ターングラス 鏡映しの殺人

  • 早川書房 (2024年9月19日発売)
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本棚登録 : 360
感想 : 20
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  • 本 ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152103628

作品紹介・あらすじ

1881年イギリス、エセックスのターングラス館で起こった毒殺事件。事件解明の鍵は、館に監禁された女性が持つ一冊の本にあるという。一方、1939年アメリカ、カリフォルニアでは推理作家が奇妙な死を遂げる。彼は、死ぬ間際に58年前の毒殺事件の物語を書いていた。

感想・レビュー・書評

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  • ★5 上下反転裏表、二つの物語がお互いに関連し合う極上のミステリー #ターングラス #鏡映しの殺人

    ■きっと読みたくなるレビュー
    書籍を裏表上下反転させて読むという手の込んだ装丁、これは単行本で手に入れたくなっちゃう。こういう形式の本をテート・ベーシュって言うんだって。なるほどー

    読む前から既にギミックとして面白いんですが、中身もしっかりと濃厚な味わいで素晴らしい。エセックス篇は19世紀末の時代背景。ゴシックホラーな雰囲気が漂う中、作中作が秘められた謎に迫っていく。

    カリフォルニア篇は20世紀の第二次大戦前。こちらは一気に現代的な情調になり、サスペンスやロマンスも含んだミステリーなんです。どちらもターングラス館という建物が鍵になっており、また共通テーマとして家族が綿密に描かれています。

    この二編の色調が違うのが面白いんすよ。どちらもミステリーではあるんですが、エッセンスも謎自体も違うから最後まで飽きずに読めちゃう。それでも物語は絡み合っていて、どちらも終盤に差し掛かってくるとゾワゾワ感が襲ってくる。露骨ではなく引き算で読ませるのが上手で、二つの作品の狭間を想像せずにはいられなくなるんすよね。

    またキャラクターが濃いの。カルピス原液で飲んでるのかっていうくらい濃い。コイツ何もんやねんって人ばっかりで興味津々、脇役ですら気になる。人物に力強さがありすぎでしたね。

    私は時代順にエセックス篇から読みましたが、カリフォルニア篇を読み終わった後、さらにエセックス篇をパラパラと読み返すことになりました。これは永遠と読み続けることになるという危険性がありますね。過去に何があったかという期待が膨らむから、カリフォルニア篇から読むのもオススメかも。うーん、どっちがいいんだろ。たぶんどっちでも楽しめますよ。

    ●エセックス篇
    19世紀末のエセックス、ターングラス館で起こる毒殺疑惑事件。医者であるシオメンが館の住人である司祭を訪ねて…

    舞台設定が怖い… こんな島、絶対行きたくねーよ。登場人物もみんな腹に一物もってそうでヤダ。なんといっても例の女性ですよ、なんなのこの人… 背景を知りたいけど、知ってしまうと取り込まれてしまうような恐ろしさ。事件の展開もしっかりしてるし、特に後半の作中作とカリフォルニア篇の関連が気になってが読む手が止まりませんでした。

    ●カリフォルニア篇
    20世紀前半のカリフォルニア、俳優志望のケンが州知事の息子オリヴァーが書いた小説の謎を追う…

    爽やかーな青春テイストかな?と思いきや、中盤に差し掛かった頃から一気にミステリー身が帯びてくる。小説にはどんな秘密があるのか、エセックス篇との繋がりや特に人間関係が紐解けてくると… ヒリヒリしちゃうー

    巧妙な仕掛けでエンタメ性が抜群、訴えるテーマも粘り気があって重厚感も心地よかった。今年のミステリーランキングに入る作品かも!

    ■ぜっさん推しポイント
    私が子どもの頃、警察官や弁護士など正義の味方に憧れていました。そのため中学高校時代は、真面目に勉強していたつもりです。しかし大学に入ると研究や社会に馴染めず、はみ出した人生を歩んでしまうことになりました。なので自分の子どもには、途中で勉強を放棄することなく、学業を全うして欲しいと願っているんです。

    しかしそれって親のエゴですよね… どんなに愛していたとしても、どんなにその判断の妥当性が高いと思っていても、それは一方的な価値観の押し付けでしかない。親子関係であっても、人権は個別にあるし、考え方も違って当然なのにね。ぼんやりと自らの家族観を見つめ直すことになる作品でした。

  • テート・ベーシュ。
    何これ、作り自体がおもしろー、初めて出会った。
    でも意外と昔からやられている製本技法なんですね。
    日本でも折原さんの作品でやられているとか。

    イングランド南部のレイ島(干潮時は陸続きだが、満潮時には連絡路が水没してしまうような土地。陸繋島ってやつ?)。
    この島唯一の建物、ターングラス館の主の病の原因を探る出だし。
    次第に体面が剥がれ落ちてくるかのように、この家の住人が関わっていた忌まわしき罪が露わになってくるゴシックミステリ調のサセックス編。

