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本 ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784152103352
作品紹介・あらすじ
ジャック・ウェルチは米国最強企業GEのCEOとして、飛躍的な業績の伸長と規模の拡大を実現させた。だがそれは短期的な利益のみを追求し、企業の未来を食い潰して築いたものに過ぎなかった――徹底的な取材で「20世紀最高の経営者」の虚飾を剥ぎ取る傑作評伝。
感想・レビュー・書評
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ジャック・ウェルチの経営を否定。金融第一・株価至上主義の経営からの脱却を説く。その問題提起はさまざまな方面から噴出してきている。
資本主義経済に代わるコンセプトが求められている。
1.世界No.1経営者とされるウェルチに対して、歴史の評価は「✕」を下す
2.ウェルチの経営は「財務」でしかなく、究極は「GEキャピタル」に収斂した
① リストラ・コストカット=人員削減・アウトソーシング
② M&A その後①へ
③ 自社株買いへキャッシュを注ぐ
3.研究投資・Innovationなく、「未来」は生まれない 本業は衰退
社員のモチベーション劣化
⇔ロマン・社会貢献の重要性
4.株価至上主義=時価総額の極大化
四半期決算を最優先=粉飾決算の誘惑
1度手を染めると雪だるま ex東芝と同じ
GEキャピタル[金融]は「打ち出の小槌」
⇒通常事業と金融事業を同時に経営は出来ない 価値観の違い詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ウェルチのことを知っている人、優れた経営者だと思っている人にとっては、本書の内容は意外な真実と感じられるのだろう。
私のような門外漢にとっては、「なるほど、かなりヤバい人だったんだなぁ、トランプと同類の人なんだな」という感想。
ウェルチによりGEは多大な利益を上げた。しかし内実はボロボロで、長期的に存続できなくなっていた。だがGEが凋落したのは、資本主義での競争が健全に働いていた、ということかも。
企業が莫大な利益を叩き出し、株価が成長しまくるのと引き換えに、周りの社会、そこに生きる人々は苦しみ、疲弊する。株主資本主義が徹底した世界がどれほど生きづらいか。日本も少なからずその方向に向かっている。
ウェルチズム批判の本書は、より良い世界の一助となるだろう。 -
理詰めで人と会話する
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かつてジャック・ウェルチと言えば名経営者の誉れ高く、当時の社長も「ウェルチはこう言っています」とよく引き合いに出していました。しかし、その名門GEが、ダウ平均銘柄から外され、収益源と言われたGEキャピタルを手放し、さらにはドル箱だった発電機・ヘルスケアも売却。いまや「ただの航空機エンジンのサプライヤーになり下がった」内情・顛末について詳しく論じています。本書ではその要因を、「ダウンサイジング(人員削減)、事業売買、金融化」を推し進めたウェルチズム、内部でのパワハラ言動、粉飾操作などに起因すると分析しています。
正直、ここまでひどかったのかと驚かされました(ウェルチはアンパンマンの対極)。一人の経営者によって会社が傾くことは東〇・シャー〇などでも既視感があり、児玉博氏の『テヘランからきた男』にも通底するところがあります(日本の某通信事業会社も大丈夫か…)。
著者は、NYタイムズの記者ですが、多面的な取材と分析を重ねており、訳もとても読みやすくできています。ユニリーバなどを対比して、長期的な視点に立つことの重要性を訴えていますが、最後の提言では、これが「新しい資本主義」ではないかと思わせる内容です。