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本 ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784152102867
作品紹介・あらすじ
まっとうな人生を求めて、ハーレム地区で誠実に働くカーニー。だが生活のため、従弟がもちこむ盗品を売ることもあった。ある日、従弟の起こした事件で、カーニーは裏社会の争いに巻き込まれる。表と裏の二重生活の末に彼が選んだのは? 『地下鉄道』著者新作
感想・レビュー・書評
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「親が悪党だからって、子も悪党になるわけじゃない。そうだろ?」
ハーレムにある中古家具店で働くアフリカ系アメリカ人のレイ・カーニー。近頃、彼の店にはガラの悪い男たちが出入りしていた。
数々の罪を犯した父親とはちがい、カーニーはまっとうな人生を築くために誠実に働いた。愛する妻と娘もいる。だが、食べていくのは容易じゃない。時には、従弟のフレディがもちこむ盗品も売るしかなかった。
ある日、フレディたちの起こした強盗事件にカーニーは巻き込まれる。そうしてギャングと悪徳警官が、カーニーに目を留めたのだった。
妻子と自分を守るため、カーニーはならず者との裏取引を重ねていく。
結局、自分も悪党なのだろうか?
そのときフレディの危機を知らされ、カーニーが選んだのは――。
人種、貧富、性差の問題が渦巻く街を舞台に、『地下鉄道』著者が放つエンタメ小説!
物語はやや類型的なのかもしれないが、丁寧な取材によると思われる緻密な風俗や情景描写に引き込まれる。 -
「ニッケルボーイズ」に続く藤井光さん翻訳のコルソン・ホワイトヘッドの小説はクライムノベルだった。殆どのクライムノベルがそうであるように、主人公は巻き込まれたり、カモられたり、あるいは自ら進んで関わる犯罪、事件を解決しようと奔走するけれど、そこで本当に解決しようとしているのは自らの生活、人生で、それは”事件”が解決して物語ることを終えても解決することがない。これも解決しない物語。同時にニューヨーク、ハーレムの変わる部分も変わらない部分も詳細に描いた街の話でもあって、ああ、やっぱり、これも読みたい小説だった。
たしかにそうでもあったのだけど、この本を読み始める前に「福音と世界」に掲載されていた山下壮起さんの論考「Fuck The Policeーフッドとハッスルの霊性」を読んでいて、それからすぐにバッグから取り出して読み始めたこの物語は”フッド”での”ハッスル”の物語だということを強く意識して読んでいた。「黒人たちは正規の販売経路への参入を妨害され」るため「フッドではそこに生きる人びとによって資本主義社会とは異なる経済活動-ーハッスルーが行われている」。家具店を経営しながら、細々と故買も行う主人公が巻き込まれる強盗事件も、”上流社会”への参入を餌にカモられたことへの復讐にも、白人も含めた町の権力構造を垣間見るときにも、その根底には”ハッスル”をする意味や理由、「奴隷制とそれを正当化する法的規範」を引きずった社会や「人種差別的な枠組みを歯車とする資本主義」があるのだと思えた。
そんな風に読んでいくと”解決しない物語”はまた少し別の意味を持ち始める。”黒人文学”と言われるような作品は、様々な物語を使って自分たちの生活、苦境や怒り悲しみを書き続けている。その根底には”解決”出来ていない社会構造があって、解決できないが故に書き続けられている。改めてそう思った。それらが書き続けられるということは、未だ解決していないということでもあるのだけど、そこには書かれる意味も読む意味も、効果や作用も絶対にある。そう思いたい。そう思う。それに、解決していない根深い問題というのは世界にも身の回りにも数多く残っているから、この小説やその他の本を読んで考えた後の目でそれらを見逃さずに、目をそらさずにいたいと強く思った。
この本を読み終わった日は11月の後半にしてはとても暖かかったから、シェルの下には長袖のT-shirtを着ていて、その胸には「SILENCE KILLS YOU」と書かれていた。ジップを開けた間から見えるその文字を見下ろしながら、なるほど、黒人作家たちは社会、世界に”殺されない”ために書き続けているのかと考えていた。それと同時にここでいう”YOU”とは”わたし”のことでもあるのだけど、”わたし”が沈黙することで”殺される””あなた”がいるのだということにも気がついてハッとした。今見えている状況にも目をそらさずに、容認、”沈黙”せずにいたいと、また強く思う。 -
藤井光さん翻訳シリーズ。しかしオバマが読み日本でも絶賛された地下鉄道が好きではなかったのでなあ、と思いながら読んだがやはりnot for meだった。クライム小説、エンタメ作なので難しいとか読みにくいという問題ではない。地下鉄道もサービスが過ぎるエンタメ性にのれなかったんだよね。公民権運動が起こるニューヨークのハーレム、黒人社会、時代と場所の丁寧な書き込みと臨場感は良い。
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良く出来ているのかもしれんけど、面白いとは思わない。
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大好きなジャンル。
ただ、「地下鉄道」はスムーズに読めた記憶があるけど、コレは、文体が入って来辛かった。
気のせいかなぁ…。
あと、アラジンのジーニーの例えが時代背景的にちょっと気になりました。 -
よく書かれているが,地下鉄道と,ニッケルボーイほどではない.