彼女を見守る

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  • 早川書房 (2025年3月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (512ページ) / ISBN・EAN: 9784152104120

作品紹介・あらすじ

第一次大戦後、イタリア北西部にある村。貧しい家に生まれた、石工の弟子、ミモ。村の城館に住む侯爵家の娘でありながら自立を望むヴィオラ。出会うはずのなかった二人は惹かれ合い、時に反発し、両大戦間の激動の時代を生き抜いていく。ゴンクール賞受賞作!

感想・レビュー・書評

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  • 舞台は20世紀イタリア。小人症を患いながらも、類い稀な彫刻家としての才能を有したミモの生涯の物語(フィクション)。ゴンクール賞(2023)だが、エンタメ小説として楽しめる。
    侯爵令嬢ヴィオラをはじめ、脇を固める登場人物がいい味を出しています。また、2つの大戦を通じてのイタリア社会の変化、教会の内部事情とかも興味深かったです。

  • 『彼女を見守る』著者来日! トークイベント「彫刻と文学の邂逅:ゴンクール賞受賞作家ジャン=バティスト・アンドレアが語る」開催! 3月29日@大垣書店麻布台ヒルズ店|Hayakawa Books & Magazines(β)2025年3月24日
    https://www.hayakawabooks.com/n/n2729c0d203dc

    Exclusive Interview of Jean-Baptiste Andrea - Institut Français · Royaume-Uni
    https://www.institut-francais.org.uk/read-watch-listen-list/exclusive-interview-of-jean-baptiste-andrea/

    Jean-Baptiste Andrea : une saga italienne - Zone Critique
    https://zone-critique.com/critiques/veiller-sur-elle-jean-baptiste-andrea-une-saga-italienne/

    Livre: Veiller sur elle - Prix Goncourt 2023, Jean-Baptiste Andréa, L'Iconoclaste, 9782378803759 - Librairie Les Lisières
    https://www.leslisieres.com/article/22540075/commentaires/

    Jean-Baptiste Andrea - Tous les livres - Librairie Eyrolles
    https://www.eyrolles.com/Accueil/Auteur/jean-baptiste-andrea-140014/

    Jean-Baptiste Andrea - IMDb
    https://www.imdb.com/name/nm1125131/

    彼女を見守る: 書籍- 早川書房オフィシャルサイト|ミステリ・SF・海外文学・ノンフィクションの世界へ
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/g/g0000614758/

  • 平明な訳文に比して、内容が(特に感情のうねりが)捉え辛く、何度も行きつ戻りつ読み進んだ結果、結構に読了まで時間を要した。
    20世紀前半のイタリアを舞台とする「身分差のある感情、恋、愛」と言えば簡単だが、フィクションとは思えない文化芸術の学びを貰えた。

    小人症という身体的ハンディを持って生まれ育つミモ、同じ日に生まれた貴族令嬢ヴィオラと不可思議な縁に導かれるように互いに魂が付いたり離れたり。。
    ゴンクール賞を得た力の程は「身体的ハンディともって生まれた出生」をものともしないミモの心と彫刻技術の成長とヴィオラの「当時としては」不遇をかこち、批判にさらされ続けざるを得なかった一生が相対する鏡のように描かれた当作品でよく表されている。

    ムソリーニの支配でイタリア全土が振り回されナチズムの暗雲垂れこめた中、キリスト教、司祭、歴史ある彫刻界の描写がとても興味深かった。

    史実ではないのでミモの死に向かう時間が決してバラ色ではなかったであろう想像が個人的にダークなエンドで締めくくられた。

  • 小説はこのようなものでなければならない。「女性(の……)」をキーとする共時性を持ちながらも、そこから敷衍する視線の広さと深さ。

  • ゴンクール賞。イタリアの20世紀前半激動史を背景に、軟骨無形成症の境遇で彫刻家への道を目指す主人公とパトロン家の少女とが、お互いの人生で交差する時間を大切に描いた作品。ミケランジェロ作品と並び賞されるピエタを頂点とする彫刻家パートがとても面白かった。彼女との接点での一番素敵なクライマックスは、フラ・アンジェリコの受胎告知を見せるシーン。2人の奇特な人生が絡み合う頂点の輝きを感じ取れた。もう一つの頂点は、彫刻家としての矜持を果たした授賞式のシーン。全体に反ファシズムへのメッセージが強く込められている佳品。

  • ゴンクール賞(フランスの一番すごい文学賞)と、日本の学生が選ぶゴンクール賞(各国の学生がフランス語で読み、気に入ったを選ぶ賞の日本版。てか、こんな賞があるなんて!)をとったスケールのどでかい小説。舞台は20世紀のイタリア。戦争、貧困、障がい。友情と恋と芸術。名誉、栄誉、夢。あとなんだ、もうかなりの要素が詰まって、そのどれもが大きな意味をなしていて、著者のメッセージも受け取って、物語にもいくつものクライマックスがやってくる。500ページの物語の最後の最後まで、左手にもつページがこんなに少ないのにー、と思いつつもええええーーっ! という展開になる。他国の歴史や文化に触れながら、誰かの一生をどっしりと、ゆっくりとなぞる。やはり時々は、こういう時間が必要で、小説を手に取るのだ、と改めて思わせてくれた。満たされた。



