オール・クリア2 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5010)

  • 早川書房
4.51
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感想 : 63
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153350106

作品紹介・あらすじ

〈ヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞受賞〉第二次大戦中のイギリスから未来に帰れなくなったオックスフォード大の史学生三人は、ダンワージー先生と再会できるのか……好評二部作の完結篇!

感想・レビュー・書評

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  • ついに来ました~怒涛の完結編!
    「オール・クリア1」は心折れそうになりましたが、我慢我慢。
    読み進めれば‥

    タイムトラベルで第二次世界大戦中のロンドンへ来たまま、戻れなくなったポリーとアイリーンとマイクの3人。
    ポリーとの約束どおり、探し続けたコリンは‥
    劇場で働くポリーは、老いた名優サー・ゴドフリーとあまり深く関わって歴史を変えてはいけないと自戒するが、空襲のときは思わず助けに走る切なさ。
    それぞれの知識と立場から事態の原因を推測し、自分のできることを選んでいく人々が感動的なのです。
    もといた時代へ戻ることが出来なくなったその理由とは?
    どこにでも出没する悪童ホドビンズ姉弟の意外な役割とは。
    そして、感動の‥

    ああ‥
    この本、後半は何度も読み返しちゃいました。
    この本だけでもけっこう長いのに。
    いや~ものすごく詳しく描かれていた前作、そしてこの展開。
    それだけのことはあるんですよ!

    もともと、タイムトラベル物の初期の短編も第二次世界大戦のロンドン空襲が題材だったくらいだし、書きたい時代だったようです。
    その後、9.11が起きたために、どうしても書きたい気持ちが募ったそう。
    苦難の時代にあって自信を喪失しそうな人々を励まし、尊厳を伝えたいという意図なのでしょう。

    ロンドンの空襲がここまで酷かったとは正直、詳しくは知らず実感がなかったこと。
    逆に、東京大空襲のことなど、米英の今の若い人はほとんど知らないんでしょうね。
    当時は日本は枢軸国側だったことを思うと、やや複雑な気持ちにも。
    条約ではドイツと組んではいても、当時の日本人はヨーロッパ戦線には行ってないし、ナチスのことなんて何もわかっていなかったのでは。
    今は体制としては米英と同じ自由主義、民主主義の側にいるけれど。
    既に戦後70年!という歴史の移り変わりに、いささかめまいを覚えつつ、読了。
    素晴らしい作品であることは間違いありません。

    • niwatokoさん
      ほんとうにおもしろかったですよねー!

      そして、わたしもロンドン空襲のことはほとんど知らなかったので、そうだったんだーと思いました。東京...
      ほんとうにおもしろかったですよねー!

      そして、わたしもロンドン空襲のことはほとんど知らなかったので、そうだったんだーと思いました。東京大空襲については子どものころ児童向けの本で読んでいたりして、ロンドンも同じように普通の人々が空襲にあって防空壕みたいなところに逃げていたんだなあと、仲間意識っていうとすごく変なのですが(仲間どころか敵だったんだし)、感慨深いというか複雑な気持ちでした。
      2014/01/10
    • sanaさん
      niwatokoさん、
      コメント、ありがとうございます~!
      本当に面白かったです☆
      なかなか、これだけの作品読めませんよね。

      ロ...
      niwatokoさん、
      コメント、ありがとうございます~!
      本当に面白かったです☆
      なかなか、これだけの作品読めませんよね。

      ロンドン空襲がこれほどの規模だったとはね。
      防空壕みたいなところに逃げ込むって、ちょっと共感覚えそうでした。
      でも敵なんですよね~生まれる前の出来事とはいえ。こうまで必死に一丸となって戦っている相手に当時の日本も??と思うと、なんか微妙ですよね。
      今は敵国じゃないのを喜んでおけばいいでしょうか。
      2014/01/10
  • 最高です。もう夢中になって読みふけってしまった。こういう読書がいったいどれくらいできるものだろう。早くも今年度ベスト1に決定!

    まずは目次を見て、ああかこうかと推測する。一九九五年?帝国戦争博物館?なんだそりゃ? ラストが一九四一年のロンドンになってるよ? 二〇六〇年のオックスフォードに帰るんじゃないの? 頭に渦巻く疑問。でもでも、読み終わる何時間後かにはすべて明らかになってるんだ。これほど楽しい気分もそうそうない。なんてったってコニー・ウィリスだもの。

    「ブラックアウト」「オール・クリア1」の二冊を横に置いて、む?と思ったらすぐ前のところを読み返しながら、ずんずん読み進む。なかなかお話が進まずもどかしかった「1」とは打って変わって、三人の運命はスピーディに展開していく。読者の予想を小気味よく裏切りながら、これまでの伏線がどんどん回収されていく後半は、お見事!の一言だ。

    いったい三人はどうなるの?と息を詰めて見守りつつ、全体を貫く強いメッセージに何度も何度も心を揺さぶられた。それぞれの場でそれぞれの「分をつくす」名もない人たちの営為によってこの世界は成り立っている。自らの努力の成果を知ることなく、讃えられることもなく、死んでいった膨大な人たちに対する心からの敬意がここに込められていることを、ひしひしと感じた。

