ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
- 早川書房 (2016年10月21日発売)


- 本 ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784153350298
作品紹介・あらすじ
第二次世界大戦で日本とドイツが勝利し、巨大ロボット兵が闊歩する日本統治下のアメリカで、石村大尉は違法ゲーム「USA」を追うが――二十一世紀版『高い城の男』と呼び声の高い歴史改変SF
感想・レビュー・書評
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「お偉い将校はんは経歴が傷つかんことだけ考えとって、評価すべき所を見とらん。兵士は顎で使われてよろこんどる」
作者は幼少期から日本のオタク文化に親しんできたということで、「日本らしさ」というものをよく理解している。
「大日本帝国がアメリカに原爆を投下し、第二次世界大戦に勝利した世界」を舞台にした改変歴史SF(と呼ぶらしい)である。私はSFの良い読者ではないが数少ないSF読書履歴からするとこの手のディストピアものが比較的好物なのだろう。思いつくのは大原まり子の「ハイブリッド・チャイルド」である(Webで検索すると内田春菊の同名漫画がよくヒットするがおそらく無関係)。科学は進歩しているが人心は荒廃し、その中で懸命に生きる姿に心惹かれるものがあるのかもしれない。
本書も舞台設定は1988年であるが、技術は現実よりも進歩しているように見える。だが精神性はむしろ退化というか、「大日本帝国」から変わっていないようにも見える。たぶん作者の皮肉か何かだろうが、確かに敗戦という大きな出来事があったからこそ「大日本帝国的なもの」が否定されたわけで、もしそれがない、むしろ強化された世界と考えると、本書の舞台である北米大陸がこの有様であるとすれば、日本本土はどのような状況なのかがむしろ気になる。
ゲームのプロが存在し、観客にプレイを見せるという娯楽が存在しているあたりは非常にアメリカ的でもある。
主人公の一人(言ってもよいだろう)、特別高等警察の槻野昭子は天皇に絶対の忠誠を誓うガチガチの憲兵キャラで、不穏分子への拷問尋問よろこんで! みたいな感じだったのが様々な思惑に迷いつつも忠義だけは維持しようとしてかなり酷い目に遭うというあたりにカタルシスを覚える向きもあるのかもしれない。ビジュアルが表紙と口絵に巨大ロボのイラストがあるだけで人物が描かれていないため、勝手に軍服姿のあきつ丸を想定していて、それがあんな目やこんな目(ネタバレ回避)に遭うのでこちらの精神的にもなかなかきついものがあった
。ボーイフレンドは正直どうでもよろしい。
二段組で、ページ数の割りにボリューム感のある一冊。
余談であるが本文中では「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」が「USJ」と表記されるので、どうしてもユニバーサルスタジオジャパンが脳裏をよぎる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
高い城は超えられず、ジャンル摘み喰い中途半端
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USJ means United States of Japan! i hate war, if got win to Japan. anyway, which one do you like, comedy or tragedy? life is very short. why don't get love and peace? 「四方の海、みな同朋(はらから)と思う世に、など波風の立ちさわぐらん」
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アメリカ系韓国人が日本のオタク文化に浸かりながら成長するとこんな感じに熟成するらしい。
うーん? と思うところもかなりあるんだけど、ナチスドイツヒトラーと大日本帝国が第二次世界大戦で勝ったIFディストピアもの。
日本がアメリカに対して核兵器を使った場合、日本人収容所で解放された人々から始まる。
何とか系日本人として生きる世界。
陛下は陛下であることに疑いを持たない特高ヒロインとか、ゲーマー兼製作者軍人さんがヒーロー。
ロボットゲームだったり、スマホが万能過ぎたり、これでもかってネタ突っ込んでる。 -
もしかしたら外国文学に「伊勢うどん」が登場するのは初めてじゃないかな?若名将軍とベンとの会話。
「わたしは伊勢うどんが食べたいな。好物なのだ」
「食べたことがありません」
「いつか連れていってやろう。伊勢志摩でも正しい伊勢うどんを出す店は数軒しかない」
「楽しみです」
場所は、ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン(USJ)の首都ロサンジェルス。若名が言っていることは事実。ネットで知名度の高い店でも、かまぼこが入っていたり、卵をのせていたりする。伊勢うどんには、薬味として葱、好みで一味。あとは、ひたすら箸を使って、あの濃いたれをうどんに絡ませる。麺に白いところがなくなったら準備OK。一気にすするのみ。
歴史改変SFとしての面白さはあまりない。作者は日本のアニメやゲームのファンらしい。表紙のイラストに出ているメカの活躍に期待すると裏切られる。
拷問や嗜虐的な快楽への言及があって、人によっては嫌悪感を持つことがある。評者もどちらかといえばそうらしい。人間の身体を弄るのは、好きではない。(☆は厳密には二つ半。四捨五入で三つになっている) -
日本が戦争で勝った世界という設定のSF。描かれる世界はブレードランナーやパシフィックリムといった映画で見たような世界観。想像を全然超えてこなかった。ストーリーにもキャラクターにも魅力を感じられず、著者が書きたいシーンを繋げたような印象を受けた。
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タイトルといい表紙のメカといい、軽薄なキワモノと思って読み始めたが、なかなか重厚なデストピアの物語であった。
ひとつひとつ細部の練られたステージを経巡りながら、物語が進んでいく感じはゲームっぽい。
バイオでグロい汁気の多い暴力シーンがたくさん出てくる。拷問と回想がセットになって描かれるシーンが反復されるのが、読んでても苦しくて痛い。
将軍にもっと凄みがあれば、よかったなあとは思った。 -
いや、なんかすごいイヤ、この小説。
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面白かった! エキセントリックなジャパネスク、「電卓」や肉電話(!)などのトンデモガジェット。イロモノっぽいが史実を踏まえたちゃんとした歴史改変SFで、一気に読ませる。
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初レーベル。何冊か積ん読はあるんだけど。
SFは普段ほぼ読まないのでどんなものかと思ったのですが、うーん、正直期待外れ…。
表紙の巨大ロボも一応登場はするんだけどちょっとだけで、表紙詐欺なのではと思ってしまう(操縦者のキャラがとても良いのでもっと出てきてほしかった)
第二次世界大戦で日本が勝ったら、という歴史改変SF(というジャンルで良いのでしょうか)になるんですが、うーん、一人の日本人としてこの小説をどう受け取れば良いのか(特に天皇の描写に関して)ずっと座りの悪い感じがして、物語に入り込むことができなかった。主人公の一人である昭子に感情移入できなかったのも原因の一つかなあ。もう一人の主人公のベンはこの物語を引っ張るにはやや魅力に欠くような気もしたし。もっと振り切ってイケメンキャラにしちゃえば良かったのでは。
うーんなんか色々と勿体無い感じのする読書だったなー。ロボのバトルシーンがアツかったのでもっとそっちに振り切って良かったのではないかと思う。色々な要素を詰め込みすぎて、結果中途半端になってしまった…という感じがした。
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