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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784152104090
作品紹介・あらすじ
失敗は成功の反対だとみなされがちだが、生産性の高いチームでは果たしてそうであろうか。「心理的安全性」研究の第一人者である著者が、失敗を類型化し、失敗を通じて生産性を向上させるためのフレームワークを提言。イノベーションが生まれる組織の姿を描く
AIがまとめたこの本の要点
この本を表す言葉
みんなの感想まとめ
失敗を新たな学びと捉える視点が魅力的な一冊で、著者は失敗を体系化し、心理的安全性を重視した組織の重要性を提唱しています。失敗の種類やそれが生じる状況を分類することで、冷静に失敗を分析し、成長の機会とす...
感想・レビュー・書評
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タイトルこそ「失敗できる組織」であるが、本質は「失敗から学べる組織かどうか」に尽きる。
個人的に考えさせられたのは「チームに分かれ、床に敷かれたタイルを歩くゲーム」の話だ。
ルールは単純で、タイルによって「OK・NG」があり、NGの場合はブザーが鳴るという仕組みになっている。
床のタイルを歩くのは一人ずつで、ブザーが鳴ったら次の人にバトンタッチして最初からやり直す。
スタートからゴールまで、最も早く辿り着けたチームが勝ちというゲームだ。
これで実際にゲームをスタートすると、タイルに足を置くことで迷う人がいるのだという。
この気持ちが分からないでもない。
みんなが見てる前で失敗したくないと思う気持ちが優先されて、足を出すことに躊躇してしまうのだと思う。
しかしながら、どう考えてもこの考え方はおかしい。
タイルの「OK・NG」は所詮ランダムに並んでいるものなので、NGを踏んだから「失敗」になるはずがない。
むしろ、NGが分かることで、OK(正解)が分かるというのが、このゲームの本質だ。
つまり迷っている時間はそもそも無駄ということだ。
一刻も早くタイルを踏んで、OKなら迷わず進む。
NGなら即座にバトンタッチする、を高速で繰り返せばよいだけだ。
NGは失敗ではない。
NGが出るまで迷わず進み、その軌跡をメンバー全員が見て記憶することが大事だ。
前に踏んだNGを、次の人がまた踏んでは、それはミスと言える。
このゲームのルールの本質を、メンバー全員で共有できるかどうか。
これが、勝負の分かれ目である。
この本質を最初から見抜ければよいが、人間とは感情の生き物である。
「ブー」という大音量のブザーが鳴り響けば、心の中で「失敗」が刻み込まれ、次は萎縮してしまう可能性が高い。
それをチーム内で「気にするな。ドンドン先に進め」と言えるかどうか。
歩いたOKの軌跡をどういう方法でメンバー間で共有するかもポイントだ。
●紙に記録する時間があるのか。(ツールの持ち込みがルールで認められるのか)
●メンバー内で一番記憶力の優れた人に任せるのか。
●それとも、みんなで分担して記憶するのか。
●全員が同じように記憶して、話し合いながらエラー訂正していくのか。
方法についてはいくつかありそうだが、この中でどの方法を選択することがベストなのか、選び出すのもチームのセンスと言える。
初めて組んだチームで、初めてゲームをする場合。
そして主催者からの説明が「スタートからゴールまで行け」だけだと、上記のような戦略をとれるかどうか。
いずれにしても、ゲームの本質を早く見抜いて、対策をどう取るかを選択することが大事だ。
そして何よりも、高速で実行すること。
実行していく中で、方法論については改善を繰り返すこともできる。
こんな事例は、実際の仕事の中で多数あるはずなのだ。
NGを踏むことは、決して「失敗」ではない。
そこで躊躇する理由はないし、落ち込む必要もない。
失敗のように感じるが、実は「成功のために必然的な失敗」ということに気が付くかどうか。
このように頭を切り替えられるかどうかが、実は非常に重要だ。
それだけ人間とは、失敗に対して不寛容なのだ。
