母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

制作 : 牧野 千穂  古沢 嘉通  幹 遙子  市田 泉 
  • 早川書房
3.83
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本棚登録 : 235
レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (526ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153350328

作品紹介・あらすじ

不治の病を宣告された母が愛する娘のために選び取った行動をつづる表題作、明治時代の満州にやってきた熊狩り探検隊一行の思いがけない運命を描いた「【烏蘇里/ウスリー】【羆/ひぐま】」など、あたたかな幻想と鋭い知性の交錯を透徹な眼差しで描いた16篇を収録した、待望の第二短篇集

感想・レビュー・書評

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  • ケン・リュウ第2短編集。
    ショートショートのようなワンアイデアで切れ味勝負のような作品から、中編と読んでもいいようなちょい長手作品まで、飽きることなく捨て作品なしの良質なSF宝箱である。上下2段組み500Pのボリュームはさすがにズシンときたが、これも掲載作の密度が濃いからで、決して水増しじゃないということの証明。

    どの作品もそうだが、オリエントっぽいテイストが漂うのがよい。チャイニーズアメリカンである作者ならではの作風が強みになっている。時には郷愁が漂い、時には生命力を感じる。
    どの国にもどの民族にも歴史や物語があり、誰にだって人生がある。あの国はダメだとか、あの民族は劣っているとか、あいつらはワルいとか、安易に国家や民族や集団にネガティブなレッテルを貼るのは怖いことである。差別につながることは勿論のこと、硬直した非寛容な思考は自らの成長すら阻害する要因になる。勿論「犯罪者集団」とか「危険な思想団体」はあるし線引きは必要なんだけど。

    所謂中国や韓国を無意味に差別するだけの「レイシスト」であったら、この本の魅力は伝わらないだろうし、分かろうとしないんだろうな。自省を込めて思うんだが、ストレッチで稼働域を広げることはフィジカルだけでなくメンタルにも必要なことなんだろうな。

    この本は、メンタルをほぐしてくれる効果も抜群にあります。

  • 各篇実に多様な趣の短篇集なのだけど、そのどれにも独特の叙情感が漂っているのがケン・リュウの特徴ではないかなあ。作品によって濃淡はあるが、切なく心にしみる感じが共通している。

    強く印象に残るのは、揚州大虐殺に材を取った二篇。隠蔽され続けてきた歴史に光を当てたもので、心を揺さぶられた。特に「訴訟師と猿の王」の田の造型が見事。

    進んだテクノロジーが家族にもたらす軋みを描いたものも目につく。テーマ的な新しさはないが、ケン・リュウの故国や家族、特に母に対する思慕の念が色濃く投影されているようで、しみじみと読んだ。

    なかでもやはり表題作が出色。SF的ガジェットと普遍的な親子のありようが溶け合った一篇で、たった数ページでこれだけのことが言えることに驚嘆する。

  • 素晴らしきケン・リュウ!
    表題作もいいが、ヒーロー好きとしては、スーパーなあの方と『三国志』きっての英雄をテーマにした作品がハートに刺さる。後者の主人公は「老関」と呼ばれ英語にすると〝ローガン“にもなるという…

  • 先頃文庫化された『紙の動物園』(※文庫版は2分冊)に続く、日本オリジナル編集の短編集、第2弾。
    前作は非常に叙情性が強く、哀切な印象を残した短編集だったが、本書はまた雰囲気が違っている。冒険小説のような『烏蘇里羆』、女性私立探偵を主人公にしたハードボイルドミステリ『レギュラー』、ある種のホラーじみた恐怖が残る『パーフェクト・マッチ』(同様の恐怖はデイヴ・エガーズ「ザ・サークル」にも見られる。関係ないがもう3年も前の本なのね……)など、予想外のものが多かった。
    勿論、前作同様、哀切な短編もある。それにしても、ケン・リュウの母親(母性)に対する一種の思慕というのは、ちょっと谷崎潤一郎っぽいね。

  • ほんとすごい作家だ。3年間で54篇書いたとか、異常。
    『母の記憶に』『存在』『パーフェクト・マッチ』

  • ケン・リュウ2冊目の作品集。版元は“短篇集”としているが、ショートショートから中篇ほどの分量があるものまで含まれている。作風も実に多彩。ただ、前作『紙の動物園』でも思ったことだが、意外にワンアイディア小説が多い。本書の中で最長の「万味調和」は、開拓期のアメリカを舞台に、砂金掘りの中国人とアメリカ人の娘の交流を描いた作品。なんと『三国志』まで登場する。サイバーパンク風の「レギュラー」や、GAFA的未来の「パーフェクト・マッチ」などは、長篇のほうが向いているのではなかろうか? この人の長篇を読みたい。

  • 古代異星人の文書。解読する人が変わると内容も意外なものに。実際に起こり得そうな「重荷は常に汝とともに」

    ネットのビックデータの警鐘を思わせるような「パーフェクト・マッチ」

    遠く離れた病床の母親と息子の罪悪感「存在」

    SFハードボイルドの「レギュラー」、中国の歴史をベースにした話…好きな話をあげていくと結局全てを書き出してしまいそうなくらいに、バラエティに富み面白い。

  • 面白かった。正しいと信じたことを貫ける勇気のある主人公が物語の、「草を結びて・・・」「訴訟師と猿の王」の姉妹編がお気に入り。「万味調和・・・」もローガンが格好イイ!けどテーマは深い。アメリカもホロコースト並みなことをしてたんだ。。。オススメできる良作揃いの短編集でした。

  • 中国系アメリカ人の作者のSF短編集。アイデアが面白くて、心打たれるものやゾッとさせられるものもあって幅広い。特にAIやテクノロジーが今より発展した近未来で起こり得る諸問題をテーマにした話が興味深い。「パーフェクトマッチ」の中の、個人のデータを収集して1番自分に合う情報を与えてくれるAIに、中立性など存在しないというセリフに背筋が寒くなる。自分で考えることを放棄して他人任せにする事の恐ろしさを、私たちはちゃんと理解してるのか考えさせられた。

  • 短編集は評価が難しい。面白いものもあるし読みづらいものもあった。前評判が高いせいで期待度が上がったこともあり素直に楽しめたのは3分の2ぐらい。でも振り返るとどれもよい作品だった。やはり評判通りということか。

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