  • 荘厳な《ピエタ》のマリアとキリストが傍にいてイタリアの風が頬を叩く。不完全さを抱えもつ人ゆえに心を虜にする。映像を観るような会話は忘れられない言葉の宝庫だった。母性愛と恋焦がれる感情が波うち見守るように浸った。

  • 読み慣れていなくて何度も戻ったりしながら読む。
    (訳自体はとても読みやすい)

    彼女がどうなってしまうのかが気になって、ページをめくる。聡明で好奇心旺盛で、自分の信念に忠実で。
    でも、女性ゆえ不遇、批判される人生を送り、誤解されるというか輝けない、思い通りに生きられない。
    イタリアのファシズム含め時代の暗さと反動の芸術性の対照さも見られる。

    彼女が最後にミモに送った手紙がユーモアがあって悲しくてとてもいい。ミモとの友情?愛情?時にねじれたりもするけど、ヴィオラはミモを唯一の理解者と思い時に甘える。そんな関係にミモは自信をつける、そだててもらう。
    いつも出てくるオレンジやネロリの描写が香ってくるようなポイントとして明るい印象となる。
    彼は、残りの余生どのように生きたのか、濃すぎる半生(前半)に思う。彼女をずっと思いながら。関係ないけど、修道院の臨終の場面が質素過ぎる。

  • ヴィオラが語る、『墜落はほんの数秒じゃなかったの。二十六年間も続いたのよ。』ここに彼女たちの怒りがみえた。

  • 彫刻家が亡くなる直前。彼の物語。
    軟骨無形成症を患って生まれたミケランジェロ(ミモ)・ヴィタリアーニは、「こびと」と呼ばれ、母に捨てられ叔父にこき使われていた。ある日彼は地元の名士の女、ヴィオラと出会い、友情を育んでゆく。
    彼自身も持って生まれた彫刻の才能により、名声を掴んでゆくが、折しも時代は第一次世界大戦・第二次世界大戦の時代。ムッソリーニ・ファシズムに翻弄されそうになるが、ヴィオラの明晰な頭脳により彼らは生き延び、ヴィオラは議員に立候補する予定だった。しかし、地元を襲った大規模な地震により、彼女は亡くなり、ミモはピエタ像に取り掛かることとなる。

    ------
    すごい良かった…。
    イタリアをテーマにした作品て、なんでかわからないけどその人の人生を一から十まで描くことが多い。(具体的にはナポリの物語ーリラとわたし)
    不思議なのは,冗長になりそうなのに、なぜか読み始めると引き込まれてしまうことだ。
    今回のこの作品、「彼女を見守る」も初めは読みづらく感じたが、すぐに引き込まれて1日かけて読破してしまった。
    この作品は、ミモの話であると同時にヴィオラの物語である。もっというと、その時代では活躍できなかった女性や身体障がいを抱えたひとや移民などのマイノリティへの鎮魂歌だ。
    読んで良かった。

  • ひとつの彫刻作品が生まれるまでの物語。
    1人の人生をかけて生まれる作品って尊いなと思える。

  • 主人公が彫ったピエタは素晴らしい。素晴らしいのだが、何故か皆、少し違和感を覚える。最後に解き明かされるその秘密。そこに至る数多くの伏線。作者のJ.B.アンドレアの構成の才能は素晴らしい。
    近代イタリアの歴史や事件を織り交ぜながら、文化遺産の解説までしてくれるので現地を旅しているようだ。権力者と貴族たちの謀略に抗う貧しき人々。目まぐるしい展開は、豊かに描写されている登場人物たちの動画のよう。読者は彼らのうちの誰かのファンにさせられてしまう。エンタメ&教養小説とも言えるが、ジェンダー問題など、現代的価値観もしっかり反映されている。

    翻訳は素晴らしく、とても読みやすい。
    惜しいのはタイトルが原題の直訳であること。もう一捻り欲しいところ。

  • ふむ

  • とても面白かった。きれいな表現も多かったし。

  • 思った以上に面白かったです。

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著者プロフィール

澤田 直 ⽴教⼤学教授。著書:『〈呼びかけ〉の経験──サルトルのモラル論』(⼈⽂書院)、『ジャン=リュック・ナンシー』(⽩⽔社)、『サルトルのプリズム──⼆⼗世紀フランス⽂学・思想論』(法政⼤学出版局)、訳書:サルトル『真理と実存』『⾔葉』(以上、⼈⽂書院)、ペソア『新編不穏の書、断章』(平凡社)など。

「2023年 『はじまりのバタイユ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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