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本 ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784152103383
作品紹介・あらすじ
高校生の弟の不審な死を知らされ、数年ぶりに実家に帰った女性キー。ベトナム系の一家のなかでも、オーストラリアに馴染んだ優等生である弟。だが、それは本当の顔だったのか。謎を追ううち、キーは、自らを取り巻く社会と、弟の命を奪ったものの正体を知る。
感想・レビュー・書評
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メルボルンでジャーナリストとして働くキーは、5歳下の弟が亡くなったことを知り、実家に帰省する。
幼い頃にベトナムから両親とともに難民として渡ってきたキーと違って、成績優秀で大人しく"いい子"の弟が、何者かに殴り殺されたということが信じられず、警察の説明も同級生も教師も大勢いたのに目撃証言がひとつもないと言うことに愕然とする。
弟は、いったい誰に、何故、殺されなければならなかったのか?
キーが、独自に動きだすと…。
情景が目に浮かぶようで鮮烈で刺激的だった。
キーとミニーとのやりとりがとても上手くて、心の声が手にとるかのように響いてくる。
ヒリヒリとするような冷たいやりとりのなかにどうしようもない叫びが聞こえてきそうで、もう終わらせてと思いたくなるほどなのに気になる。
オーストリアの移民社会の孤独描く文芸ミステリと帯にあったがその通りだった。
以下、訳者あとがき〜一部抜粋
物語は、1996年のオーストリア、シドニー南西部の街カブラマッタ。
この国最大のベトナム人街があることで知られ、とくにアジアからの移民が多く暮らす地域である。
主人公キーの視点から描かれるいくつかの章と、事件の目撃者やキーの家族といった身近な人物の視点から語られる章を追っていくうちに、薬物がらみの問題を多く抱え、アジア系ギャングによる暴力事件が絶えず起こっている街の不穏さとおなじ街で懸命に生きる人々の活気が入り混じる。
複雑な移民の街が見えてくると同時に、複雑な街の様子を背景に、思春期のころの友達どうし、とくに女の子どうしの関係や、親世代との価値観の違いや衝突、そして親しい人のあいだに生じる嫉妬心や執着や気持ちのずれや絡まりあいといった登場人物たちの心理が、息がつまるほどの切迫感をもって描かれている。
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クリス・ウィタカー絶賛! 移民社会の孤独を描く文芸ミステリ『偽りの空白』(トレイシー・リエン、吉井智津訳)6/18発売|Hayakawa B...クリス・ウィタカー絶賛! 移民社会の孤独を描く文芸ミステリ『偽りの空白』(トレイシー・リエン、吉井智津訳)6/18発売|Hayakawa Books & Magazines(β)2024年5月23日
https://www.hayakawabooks.com/n/na64c8e09c30a2024/05/24
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ベトナムから難民としてオーストラリアへ移住し育った女性キー。舞台は1996年、アジア系移民が多く暮らす街。弟が殺された謎を探る。
優等生だった弟がなぜ殺されたのか。関係者から話を聞き謎を追う中で、ベトナムから移住せざるを得なかった当時の事情、偏見と差別、様々な苦労、世代間のギャップ、ドラッグや暴力など多くの問題について知ることができた。
英語が不自由なため労働条件が悪い仕事に就くしかない親世代から、次第にベトナム語を話せなくなっていく子世代へ。戦争、難民生活、移住のストレスはより弱い立場の女性や子供たちへ吐き出され、負の連鎖へと繋がっていく。
海外の初めて知る世界の話だけど、読んでいる間ずっと本の存在が近くに感じられたのは人物の描写が素晴らしく、一人一人の思考と行動がよく理解できたから。親への反発、友達との行き違い、学校の先生や子供たち、加害者たちの苦悩。感情の言語化が巧みで、読みながら自分の言動を思い起こして、あれはこういうことだったんだなと腑に落ちることも度々あった。
社会派ミステリーであり、人間を描く文学としても優れた本。出会えてよかった。 -
読み応えありすぎて、読み終えるのにひどく時間かかりました。事件が根底にあるものの、ベトナム移民の心の動きがメイン。オーストラリアがベトナム移民受け入れている事実、そして移民になり移民として生きることの過酷さに衝撃を受けました。日常的にミステリ読んでる脳細胞に強烈なパンチ食らった印象です。移民のリアルな生活をこれほどまでにあぶり出し、彼らの心の叫びを文章から受け取ったのは初めてかも。長い道のりでしたが、読んで良かった。未知の世界に連れて行ってくれる読書の素晴らしさを、しみじみ感じることができました。
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カンボジア人がオーストラリアに移住しそこで殺人事件の被害者となり真相を明かす物語
移民であるための苦悩が描かれている
展開、進み具合が単調?
途中で止めようかなと思った