。二作通して、戦争の時代から争いを許さない時代への移り変わり、そのものが主役であり、その変化に翻弄される人々の群像劇になっているような気がしました。あるいはちょっと前の時代のキーマンとして実績もプライドもある男たちが向き合う次世代への変化の物語、とも言えるかも。とすると、ここからまたスピンオフな物語も生まれる気がしてきました。今夏の主人公も組織と個人とか、ビジネスとアートとか、自分の本義と社会の流れとか、非常に現代的な問題を抱えているのが共感を高めます。女子との向き合いもその中に入ってきているのも前作に引き続き、です。本作も「残照小説」と言えると思います。
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千利休の後を継いだ古田織部という茶人の自害の謎を追う分家大名のお話。
千利休は大河ドラマの常連さんでよく知っているが、古田織部は名前を聞いたことがあるレベルの知識しかなかった。だからか、家光時代の大名など、登場人物が多い設定に、なかなかついていけず、最後まで内容に没入して読むことはできなかった。この時代の知識を得るためにはいいけど、小説としてはどうかなといった感じ。たぶん、もっと歴史に詳しい人には面白いんだろう。結末のエピソードは、それまでの展開に対して、薄く感じられて、拍子抜けした感もあった。