終わりなき夜に少女は

  • 早川書房 (2024年5月22日発売)
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本 ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784152103307

作品紹介・あらすじ

アラバマ州グレイス。連続少女失踪事件が解決されないまま、サマーという少女が失踪した。双子の妹レインは、姉の失踪に疑念を抱く。サマーが私を置いていくはずがない。だが、レインが姉の足取りを追うにつれ見えてきたのは、彼女の知らないサマーの姿だった。

感想・レビュー・書評

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  • ★5 双子の姉が行方不明になってしまい… 人間の弱さと支え合いを描いた物語 #終わりなき夜に少女は

    ■あらすじ
    アメリカの田舎にある小さな街で、双子の少女のひとり、サマーが行方不明になった。この街では少女の連続誘拐事件が続いており、新たな犠牲者と目されていた。書置きが残されていたことから、警察は家出だと判断され本格的な捜索がされない状況。しかし双子の残された少女はレインは、友人たちと独自に捜索を開始するのだった。

    ■きっと読みたくなるレビュー
    人間って弱い生き物ですよね…

    大人たちですら支え合って生きている世界なのに、まだ経験の浅い少女たちが懸命に生き抜こうとする物語。つらっ

    本作一番の読みどころは、双子の少女たち。姉サマーと妹レイン。レインは行方不明になったサマーを見つけ出すため、日頃から手名付けている男友達と一緒に奔走する。ちょっぴり不良で粋がってる彼女だけど、ホントはいつも不安だし、誰よりも寂しがり屋さん。必死に捜査を続けるレイン、自らを犠牲にしたり、リスクをとった行動もし続けてゆく。

    家族に対する感情もわかり身が過ぎるし、特に男友達や街の不良たちとのやりとりを見てると、自分が年ごろの娘を持ったみたいな気持ちになり、守ってあげたくなっちゃう。でも実際に声をかけようものなら、キモいと言われちゃうんだろうなぁ。

    姉のサマーはおしとやかで清楚な女の子。でも少女から女性へ変化していく時期でもあり、揺れ動く憂わしげな心情があまりにも危うい。ちなみに彼女目線のストーリーは行方不明になる前の時系列で書かれており、なぜ行方不明になっているのか、徐々に景色が見えてくる仕組みになっています。

    さらに他の登場人物たちも、読者の胸を突いてきます。警察署長であるブラックは、連続誘拐事件を捜査しつつも、既に諦めや自身を憂いでいる。凶悪事件も自分自身も迷走している中年男性の悲しさを背中で感じ取ることができました。ただ彼は誰よりも優しい心の持ち主なんですよね…

    レインの男友達であるノアは、警察の手伝いをしている高校生。自分が何者でもなく、弱い部分は隠したい。そしてとにかく一人前の男だと思われたい。はー…わかるよ、うん。まだまだ大人には遠いけど、きっと10年後くらいには頼りがいのある男性になってると思うよ。

    物語の終盤、ついに誘拐事件の顛末が語られる。めっちゃまっすぐな展開。弱く頼りない人間がぶつかっていく覚悟が眩しくて、カッコ良かったです。『我は闇より天を見る』で少女の心情をつぶさに描いたクリス・ウィタカー、本作も胸に沁みる人間ドラマを描いてくれました。

    ■ぜっさん推しポイント
    聞こえてくるんですよ… この物語にでてくる登場人物たちは、みんなが助けを求めている。

    犠牲者も加害者も関わる人々、すべての人が救されたいと叫んでいるんです。彼らは根はいい人ばかりなんですが、圧倒的に弱いんです。生きる力がなさすぎるの。

    ただ脆弱ながらも手を取り合おうとしているところに弱い光があてられ、鬱々たるお話のなかにも少しだけ希望が見えてくるんですよね。みんな今回は辛いことがあったけど、このまま素直に懸命に生きて、ぜったいに幸せになって欲しい。

  • 双子の姉妹の姉・サマーが、突然いなくなる。
    妹のレインと違って真面目で大人しく誰からも好かれるような彼女の失踪に、家族は単なる家出だとは思わなかった。
    ただレインは何故なのか原因がわからなくて、ひたすらサマーの行方を探すところから物語は始まる。

    サマーの行方がわからなくなる以前に何人かの少女たちが誘拐されていたこともあり、その彼女たちの家族のことや狭い町の閉塞感などを織り交ぜているのでかなりの長編になっている。
    会話形式で軽妙に進んでいくなかで、姉妹の内に秘めた気持ちを知ることができるのだが、結末は虚しく感じた。

  • 解説、酒井さんが「この物語は、登場人物の背景や来歴、思い、物語が始まる前に起きていた出来事や物事の経緯などが、後出しで少しずつ言及されていく形式をとる。(省略)読者である私達の内面に浮かぶ波紋、染み込む情緒、徐々に変化する印象。そういった繊細なことが、とても大切されている小説である。(省略)だから、できるだけ何も知らない状態で接して欲しいのだ」と仰っている。
    まさに同感。
    最初はやや、いやむしろかなりとっつき難いのだが、徐々に与えられる情報でどんどんと物語世界に浸されていくのが実感できる。
    なので、これから読もうと思われている方は以下、読み飛ばし頂きたい。
    意外性が損なわれるからネタバレ気を付けてねとかそういうことではなく、物語の積み上げられ方、剥がされ方、ひとつひとつを生のまま堪能すべしという類の物語。