    この物語には実にたくさんの人が登場するけれど、ストーリーのためだけに存在する人がいない。みんな、その人として生きている(こういうところも含め、宮部みゆきさんとの共通点をよく感じる)。セント・ポール大聖堂のミスター・ハンフリーズ、教区牧師のグッドさん、サー・ゴドフリー、ダリッジの看護部隊の面々…、忘れがたい人たちばかりだ。

    ラストに近づくともう涙をこらえられない。いくつもの別れの場面に泣けて仕方がない。トラファルガー広場でアイリーンがポリーの後ろ姿につぶやく言葉「私たちこれから大親友になるのよ」には、タイムトラベルの切なさが詰まっている。

    八年がかりで執筆されたというが、まったく複雑な構成で、しかもそれがわかりにくくないところがすごい。非常に綿密に組み立てられているからだろう。読み返したらいろいろ発見があるに違いない。これも楽しみだが、しばらくはこの余韻に浸っていたい気もする。いやあ満足しました。

    • そよかぜさん
      うわぁ~、たまもひさんの興奮が伝わってきます!
      たまもひさんがここまで激賞する本とはいったいどんなものなのか、読んでみたい気がします。
      ...
      うわぁ~、たまもひさんの興奮が伝わってきます!
      たまもひさんがここまで激賞する本とはいったいどんなものなのか、読んでみたい気がします。
      三部作ということでしょうか。
      2013/06/13
    • たまもひさん
      そよかぜさん、こんにちは。お久しぶりです(^^)
      コメントありがとうございます。

      えーと、これは三部作というよりは、長ーい一つのお話で、前...
      そよかぜさん、こんにちは。お久しぶりです(^^)
      コメントありがとうございます。

      えーと、これは三部作というよりは、長ーい一つのお話で、前編が「ブラックアウト」、後編が「オール・クリア」、後編はあまりに長いので二分冊になり、お待ちかねの「2」が出たところなんです。
      しかもこれはシリーズ物で、「ドゥームズデイブック」「犬は勘定に入れません」という先行作があります。それぞれ独立したお話なんですが、やっぱり順番に読む方が感動が大きいです。
      どれも面白いですよ~。
      小難しいSFではなくて、物語を読む喜びにあふれていると思います。大好きなシリーズですが、今回は特に涙涙でした。
      ちょっと長いので、お時間のある時にオススメです。
      2013/06/13
  • なんかすごい話だった…さすがウィリス
    超長編で風呂敷広げまくって、きっちり畳んでくるのすごい…

    先の2冊は読み終わるのに時間がかかったけど、最後の1冊は丑三つ時に一気読みしてしまった!しかも読み終わってから色々考えちゃって更に眠れなくなった…
    ぐるぐるぐる…
    しかし後悔はしていない!

    アイリーン、ポリー、マイク。
    それぞれの結末がなんともね…。
    あぁー!
    主人公はポリーじゃなくアイリーンだったのかも知れない。

    これはもう一回最初から拾い読みしたい。
    (長すぎて全部読むのは辛い 笑)

  • ついに、「オールクリア(警報解除)!」
    それは今、世界中の人々が心待ちにしている言葉。

    今年中に『ブラックアウト』『オールクリア 1』『オールクリア 2』約1750ページ二段を読み切ると決意し、本日読了。
    まさしく題名の通りの「オールクリア」で終焉。

    私たちは歴史を遡ることはできないけど、物語に登場した市井の人たちのように、コロナウイルスパンデミックの「オールクリア」まで、粘り強く今を生き抜く…。
    「なぜ、そうなってしまったのか」を考えるより「いまよりのちに、希望を持って」

    サー・ゴドフリーが舞台から叫ぶ!
    「明けない夜はない! The night is long that never finds the day!」
    (シェークスピア『マクベス』第4幕第3場)

  • 構成力が素晴らしい。正直言ってオール・クリア1は読んでいていらいらしたが、1995年帝国戦争博物館のシーンが出てきてぐっと話が収れんしていくのは面白かった。8年間のたゆまぬ努力と変わらぬ愛の大ロマンスでもある。

    しかしこれはやはり戦勝国の物語だ。自らの仕事をすべての国民が黙々とこなし、皆が頑張ったから勝利を得たといわれると、じゃあ我が国はみんなが卑劣でずるく怠けていたから負けたのかいと言い返したい。うちの両親や祖父母はもし読んだら相当怒るぞ。英・米では「東京大空襲」のことを知らないそうです。

