- 本 ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784153350113
作品紹介・あらすじ
〈英国SF協会賞/ジョン・W・キャンベル記念賞受賞〉死と狂気に彩られた無数の島々〈夢幻諸島〉には、それぞれに美しくも儚い物語がある……。語り/騙りの達人プリーストが紡ぐ眩惑の連作集
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
北と南に大きな大陸があり、その中間に広がる無数の島々から成る夢幻諸島。そのガイドブックという形を取った連作短篇集でありながら、長篇としての作品。半分は夢幻諸島に点在する島々の紹介であるが、それがこの作品の下地となって物語を引き立たせる。6~7人くらいの主要な人物が、時折挟まれる中編の物語に登場し、互いにリンクし影響を与え合いこの夢幻諸島に様々な痕跡を残す。超凶悪昆虫スライムとカムストン&カウラー、そして最後のヨーとオイの物語が強く印象に残った。
-
最初は掴みどころが少なく読み進めるのに苦労。途中から何度か登場する人達の人物像や各々の相関関係が見えてきたり、諸島にまつわる謎や出来事が繋がり始めたりして、驚かされたり更なる謎が浮かんだりして、俄然猛烈に面白くなった。全ての謎が最後に収束するわけではないが、だからこそ読後にフワフワ&クラクラした心地良い余韻が残り、かつ何度も読み返したくなった。
例えば今度読む時は、繰り返し登場する人物がどの島の話の時に登場するのか対応表を作り、各人物毎に登場箇所だけを一気読みしてみると、最初読んだ時とは違ったその人物に関する何かが見えて面白いかもと妄想している。
または、不明な個所も多いけど、島ごとの気候や位置、産業、脱走兵や難民の扱い、通貨等を一覧表にまとめて、「何か発見できるかなあ」とニヤニヤしながら眺めたり、それをもとに地図をでっち上げる遊びなんかも出来そう。
まあ、表を作ったからといって謎が消えることは無いけど、自分なりに整理したくなる魅力がこの小説にはある。色んな読み方楽しみ方が出来る小説だと思う。
後、繰り返し登場する人物はみんな相当クセがある。その中でもトンネル堀りアーティストのヨーや画家のバーサーストは、人騒がせな芸術家だけどどこか憎めない魅力があり、名前が出てくる度に「今度は何をやらかしたのだろう」とニヤニヤしながら先を読んだ。
夢幻諸島物の『The Adjacent』も是非是非翻訳して欲しい! -
すっかり作者が作り出した世界に引き込まれてしまった。地図が作れない島々には、それぞれ個性がありまるで島自体が生きているかのよう。ホラーじみた話も切ない恋の話もどこか曖昧ではっきりしないことが多く、夢の話のように終わってしまう。そこがいい。「双生児」を読んだ時はピンとこなかったが、これは面白い。
-
2014/04/17
-
-
夢幻諸島-ドリーム・アーキペラゴ-何とまあ魅惑的な名前であることよ。その名の通り夢まぼろしのような島々をめぐるお話。
ガイドブックの形を借りて語られる章と、物語風の章とが混在して、独特の雰囲気をかもし出している。複数の人物が何度も登場するけれど、まとまったお話に行き着くわけではない。その意味で、翻訳の古沢さんが言うように、これは長編ではないだろう。でも、一つ一つの章はかなり断片的なので、連作短篇とも言いにくい。まったくユニークだ。
プリーストといえば、「語り」すなわち「騙り」。最初に読んだときより二度目三度目の方が格段に面白い。どこから読んでもいいつくりなので、気が向いたら適当にパラパラ読み返す楽しみがある。初読では、インパクトのあるスライム発見譚がお気に入り。 -
超短編連作集
想像の諸島を舞台に紡がれるさまざまな物語。最初とても退屈であるが、殺人昆虫物語から少しばかりペースアップする。しかし、それでもそれぞれの短編は玉石混交。分厚い新書という形態もあって、なかなか進まない。
確かにストレンジ・ワールドなんだが、下手に諸島ガイドブック形式をとるからか、無駄にややこしい気がする。再読を期して、今回は中座することとした。最初の数話で終わったから。
作品は以下の通り
風の島
静謐の地
ジェイム・オーブラック
雨の影
沈黙の雨
鋭い岩
大きな家・澄んだ深海
暗い家・彼女の家・夕暮れの風
すべて無料
台無しになった砂
吊された首
歓迎せよ
芳しい春
凍える風・大提督劇場
手に入れた平和
曖昧な痛み
二頭の馬
忘れじの愛
完成途中・開始途中
伝言の運び手・足の速い放浪者・無人機
行方の定まらぬ水
赤いジャングル・愛の戸口・大きな島・骨の庭
遅い潮
険しい山腹
たどった道
たどられた道
唱えよ・歌え
臭跡・痕跡
静かな波音を立てる海
死せる塔・ガラス
高い・兄弟
口笛を鳴らすもの
古い廃墟・かきまぜ棒・谺のする洞窟
大聖堂
ダークグリーン・サー・ディスカント -
「毎日新聞」2013年10月27日付朝刊で、
若島正先生が紹介しています。
「解けない謎に満ちた夢の中の島をめぐる物語」
(2013年10月28日) -
最初はちょっと取っつきにくい。
でも多分、噛めば噛むほど味が出る、スルメのような小説。
もう一回読むか。 -
夢幻諸島の島々をめぐるガイドブックという体裁をとった連作短篇集。時に結びつき時に矛盾するエピソード、双生児やガラスといったモチーフ、信頼できない語り手に翻弄されるうちに浮かび上がる歪な騙し絵に幻惑される。いやー、面白かった !!
クリストファー・プリーストの作品