    時は1995年、悪魔崇拝の影が残るアラバマ州グレイスでは、少し前に「鳥男」なる通称で知られた犯人が引き起こしたとされる連続少女失踪事件があった。
    暫くの間なりを潜めていたと思っているところに、新たな少女失踪の話が持ち上がる。
    少女の名はサマー。
    父のジョーはかつて8年の刑で服役している前科持ち。
    父の荒くれ加減に反して、読書をこよなく好み、教会通いにいそしみ、そこで牧師の妻からチェロの演奏を教わるいわゆる穏やかな優等生。
    一方、妹のレインは未成年飲酒の常習、粗い言葉遣い、男遊びに明け暮れると奔放。
    だが、姉のサマーとの絆は何よりも強く、姉の発見を誰よりも強く望む。
    独自の捜索を進めようとする過程で、警官である父を早くに失った体つきは軟弱だが心意気だけは勇猛果敢なノアとその友人、父親からの家庭内暴力を抱えるパーヴに出会い、半ば手下のように扱う形で姉の発見に奔走する。

    衝撃をもたらした『われら闇より天を見る』後初の邦訳作品。
    ただ、原著の出版順としては『消えた子供』に次ぐ第2作目。
    トーンとしてはまさに、この2作を足して割ったような感じ。

    ノアとパーヴの少年コンビがもたらすユーモア交じりの成長譚と、メインの事件を取り巻くグレイスの町に生きる人々の擦り傷だらけの痛々しき人生。
    そこに挟まるサマーの独白パート。
    この事件の真相はどこにあるのか、「鳥男」は濡れ衣で別の事情があるのではと思わせるような、町の人々の疑わしき言動。

    エピソード自体は決して目新しいものではないのだが、その描き方、場面、ワードセンスがとにかく秀逸で、不遇の少年達が自らの人生に立ち向かう心意気や、一見すれた少女レインの姉を思う心持ち、捜査を率いる町の警察署長ブラックが抱える後悔など、ことごとく感情が沸き立つ。
    ほんと凄い作家さんだわ。
    翻訳もいいんだろうな。
    これまでの3作品、いつか絶対再読したいし、本棚に置いて置きたい。

    心配なのは新作が出ていないこと。
    でも英語でググルと今年『All the Colours of the Dark』という作品が出版されている。
    早く邦訳されないかな。
    さらなる高みに達していると期待したいな。

  • 重厚だったー!
    基本は行方不明の姉を探す話なんだけども、その捜索過程がいろんな目線で書かれていて、物語として進行しながら、姉が行方不明になるまでの過去も本人語りで書かれていて…
    自分の思いや洞察が、あちこちに散り散りしながらも、最後に向かって物語と共に進む感じが、尊い。
    後半はもうすごいスピード感で、読後なんだか呆けてしまいます。
    登場人物たちに言いたいことは多々あるんだけど、それを割り引いても、私は好きです。

  • 登場人物の生い立ち、過去の出来事、そして今起きている事などが少しずつ明かされていきます。
    バラバラのピースをつなぎ合わせるような作業でした。
    田舎町の閉塞感、何者にもなれない自分、生まれに抗おうとする空しさ。全編を通して暗い印象です。
    書評家 酒井貞道さんの解説が秀逸。先に読んでも良いかもしれません。

  • 「われら闇より天を見る」が面白かったので、2作目を読んでみました。

    こちらの作品は、登場人物がころころ変わり非常に読むのに時間がかかりました。
    内容も少しわかりづらく、ラストも今ひとつという感想です。期待していただけに残念でした。

  • All The Wicked Girls by Chris Whitaker | Linda's Book Bag
    https://lindasbookbag.com/2017/11/13/all-the-wicked-girls-by-chris-whitaker/

    終わりなき夜に少女は | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015805/

  • ありきたりの題材なのに何故かページを捲る手を止められなかった。
    悪魔崇拝や教会が密接に関わるアラバマの小さな町。優等生の双子姉妹の姉が失踪した事で数年前の少女連続誘拐事件が蒸し返される。父親が犯罪者なので警察は捜査してくれないのだ、と憤慨した妹レインと同級生の男子2人が独自に姉探しを始める。
    町の人々が持つ思いやしがらみ、子供達の関係性がどんよりとした天気と同じ様に陰を落とす。全てのキャラが鮮やかだが、最後は哀しかった。

  • 『われら闇より天を見る』が良すぎたのかも。
    群像劇のようなところは良かった。ただ、同じ人物が呼び名で登場するなどして混乱し、序盤は苦戦した。ラストが近づくにつれて面白くなった。
    面白さは『われら天より〜』>『消えた子供』>『終わりなき〜』だと思う。

  • クリス・ウィタカーの翻訳3作目。原著は2017年の作品で、一昨年話題になった「われら闇より天を見る」より前の作品。

    1995年のアメリカアラバマ州が舞台。隣の地区で未解決の少女連続失踪事件がある中、双子の姉サマーが失踪する。姉を探すレインは、ひょんなことから殉職した父を持つノアと暴力的な父を持つパーヴと出会う。一方、地元警察署の署長ブラックは、サマーの失踪と連続失踪事件が関連しているのか決断を下せずにおり。。。

    「われら闇より天を見る」よりミステリ感は薄く、青春小説の色を強くした作品。現代パートはレイン、ノア、パーヴ、ブラックの視点で進み、過去パートはサマーの視点で進む。

    何よりも、ノアとパーヴの会話が非常に良く。そして打ちひしがれた中年のブラックが、ゆっくりと立ち直る様も良い。
    登場人物が多く、また序盤にある程度まとまって情報が入ってくるため、なかなか読み進め難いかもしれない。ただそこさえ乗り切れば、徐々にわかってくる人間関係や新事実を楽しめると思う。良作でした。

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