恥の文化と書かれていたが、日本人は特にその傾向が強いような気がする。
小さなコミュニティの中で、相互に監視されるムラ社会での人間関係では、そのコミュニティから弾かれることは、本人の死活問題になる。
失敗を極端に恐れる思考になるのも、本能と言えばしょうがない部分もある。
一方で社会は大きく変化したのだ。
ムラ社会から、爪弾きにされても、実際には生きていけるはずなのだ。
世界中を旅して回ることも可能だし、移動しないにしても、リモートで別のコミュニティと繋がればいい。
そう考えると、迷うよりも、どんどん失敗して経験をした方が、自分の実力がついてよいはずだと思う。
しかしながら、頭で理解していても、実際にできるかどうかは別の話。
やっぱり一歩を踏み出すのは怖いし、失敗したからといって、頭を切り替えて次に行ける訳じゃない。
人間の感情は複雑で、単純にはいかないものだ。
だからこそ、意識的にチーム作りをする必要があるということか。
どうやってチーム内に「失敗とは、成功のために必要なプロセスである」という考えを浸透させるか。
このようにステップで考えてみると、「学習する組織」こそが強くなるのは腹落ちする。
みんなで学び合える環境。
そして、みんなで改善を指摘し合える環境。
そういう意味でも心理的安全性は当然必須だ。
こんな環境はなかなか構築できないものだが、裏を返せば「こういう組織を構築できれば、学習する組織になれるかもしれない」という面は見えてくる。
冒頭で記載したことを繰り返すが、タイトルこそ「失敗できる組織」だが、良い仕事をするための本質とは「失敗から学べる組織かどうか」に尽きるのだと思った。
(2025/6/30月)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「心理的安全性」の概念を提唱した筆者が、組織の中に心理的安全性があることが求められる理由である、「失敗から学びを得る」ために必要なことを、社会心理学と組織行動学の研究を通じて説明している。
失敗を通して学び、成果につなげるためには、先ず失敗そのものをよく知ることが大切である。筆者は失敗を、「賢い失敗」、「基本的な失敗」、「複雑な失敗」の3種類に分類している。
賢い失敗は、新しい事業や未知の技術に挑み、失敗を重ねながら進歩につなげるような失敗である。発明や新しい科学的発見などが代表的であるが、起業などもこの領域に入るであろう。このような失敗は、それを無視したり無かったことにしたりするのではなく、失敗を分析し、次のトライを考える材料とすることが大切である。そして、このような失敗を避けていては成果にはつながらない。
2つ目の基本的失敗は、いわゆるミスやエラーといったものである。このような失敗をゼロにすることは基本的に難しいが、それでもチェックリスト、必修トレーニングや「ぽかよけ」などのツールや、声を上げたものを責めないといった組織文化のあり方で、減らすことは可能である。また、意外ではあったが、ミスに対する忌避感を強く持もたないようにするとミスを認知することや原因を分析することにつながるとも指摘されている。
3つ目の複雑な失敗は複数の要因が関連する失敗であり、相互依存性や不確実性が重なることで起こる。この類型の失敗を防ぐことは非常に難しいが、それでも重要なこととして、「過去の複雑な失敗から学習する」、「早期警戒サインに注意する」、「挽回のチャンスを活かす」、「誤警報を歓迎する」、「『その先』を考える」といったポイントを、組織や個々のメンバーの行動様式に組み込むことで、失敗を防ぐ仕組みを作ることができると述べられている。
以上のように本書の前半で失敗の類型化を行った上で、後半では、今度は「失敗をする側」である私たちや組織の失敗に対する認識のあり方を分析し、その中から「上手に失敗する」方法を検討している。
最初に分析するのは、「自己認識」である。人間は誰しも、結果に合うような都合の良い解釈をしたり、なるべく要領よく物事をこなしたいと思ったりする。また、他者からの非難に対する本能的な恐怖感を持っている。筆者は、我々はこれらの人間の心理の特性を認識し、その上で自分の弱さを受け入れるとともに、失敗に対する考え方をリフレーミングすることが大切であると述べている。そのような内省、謙虚さ、正直さ、好奇心を涵養していくことが求められる。
