象【かたど】られた闇

  • 早川書房
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本棚登録 : 65
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152103086

作品紹介・あらすじ

ヴィクトリア朝バース。病を抱えながらも小さな切り絵店を営むアグネスに、不穏な影が迫る。彼女に肖像画を依頼した客が次々と謎の死を遂げているのだ。真相解明のためアグネスが縋ったのは、11歳の霊媒師パールだった。降霊会を繰り返す彼女を待つ運命とは――

感想・レビュー・書評

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  • 不安と悩み…人間の最深部にある闇が垣間見える、ヴィクトリア朝時代のゴシックミステリー #象られた闇

    ■あらすじ
    19世紀イギリスのヴィクトリア朝、切り絵作家として生業を得ていた主人公アグネス。苦しい家計ながらも肖像画の依頼を受けていたが、その客たちは次々と不可解な死を遂げる。過去、自身の妹を失ってしまったこともあり後悔の念に苛まれていた彼女は霊媒師の少女に相談、客たちの死の真相を探ろうとするのだが…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    見える…人間の最深部が見える。こ、こわい…

    本作はヨーロッパ中世を感じさせるゴシックミステリーです。終盤まで大きな展開がされることなく、切り絵作家の女性と霊媒師の少女を中心にしみじみと物語が進行していきます。

    まったく派手ではないのですが、十字架を背負っているかのように、悩みや苦しみが読者にのしかかってくるんです。これが半端なく重くて、たびたび心が揺さぶられる。どうにかならないのか、この人たちはと…

    しかも事件の謎も情報が少なくてよくわからないし、霊媒師と催眠術師の姉妹とのやり取りも不毛。私は一体どういう物語を読んでいるのか、この話のゴールは何なのかもおぼろげになってくるんです。

    ただ物語の後半には、まさに怒涛のような展開と真相が待ち受けている。不幸の臨界点ともいうべき場面では、人間が精神的混乱に見舞われるとこんな感情になるのか… まるで鉛を飲んだような感覚で胃が重いっ

    そして真相ですよ…これまで、ずっと薄暗い世界をさまよっていた理由が明かされるのですが、そこに希望はあったのか分からない。それでも彼女が前向きになれたのは、本作唯一まともな人物、医者のサイモンがいたからでしょう。この陰鬱とした世界で彼の存在がいかに大きかったか、自分を思ってくれる人が存在していることの大切さが身に沁みましたのでした。

    ■ぜっさん推しポイント
    知る自由、学ぶ自由、考える自由がないというのは、どれだけ不幸なことなんだろう。何事も自分では判断ができるようにはならず、その結果、他人に利用されるだけになってしまう。

    人間は色んな環境に身を置いて生活をしなければなりませんが、本作の主人公である切り絵作家の女性と霊媒師の少女ほど辛い環境はない。教育の自由を奪うことは、これからも決してあってはならないことですね。

  • Book Review: The Shape of Darkness reinforces Laura Purcell as a master of building suspense - The AU Review
    https://www.theaureview.com/books/book-review-the-shape-of-darkness-reinforces-laura-purcell-as-a-master-of-building-suspense/

    Laura Purcell
    https://www.laurapurcell.com/

    【象/かたど】られた闇 | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015730/

  • ヴィクトリア時代のゴシックミステリー。何やら曰くありげな切絵作家のアグネス。産まれた時に母を失い父違いの姉に育てられるアルビノの少女。彼女は姉の命令で霊媒師を生業としている。
    のっけから、暗くジメジメと霞んだ街の様子が迫ってくる。ミステリと言うよりアグネスと亡き妹、少女と姉のウェストの姉妹の哀しい物語として読めた。

  • ゴシックミステリかもしれないけれど、禍々しさや不気味さはあまり(ほぼ)なくて、むしろポップ。切り絵作家というのは面白いな。アグネスを、勝手に若目に想定して読んでいて、結構歳が行っていることに気づいて驚いた。

  • 読後、著者がダフネ・デュ・モーリアなどが好きなこと、今作はアガサ・クリスティの某作品からヒントを得たこと(ですよねーーー!!)などには納得したのだけど、好きな作家に真っ先にジェイン・オースティンを挙げているのが意外だった。
    でも、そういえば読みながら「いるいるこんな人ー!」と細かいところで頷くことが、特に女性のキャラクターで多かったことを思い出し、こちらも納得。
    切り絵作家と霊媒師、という設定が面白かったのだけど、切り絵の方は霞んでしまった印象なのがちょっと残念だった。

  • 5W1Hがあまり明かされず、一つのWに絞った内容で、あの本を思い出すが、喉切ったら返り血浴びるだろ。



  • 光と陰のふたつの時はまだ容易かった。それがもっと。
    霊か精神か、善か悪かと深まって、病とか幻覚という疑惑や嘘がまとわりつくと闇は不信と重なりあい怖さで心臓の高鳴りが治らなかった。
    精確に象られた物語の面白さが突き抜けていく。

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