    本を閉じ、ひっくり返して180度回転させてページを開くと始まるカリフォルニア編。
    うって変わって富と名声、成功と権力の夢の中を泳ぐ『グレート・ギャツビー』かのような世界感。
    映画俳優を目指す主人公のケンはひょんなことで知り合った知事の息子で著名な作家でもあるオリヴァーと親しくなる。
    オリヴァーは悩みを抱えているような素振りを見せたとある夜半に拳銃自殺してしまう。
    ケンはオリヴァーの妹のコララインと共にその真相を探る。

    2つの編はそれぞれがそれぞれの作中作のような位置付けとなっており、また作中の様々な登場人物やシンボル、エピソードがときに直接的にときにメタファーとして登場し、相互に行きつ戻りつするなんとも眩惑的な読み心地。
    まさに鏡に鏡を映したときに現れるような光景が広がっている。

    ただちょっとそれぞれのオチが普通のミステリ的。
    ちゃんと収まってるのだが、なんか急にそこだけ個々の作品に意識を戻されて、変に地に足着いた形になる。
    むしろわけわかんないくらいの匂わせ終焉の方がこの作品には合っていたのでは。
    あと、相互の絡み合いを重視するあまりか個々の展開のストーリーテリングの点で単調さを感じた。上手くいきすぎるというか。

    とはいえ総体として、本としての細工とタイトル、2編の物語が織りなすテーマ性が物凄くよく表現されている一冊。

  • 表紙から読むと、1881年イギリスが舞台の「エセックス編」。
    逆向きにし、裏表紙から読むと、1939年アメリカが舞台の「カリフォルニア編」。

    両方を読むと、ひとつの真相が浮かび上がってくる……というミステリ。

    上下さかさまに印刷された、ふたつの部分にわかれた本。
    テート・ベーシュ形式の仕掛けが、おもしろかった。

    最初に読んだのは「エセックス編」。
    真相がひどくて読後感も悪く、単体の物語としてはあまり魅力を感じず。

    「カリフォルニア編」でさまざまなことが絡み合うようになって、やっと興味を引くように。
    ただ、こちらもあまり読後感がよくない。

    真相が途中で見えてくるので、ミステリとしての満足度はやや低め。

  • 表裏反転のミステリー。表紙も中身も設に驚いた。こう言うのをテート・ベーシュと言うらしい。
    19世紀末のエセックスと、20世紀初めのカリフォルニアを舞台にしたパートの2つから成り立つ。どちらから読んでも良いらしいが私はエセックスから読み始めた。読むだけでも舞台となる島の荒涼とした表現にタジタジになる。反対にカリフォルニア編はスピーディーな展開でわかりやすい。
    他の方も書かれていたが、私もまた、もう一度エセックス編を読んだが、深い謎を解き明かしたようで読んで良かった。

  • うわーー!面白かった!
    表紙と裏表紙、しかも上下さかさまに別の物語が収録されている、という本の作り。
    作りが凝っている本は、その面白さを内容が上回らないとグッとこないわけで、それはなかなか難しい。
    でも今作は見事に超えた。
    いや面白かった。
    二作それぞれがハイクオリティな上に、揃うと更に面白さ倍増。
    表を読んですぐにひっくり返して裏を読むと、またすぐひっくり返して表を読みたくなる。
    まさに砂時計!
    裏の主人公のケン好きだなーと思っていたら、今後の作品にまた再登場すると解説にあって小躍り。
    翻訳刊行待ってます!

  • 本の構成に一目惚れ!

    前からでも後ろからでも読めるステキなミステリー。
    どちらの話に対しての伏線があり1冊で2度美味しい!?

    ただもう少し仕掛けを上手く使って絡めて欲しかった。

    日本では折原一の【倒錯の帰結】が2000年にすでにあったが・・・。

  • テート・ベーシュの本を初めて読んだ。

    2つの物語が逆向きに印刷されている。と
    冒頭に書いてある通り表紙だけでも不思議な本だ。
    中には興味深い話が書いてあった。
    エセックス篇を読んで謎がとけてスッキリしたのちカリフォルニア篇を読むとまたエセックス篇を読みたくなった。こんなに複雑に絡み合っている
    とは予想外だった。

  • 楽しみました。

  • ガレス・ルービン『ターングラス 鏡映しの殺人』読了。表と裏で異なる物語が綴られ、両者の物語がそれぞれ互いの作中作のように機能しているという仕掛けが他にない読書体験をもたらす。
    が、エセックス編もカリフォルニア編も確かに独立した作品として読ませるおもしろさはあるけれど、欲を言えば互いに入れ子構造のようになっているからこそのおもしろさ、刺激がもっとほしかった。
    こういうのどちらから先に読んでもかまわないと言われても逆から読む人っているんですかね?

  • 学校(中等教育)の図書室に配架され、内なる好奇心でいっぱいの生徒がふと手に取って、という出会いで読んでほしい本。
    テート・ベーシュという、ことばとつくりにワクワクするような生徒に。

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