  • 遂に読み終わってしまいました、怒涛の完結編。こんなに待ち焦がれた最終巻もありませんよ、ホンマに。
    「オールクリア1」まで拡げるだけ拡げた風呂敷が次々に畳まれていく、しかも綺麗に丁寧に。
    新たに1995年(帝国戦争博物館)が挿入され、これがまた涙を誘います。約束通りあきらめずに何年も(8年!)ポリーを探し続けたコリンの愛情と執念。そして、タイムパラドックス上止むを得ない事ながら苦渋の決断をしたアイリーンの使命感とホドビン姉弟への愛情。
    「悪名高きホドビン姉弟、恐怖のホドビン姉弟、恐るべきホドビン姉弟」全編を通じて大迷惑の姉弟が、アイリーンの愛情に応えて最後は時を超えたメッセンジャー役を演じます。
    そしてそして待ってました!満を時して回収チーム、コリンが登場、全員が帰れないのはちょっと悲しい、でも素晴らしいエンディングでした。新しい仕掛けは何も無い、タイムトラベルとタイムパラドックスだけでこれだけ読み応えのある大長編にしてしまう、コニーウィリス凄いです。
    昨年10月に「ブラックアウト」を読んでから約9か月、1770ページ!(ページ数勘定したら卒倒しそうになります)読み応えありました。暫くは余韻に浸りたいと思います。

  • 「ブラックアウト」から「オールクリア1」と同2まででひとつの物語。とにかく長かった。面白かった。終盤に行くまでは少しダラダラとした感じはあるが、それらはすべてラストに向けた伏線である。最後にどんどん伏線が回収されていくのは見事。作者も苦労したと後書きにあるのだけど、特殊な時間の流れかたをする本作品においては、辻褄を合わせるだけでも大変な作業になるのは簡単に想像できる。これで意外というか、ある意味ロマンチックな結末まで用意するのだから、コニー・ウィリスはどんだけすごいんだと思わざるをえない。長くて読むのは大変だけど、読み終えた時の満足度は高い。読む価値はあった。

  •  3冊合わせて1745ページ。ポケット判で750ページ以上もある「ブラックアウト」を読んだ時には、「これ、普通の作家なら200ページぐらいで書き終えるのでは」などと思ったが、全部読み終えてしまったら、タイムトラベルものの常でまたすぐに最初から読み直したくなる。

     実際に読み返さなくても、あれはどうだったか、ここはどうなっていたかとページをめくって確認してしまうこと必定だ。それほど登場人物たちに魅せられ、この長い物語から離れたくなくなってしまう。大空襲下のロンドンに閉じ込められるポリー、アイリーン、マイクの史学生3人をはじめ、いたずらが過ぎて手に負えないビニーとアルフのホドビン姉弟、勝利を信じて懸命に生きる人々をコニー・ウィリスは生き生きと描き出す。

     SFだなんだという前に、この小説には物語の魅力が詰まっている。

  • 最後までノンストップ!
    あのひとがこのひとで、ことときがあのときで。つながるつながる。もう一度ブラックアウトを読んでみたくなったけれど図書館に返してしまったのでちょっと後悔。また借りてくるには重いのよね。
    最後にはアイリーンとホドビン姉弟が大好きになりました。アイリーンは愛のひとだ。はじめてのタイムスリップだったんだよね、アイリーン。最後の最後のビニーに泣かされる。とりあえずアイリーンとこだけ読み直そうっと。
    そもそもブラックアウトの主な登場人物紹介のところにあのひとやこのひとがなかったところで、どうして思い至らなかったのか。かくいう私もクリスティの犯人は一度あてられなかったクチです。

  • 「ブラックアウト」「オール・クリア1」「オール・クリア2」通しての感想。
    厚い!紙で読んだのだが、1冊目を手にしたとき、あまりの厚さに読む前から心が折れそうに…。3冊で、400字換算3,500枚。当初もっと長かったものを、必死でこの長さに収めたらしい。どれだけ長いの、コニー・ウィリス。まさにこういった本こそ電子書籍向けではあるのだけれど、「新☆ハヤカワ・SF・シリーズ」の装丁も格調高く捨てがたい。
    読み始めると、この分厚いページがみるみる減って楽しくなる。特に「ブラックアウト」終盤1/4はものすごい疾走感。物語に完全に入り込んでいるため、単語を見た瞬間に状況が理解できてしまう。プロットだけを考えるともっとコンパクトにできるはず、と冗長に感じるけれど、物語ピークでの加速感は、飽きるほどひたすら描き込まれた助走期間があればこそ。
    舞台は、第二次世界大戦中のロンドン。タイムトラベルしてきた学生がトラブルに巻き込まれ…という物語。歴史や地理などの背景知識が全くなくても十二分に楽しめたが、知識があればもっと楽しめたのでは、と感じてしまったのは残念。
    タイムトラベルSFでは「パラドックス」の処理が肝心。本書では、流行りの量子力学的に煙に巻くでもなく、「感覚的に理解できる」パラドックス解決法が提示されている。しかし登場人物はこの解決法に疑問を抱き、実は…。このテーマが、物語を構成する単なる「ギミック」にとどまらず、登場人物の心の動き、そこから紡ぎ出されるストーリーの根幹に影響を与えていく。この処理がお見事。
    章構成も、短い章構成で時間・場所をシャッフルする中に、「叙述トリック」を紛れ込ませていく巧妙な構成。二転三転する登場人物の名前がトリックの要。一見誤植かと見逃しそうな中にヒントが埋め込まれており、本当は再読して解き明かしたいところ。ただこの長さでは…。
    今だからこそ3冊連続して読むことができ、久々の濃い読書体験ができたのは幸せだった。

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