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本 ・本 (280ページ) / ISBN・EAN: 9784152103673
作品紹介・あらすじ
夏の甲子園出場をかけた京都府大会決勝。木暮東工業のエース投手・権田至の投げたボールが、境風学園の強打者・仁科涼馬の頭部を直撃した。「あんな球、避けられるでしょ」少年はなぜそのような突き放した言葉を放ったのか? 鮮烈な京都青春物語。
感想・レビュー・書評
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私は野球が好きです(笑)そして、京都も好きで(笑)
なんで、つい本屋に寄った時に見つけた~って、この本を買ってしまった
危険球にまつわる高校野球の話かと思いきゃなかなか奥深くて、アマチュア審判員(ボランティアの会社員)の話、そして京都の太古の歴史にもまつわる物語は一気に読み終えた。
夏の高校野球地区予選の決勝、将来を有望されている選手同士の対決に投じられた内角をえぐる1球。それは危険球だったのか?
いやそうではない。
そうではないからもどかしい。
これは冬の西京極球場で決着を迎える。
まるで果たし合い?
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Amazonの紹介より
夏の甲子園出場をかけた京都府大会決勝。木暮東工業のエース投手・権田至の投げたボールが、境風学園の強打者・仁科涼馬の頭部を直撃した。「あんな球、避けられるでしょ」少年はなぜそのような突き放した言葉を放ったのか? 鮮烈な京都青春物語。
選手たちを含め、その関係者達の騒動のその後の苦悩が丁寧に描かれていて、苦い青春でありつつも、最後は氷が解けていくかのように皆が正直に生きようとする描写に青春だなと感じさせてくれました。
物語の展開としては、当日の危険球騒動がメインではなく、その後、世間からの非難が落ち着いた頃から物語は始まります。そこから、登場人物達の葛藤が描かれています。
至は、騒動後は謹慎となるも、涼馬にはまだ謝罪をしていません。一方、涼馬は回復したが、ボールに恐怖感を抱いてしまい、野球を諦める寸前にまで陥っています。
普通ならば、至あるいは涼馬の視点で物語は進行するかと思いますが、この作品では、涼馬の親友やその試合で審判を行った人、至のバッテリーの人といった当事者の関係者が視点となって、描かれています。意外な所から攻めてきたので、興味を惹かれました。
現場を目撃した登場人物達。その思いは様々で、怒りや後悔といった感情が交錯しています。
未だに至が謝罪しないということで、なぜ至は黙っているのか?関係者を通じて、会おうと試みます。
やはりメインは「至がなぜ謝罪しないのか?」という点です。それは後半になって明らかになりますが、それに至るまでの道のりは、長かったです。
普通なら、危険球を投げしまったら、その場で謝るかと思いますが、至は至なりの後悔や反省が行動に詰まっていて、なかなか最初読んだときは納得のいくスタイルではないなと思いました。
自己だけで解決するのではなく、やはり直接相手と向き合うことが大切であると感じました。
なかなか、その辺りは色んな意見があるかと思いますが、個人的には「行動を見せる」ことが大切かなと思いました。それが偽りだったとしても、まずは相手に対するどう思っているのかが大切だと思いました。
そういった点では、涼馬の親友に共感する部分がありました。
他にも、その試合で審判だった人の苦悩も描かれているのですが、自分の息子との葛藤とも織り交ぜながら、自分ならではの答えを導きだそうとする描写に、審判としての大変さ、辛さを感じました。
複数の視点で、どう融合していくのか?
その途中では、至の過去と葛藤、そして発端となった「危険球」のSNSの投稿の秘密にも触れています。
至自身も苦悩していることは納得しつつも、その流儀には、ちょっとモヤモヤ感はあったのですが、至ならではのきちんと向き合っている姿が、印象的でした。
そして、後半では、いよいよ再会します。どのようにして再会したのか?その道のりは色々ありましたが、きちんと向き合おうとする描写に、感動しました。
第三者からみると、その光景は正直納得できるかどうかモヤモヤ感はあったのですが、当事者同士、関係者同士が納得すれば、それでいいのではないか。そんな思いがありました。
彼ら達だけの「答え」がそこにあって、良い方向へ向かってほしいなと思いました。 -
京都が舞台の高校野球のお話しなんて…
読まないわけがない!!
自分の推しの地×推しのスポーツを織り込んだ青春小説は人の脆さ、儚さ…そしてそれに負けない強さ、煌めきが描写されていた。
夏の甲子園出場をかけた京都府大会決勝。
木暮東工業と境風学園は、7回裏まで0-0で互いに譲らず接戦を繰り広げていた、
その悲劇が起こるまではー。
その悲劇とは、「危険球」だった。
しかもそれは、ただの危険球ではなかったのだ。
その一球が高校生たちにもらたした、
言葉にできない痛みや想い…
こんなに胸が苦しくなる話は久々だった。
そしてここまで救われた作品は
なかなか出会えないと心から思う。
ちゃんと人と人が心からぶつかって、考えて、苦しんで…だからラストシーンでは、温かい涙に誘われる。
さらに本作の見どころは、人との繋がりと「言葉」に対する向き合い方が誠実に描写されている。
私は本作の言葉たちにも、
数え切れないほど救われた。
やっぱり高校野球って、京都っていいな。
それにしても京都と野球という大テーマを扱いながら、それに負けないストーリー展開を紡ぎ出した「木住鷹人」に、ただただ頭が下がるおもいだ。
またまたすごい天才作家に出会ってしまった…
次作が楽しみである
⟡.·言葉に対する向き合い方
p.100
「人に何かを伝えるとか、人を理解するということは、きっともっと深い、生半可でないことなのだろう。簡単にできると考えること自体、謙虚さを欠いているのかもしれない。」
p.180
「確かに、他人にものを伝えるというのは大変なことだ。すごく難しくて、上手くいかないことも多い。だが、それは言葉に大きな力があるからだと、俺は思う」
「一生懸命に相手のことを思えば、言葉を使わなきゃいけない時もある」
p.206
「これからもぶつかったり、言い合ったり、いろいろあるだろうが、とにかく躊躇わず話をしよう。投げかける言葉を選びながら、受け止める言葉の意味を一生懸命考えながら。」 -
2025.02.24
発展途上の作品
京都を無理やり詰め込んだ感が否めない。京都が描きたいのか、高校生の成長を描きたいのか、審判委員の「成長」を描きたいのか、全部を盛り込むにはいろいろ足りないと感じた。 -
京都文学賞受賞作ということだったけど、野球小説として読み応えがあった。危険球を与えた者、受けた者、の周辺の人物の視点から描くことで、両者を見つめるような気持ちで読むことができた。京都の街並みや歴史の扱い方に若干無理矢理感を感じてしまったことと、鍋島審判の本業の方で伏線回収できていないと思うのでそこはマイナス評価です。
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素晴らしい青春小説、若者たちの成長譚なのだが、描き込み過ぎて臨場感をスロー・ダウンさせているように思う。もっと行間に幅を持たせて読者も物語の輪の中に入れてくれるような配慮があればさらに感情移入できたはず。
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キャラクターそれぞれの想いが交錯して、ぶつかって、でもそれは悪いことではなくて、言葉にすることが大事なことなんだなと。
自分の人生でも若いうちにこんな経験ができたらよかったのにと読後に悔やむ。 -
結末が気になり最後まで引き込まれるように読みました。心の機微がわかるような表現が欲しかった。舞台の京都の描写が多い。その後を続編で読みたい