エリート過剰生産が国家を滅ぼす

  • 早川書房 (2024年9月19日発売)
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本 ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784152103635

作品紹介・あらすじ

学歴に見合うポストや報酬が得られず不満を抱いたエリートたちが反エリートに転化するとき、社会は崩壊に向かう――。数理モデルを用いて歴史にパターンを見出す「歴史動力学」の第一人者が、様々な時代・地域の分析を通じて現代社会と民主主義の行方を占う!

感想・レビュー・書評

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  • 社会の秩序が乱れて新たな秩序に入れ替わるサイクルを歴史と論理で解く本。確かに今の世の中に当てはめてみると合っているかも。

  • 個人的には難しい内容だったが、著者はとにかくトランプ嫌い。タイトルの通りエリートが増えると権利権力により大衆を置いてけぼりにし、結果破滅するということ。上に立つ人間はギバーでなければならないのだと再認識した。

  • 大衆からエリート層への一方的な富の流れによって社会の不安定化が促進されると主張する。世界に秩序をもたらす上で、民主主義か専制政治かは、そこまで重要な要素ではないとのこと。歴史を数理的に解析した結果として、このような主張となる点は、色々と考えさせられるものがあった。

    恒久的な安定のためには、以下の3つが必要なのかなと思った。
    ①富を大衆へ適切に還元
    ②大衆を豊かにした結果として、エリート層も豊かになるという構造
    ③エリート層は一定の割合に保つ仕組み

    この書籍を読んで、政治的な不安定さの高まりを感じた際に、銀河英雄伝説や PSYCHO-PASS の世界観や発言が頭をよぎった。
    最大多数の最大幸福を、愚直に追い求めるシビュラ的な世界を望んでしまうのは、思考の放棄なのだろうか?
    人は自らの意思に基づいて行動した時のみ価値を持つのであれば、シビュラ的な世界の人類は無価値なのか?

    よし、この悶々とした気持ちは、銀河英雄伝説と PSYCHO-PASS を視聴し直して解消しよう。
    (膨大な時間を浪費してしまうが…)

  • Modeling Social Pressures toward Political Instability,2013,Turchin ロシアの複雑系科学者

  • 人口増加がベースになっているので、少子化最前線を行く日本には当てはまらなさそう、というのは「人口は未来を語る」とも矛盾しないところ。
    2025年のトランプの言動はこれを逆行させるものに見えてくる。本当のところは知りませんが。

  • 日経新聞20241130掲載 評者:根井雅弘(京都大学大学院経済学研究科教授,経済学説,経済思想)
    東洋経済20241123掲載 評者:岡崎哲二(明治学院大学経済学部国際経営学科教授,ミクロ実証,経済発展,経済史)

    『hayakawa books & magazine』HPで「はじめに」全文公開

  • END TIMES
    Elites,Counter-Elites,and the Path of Political Disintegation

    数理モデルにより歴史の法則を導く「クリオダイナミクス(歴史動力学)」による分析。
    不安定性をもたらす四つの構造的要因:
    ①潜在大衆動員力へとつながる大衆の貧困化
    ②エリート内の対立を引き起こすエリート過剰生産
    ③財政の健全さの悪化と国家としての正当性の低下
    ④地政学的要因

    本書出版時点ではトランプは再選されていないが、モデルによれば2020年代に不安定性が恐ろしいほど高まる。
    革命的状況から抜け出す道はふたつ。支配階級が最終的に打倒されるか、社会システムの適正なバランスを取り戻し、大衆の貧困化とエリート過剰生産の傾向を逆転させる道。現状は悲観的に思える。
    【目次】
    はじめに
    第1部 権力のクリオダイナミクス
    第1章 エリート、エリート過剰生産、危機への道
    第2章 一歩下がって全体を見るー歴史の教訓
    第2部 不安定性の要因
    第3章 「農民はいつも反乱を企てている」
    第4章 革命部隊
    第5章 支配階級
    第6章 なぜアメリカは金権国家なのか?
    第3部 危機とその余波
    第7章 国家の崩壊
    第8章 近未来の歴史
    第9章 富のポンプと民主主義の未来
    謝辞
    付録1 新しい歴史の科学
    付録2 歴史のマクロスコープ
    付録3 構造力学的アプローチ
    解説/尾上正人

  • クリオダイナミクス(歴史動力学)という分野を初めて知った。一方の出力結果に内戦や革命といった政治的破局を置き、もう一方の結果に政治体制の維持を置く。出力に影響する因子としてたとえば「国民の不満」を考えるが、定量的に評価できる指標として所得の「中央値」(当然、平均値ではない)や、所得上位1%層のGDP占有率、身長(時期の比較ができればよいため、徴兵検査の結果データでもよい)を使い、「身長の伸び=健康状態の改善≒幸福度(の一指標)」といったロジックでモデルを構築し、過去の歴史に照らして検証する。非常に興味深い内容だった。(経済学のモデルとはレベルがまったく違う気がするのは気のせいだろうか)

    「国民ひとりひとりが政治を動かす」という民主「主義」信者の理想は所詮お花畑ドリームであり、現実に社会を動かすのは一握りの権力者で、権力者が「たまに」国民に飴を施そうと気が向いたときのみ、国民のための施策が(中抜きされながら)遅々と実施される。

    しかし、権力者とは陰謀論によくあるごく少数の黒幕ではなく、金脈と人脈を結合した権力の「ネットワーク」であり、どんな独裁者でもネットワークから切り離された瞬間に権力を喪失するという指摘は、皇帝ネロ失脚の生き生きとした描写もあって非常に説得力があった。

    権力ネットワークへの参入は椅子取りゲームであり、既得権者はあらゆる手段で椅子にしがみつき、椅子の数が増えることもない。一方、ゲームの参加者は世襲であれ縁故であれ科挙であれマルサス人口論のごとく増加するため、その結果はエリートの「なり損ね」を量産する。

    「超」富裕層の子女として人生の最初から勝ち組であるか、時代に合った才能を発揮して億単位の金を稼ぎ新規の勝ち組になった者はともかく、凡人より勉強ができる程度の秀才が奨学金という借金を抱えてゲームに参加しても勝ち目はなく、リベラル派が救済するのは変態か外国人だけ、という状況では、脱落したエリートの怨念が社会の破壊を志向するのは自明である。
    本書には「架空の設定」として何人かの典型的な人物像が登場するが、彼ら・彼女らのショートストーリーだけでも十分に面白かった。

    明治維新が単なる内戦扱いなのは当然として、日本に触れられていなかったのは少し寂しい。差別ではなく、単に「もともと分析に値する先進国ではない」という妥当な評価だろう。
    付録の小説?にランチェスターの法則に沿った南北戦争の予測が出てきた。士気の高さだけを根拠として勝つ見込みのない戦争に突き進んだ国家はやはり愚かとしか表現のしようがない。

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