続いて分析するのは、失敗の可能性が潜んでいることを読み解き、不要な失敗を避けるための「状況認識」のあり方である。状況認識には、①どこまで分かっているのかと、②どんなリスクがあるのかの2つの側面がある。①は不確実性・新奇性の程度であり、我々は意外とこの認識を誤ることがある。②については、身体的リスク、金銭的リスク、社会的リスクという形で項目を挙げて整理すると分かりやすいと述べられている。これらの枠組みを使って「失敗の地図」を作ることで、我々はより冷静に状況を認識することができるという。
そして筆者は最後に、「システム認識」に関する分析を行う。失敗が発生する背景には、ほとんどの場合に複数の要因が関わっている。それらの関係性を認識し、直接的な原因だけでなく、その背後にある要因に対処することはとても大切である。トヨタ生産方式もそのような仕組みの一つであるし、イノベーションが継続的に起こる創造的な組織のあり方も、システム思考によって生み出される。職場の心理的安全性も、個々のメンバーの心掛けだけではなくシステムとして組み込まれているべきものである。
このように失敗について考える様々な認識の枠組みを考え直すことで、我々は失敗から学ぶことができるようになる。
最後の章で、これまでの分析を総合し、失敗を通じて成長していくためにどうすればよいのかをまとめている。筆者が特に強調しているのは、我々は「失敗する生き物」であり、そのことを受け入れた上で、不要な失敗を避けるとともに、有益な「賢い失敗」を多く経験するための仕組みや行動を考えていく必要があるという点である。
失敗に対する心理的な受け止め方を変えることや、リフレーミングを通じて新たな角度から失敗を捉えることなど、これまでの章で紹介されたことが、本書の最後でも改めて分かりやすく整理されている。
それらに加えて印象に残ったのが、すべての人に「失敗する自由」を与えることが大切であるという点である。組織や社会において弱い立場や低い信頼しか与えられていない人たちにとって、失敗することは自らの立場を致命的に悪くすることにつながる。そのような状況を極力なくし、失敗に対する安全性を高めること、そして失敗から学ぶために失敗を隠蔽せず共有できる組織文化を作ることが、非常に大切である。
本書は、失敗を通じて成長するという営みが、個人レベルの心がけや視点の切り替えだけでなく、集団や組織として取り組むべきものであるということを気付かせてくれた。失敗というものに対する見方が新たになったと共に、それをどのように活かせばよいのかについて幅広い観点で知ることができ、とても有益な本だった。 -
失敗の体系化、しかも失敗自体の分類とそれが起こりやすい状況の分類があり、面白い。
この分類によって失敗を『落ち着いて』捉えられることが大事と考えられていることも面白い。
心理的安全性を確保してオープンな組織を作ることで失敗から有益な学びを得ることと、システム思考を理解して失敗をそこに至る構造から本質的に捉えることが重要という趣旨で、そのために失敗がどのような分類ができるかについて整理されている。
趣旨は大いに理解できる、有意な内容。個人的な意見としても賛同したい。そのためにどうするかという話が、だんだん学術的なものではなく自己啓発というか個人のセンスに依存する表現になっていくような気がします。
、、、という理由でビジネス関連の学術書としてのマイナス1の評価をしていますが、一読の価値はありです。 -
良い失敗としてはいけない失敗。
後者は基本的なもので成長しないもの。 -
「人は自分の失敗からよりも、他人の失敗から学ぶ」という指摘。実際には、失敗は隠されがちです。なぜなら、失敗を責められ、仲間外れにされることを人は恐れるからです。
だからこそ、失敗をオープンに語れる「心理的安全性の高い組織」が必要だと痛感。
失敗を共有し、原因を考え、改善を提案する。そうすることで失敗は“成功の材料”に変わる。
組織づくりのヒントをくれる一冊。 -
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