人間はガジェットではない IT革命の変質とヒトの尊厳に関する提言 (JUICE)

  • 早川書房 (2010年12月17日発売)
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  • 本 ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153200166

感想・レビュー・書評

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  • むむむ。読み応えあり。かなり深い問いだ。インターネットはわれわれを幸せにしたのだろうか。

    P26 MIDI登場後、音符は単なる概念ではなく、強制力を持つ確固たる構造となり、デジタル化した生活で避けることのできないものとなった。固定化という過程は人生のルールブックを洗う波のようなもので、思考構造が不変の実在と固定されてゆくにつれ、柔軟な考えが内包するあいまいさがそぎ落とされていく。
    固定化はデジタル的なもの描写方法として勝算のないものを取り除く過程だが、それは同時に、その結果、永遠性を与えられる概念を簡略化したり狭めたりする過程でもある。そのとき、意味内容の境界に存在する曖昧模糊としたニュアンスがそぎ落とされる。

    P32 ファイルという考え方はあまりよくないと思うコンピュータ研究者がたくさんいた。
    鉄道やファイル、音符に起きたことは、ほどなく人間の定義にも起きるはずだ

    P74 感応の輪とは概念的なもので、一人ひとりが自分の周りに描く。一定の距離を保って人を囲むように描き、その円の内側は自分と感応するもの、感応すに値するものとなる。
    ~問題となるのは、輪の境界近く存在するモノだ。特に、境界のすぐ内側あるいは外側にある物や人が問題になる。奴隷というのは、一部の人をこの境界の外側において人でなくすことだ。
    ~この輪をできる限り拡大したらまずい理由があるだろうか。答えはイエスだ。

    P91 私が嫌うデジタル文化へのアプローチでは、ケビンが示唆したように世界の本を一つにしようという動きが進んでいる。~クラウドにアップロードされた本にアクセスするインターフェースが断片のマッシュアップを促進するものだった場合、断片にまつわる文脈やだれが書いたのかをあいまいにするものだった場合、全体が一つの本になってしまう。 


    P103 これは自分をどう規定するのか次第だ。友人のグループについて、その恋愛関係についての情報を受け取ていると、次第に、その情報の流れをもとに物事を考えるようになる。言い換えると、この場合も、人が自らを貶め、コンピューターが正確だと見えるようにしている。

    P130 しかし、ソーシャルネットワーキングのサイトでプロフィールを作ろうと自分を単純化する作業は順番が逆転する。職業、配偶者の有無、居住地などのデータを記入していくわけだが、このとき、デジタルへの単純化は目的や結果ではなく原因となるもの、新しい友人との出会いにつながるものとなる。

    いずれの場合も、人生がデータベースに円冠される。この劣化は、いずれも、同じ哲学的まちがいによって引き起こされている。つまり、人間の考えや関係を今のコンピュータが表現できるという考え方だ。どちらも、今、コンピュータにはできないことだというのに。

    P133 彼らがとめどないストレスに身をさらしていることに、いつも驚かされる。オンラインの評判を保つ努力をしなければならない、個人に対していつ牙をむくかわからない手段意識にめをつけられないようにしなければならないのだ。ある日突然、オンラインで恥をかかされたとき、「フェイスブック世代」の若者に逃げ道はない。群れはひとつしか存在しないからだ。

    P231 新しい音楽はどこにあるのだろうか。どこを見ても、レトロ、レトロとレトロばかりになってしまった。

    P317 それはつまり、健康なお年寄りはどんどん健康になって長生きすること、そして、人生の「若い」時代が長くなることを意味する。
    ~技術の進歩で人の寿命が延びると文化の変化は遅くなるのだ。

  • 名著

    インターネットは人を幸せにしたのだろうか?
    人間の可能性は、インターネットにより規定されていないだろうか?
    人間を劣った存在として、人工知能の方が素晴らしい存在として考えていないだろうか?

    人間という存在を拡張するためのインターネットの仕組みが、世界をどのようにとらえるかに影響を与える。そして人の哲学的側面を変える。
    ーだから人間と技術との関係について十分議論するべき。

    ブーバ、キキ実験

    嗅覚という世界認識のために、脳は特殊神経回路を発達させる必要があった?

    画像や音声はビットで表せるが、においは表せない? 文脈次第で他の感覚からの情報が必要

    表せないところもコンピュータのハードの箱が影響している?

    言葉と匂いの構造は似てる、二つの嗅覚系
    と、汚言の神経回路

    話すことはセクシー?
    昔は歌で異性にアピール
    音のつながりを無限に変化させられるのは人と、一部の鳥だけ

    教室という子宮、子供の時期があるのは印刷機が普及してから?
    裕福になると子供時代が伸びる

    ムーアの法則により世代的な文化の変化は遅くなる

    ーーーーー
    2回目

    ラニアーは人間を創造性の塊と見て、人が創造性を発揮するのが幸せと考えていたのだろう。

  • 新書

  • 便利な社会となっていく。本当か?ITを活用してなんていっているが、実は活用されているのは人間?なんてことを考えている人たちに読んでほしい本。

  • 長い夏休みを使って、7年前にゼミの教授から卒業記念にもらった本をようやく読了。最近は本とか読んでなかったなーと痛感。内容はざっくりとVRの名付け親による、デジタル(IT)革命への警鐘という感じ。翻訳ということもあって、難解な部分も多かったものの面白かった。

    人間が機械やデジタルに過度に合わせにいくようになると、人間の創造性や可能性が奪われ、単なる一ガジェット(やセンサー)に堕していくという……8年前に書かれた本なのに、今でも形を変えて通用することばかり、というのは、逆に筆者が危惧した方向に、社会が進んでしまっているということでもあるのかなと。

  • かなり「小難しい」本。

    現代が進もうとしている、サイバネティックス全体主義が本当に人間にとって良いものか、という疑問を投げかけている。

    タイトルの通り、人間はガジェットではない。そして、それが一体どういう意味なのか、すこし考えてみる必要はあるだろう。

  • なんとも読みにくい本。書いている内容も分かったような気もするし、そうでない気もするし。難解。この本からの引用を入力していてもそう思う。何か日本語訳が変。
    と、言いながらも面白く読ませてもらいました。読んでいると、この著者は少し考え過ぎの気がするけど。

  • 読みづらい。訳が悪いのか、元の文章が難解なのか。

    アナログからデジタルへ(離散化)することで、そこで失われるものこそが人間性ではないのか?ということを言っているような気がするが・・・

  • ちょっと断念。。作者が賢すぎるのか、訳が雑すぎるのか理由はわからないが日本語がわからない。。

  • タイトルに惹かれて購入したものの、著者の独特な哲学と言葉遣いのせいで、不必要に読みにくくなってしまっているのが残念である(決して翻訳が悪いわけではないと思う)。メインの主張は「ITの発達が人間を堕落させている」というもの。私は常々「人工知能を実現したければ、人間がコンピュータみたいな融通の利かない“馬鹿”になるのが近道だ」と思っていたので(半分本気)、この本に書かれていることはかなり正しく諒解できた気がする。とはいってもIT無しでは生きられない世の中になりつつある以上、それを嘆いていても仕方がないし、個人の責任で「適当に距離を置きつつ」「適切に活用する」ってだけのことだと思うけどね。自覚なく依存しすぎると危険なのは、何もITに限ったことではないし。

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