隣接界 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 早川書房
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本棚登録 : 115
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (590ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153350359

作品紹介・あらすじ

近未来英国、フリーカメラマンのティボー・タラントは、トルコで反政府ゲリラの襲撃に遭い、最愛の妻を失ってしまう。本国に送還されるタラントだが、それから彼の世界は次第に歪み始めていく……。現実と虚構のあわいを巧みに描きとる、著者の集大成的物語。

感想・レビュー・書評

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  • 今までSFから感じたものとは全く違う、新境地を見せてくれる物語だった。

  •  カメラマンのティボー・タラントはトルコで野戦病院で業務に従事する看護師の妻を反政府ゲリラの攻撃で失い、海外救援局によって英国に連れもどされる。しかもその英国はわれわれの知る英国ではない、グレート・ブリテン・イスラム共和国なのだ。ロンドンを通るが、救援局は何かを隠している。それは正三角形にすべてが消失している敵の攻撃のあとであり、彼の妻もその兵器にやられたのだ。そしてその兵器は隣接にかかわっているらしい。タラントは現実なのか何なのかわからないカフカ的世界に引き込まれていく。
     そしてそのタラントの物語に別の物語が挿入される。第一次大戦中、敵を欺いて飛行機を見えなくする作戦に駆り出された手品師は道中の列車の中でH・G・ウェルズと知り合う。隣接を発見した晩年のリートフェルト博士に取材に行く記者、同道するカメラマンは若き日のタラントだ。第二次大戦中、いわくありげなポーランド出身の女性パイロットに恋した整備兵の話。いやそれはその女性パイロットの来歴の物語でもある。そして夢幻諸島のブラチュウスで一旗揚げようとする奇術師の巻き込まれる事故、それにかかわる女性の視点からの別の現実。プリーストの多くのモティーフが放り込まれているのだが、こうした物語が隣接なのだ。
     全体を覆う戦争の影、そして航空機への愛。いや、「限りなき夏」のプリーストが帰ってくるのだ。

  • この先どうなるの?というハラハラと、モヤッとした”歪み、ズレ、不整合”へのドキドキ、イライラ。終わりよければ全てよし、かーい!と突っ込んでしまった「夢幻諸島から」しか読んだことないクリストファー・プリーストの「隣接界」。不思議な読書体験でした。

  • 何とか読み終えました。それぞれのエピソードは興味深く読めましたが前作「夢幻諸島から」は途中で挫折したのでこれも大丈夫かと思いながら読みました。過去作品の集大成とのことですがそれについてはよくわかりませんでした。ページ数の割には、というのが正直なところ。

  • 隣接界 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 戦闘機乗り、大規模テロ、人捜し、それぞれの臨場感が真に迫ってきて、章単位ではかなり引き込まれて読んだ。でも最終的に隣接性の効果がかっちりとわからなかったので、なんだったの…と取り残された気持ち。結末の再会で明るさを見るにはあまりにも人が死んでいるし…。

    書かれていないことをいろいろ考えて楽しむタイプの小説だったんだと思うんだけど、自分はそういう読み方をしないので。SF読みの人の解説が欲しい感じ。

  • プリーストならではの夢幻のたゆたい感。どこに運ばれるかわからないけど、ずーっと浮かんでいたかった。ネタバレしてはいけないやつなので、何も書かないけど、今のところ今年1番じゃなかろうか。早川書房さんは立派だなあ、こんな本を次々と!
    特定できない誰かが恋しく、その不在を痛く感じるのは、隣接界の私の記憶なのかも。

  • 最初はとっつきにくいのだけれど、途中から読みやすくなったのは、理解するのを諦めたためかもしれない。軸になるのはトルコで妻を亡くしたカメラマンが英国に帰ってくる話なのだが、似たような名前の奇術師や飛行士が出てきて、時代も第一次と第二次の世界大戦、近未来とバラバラで、パラレルワールドを見ているようで、全体を把握することは諦めて、目の前の物語を楽しむことにした。プリーストの作品を読むのは初めてだったのだが、過去の作品を読んだことのある人には、別の楽しみもあるらしい。

  • 起承転結がわからないまま、伏線は回収されないまま終わったという感じ。
    各短編は、相互に関係あるようなないような・・・・
    一応 主軸はタラントみたいだが、プラチョウスの話も読みごたえあり。
    パラレルワールドが どのように出入りしているのか全体像がつかめぬまま読了。

  • 出だしは妻をテロによって亡くした男の話。舞台は近未来のイギリスのようで、異常気象の影響が世界中に出ていて、厳戒体制が敷かれているようだ。だが第二部では第二次大戦時に軍に徴集される手品師が出てきて、その後は飛行機整備士の話。名前の似た人物が出てきたり、どこか似たようなエピソードが語られたり、とにかく読み手を不安定にさせるのはいつもの作者らしい。その中でも出だしの妻を亡くした男タラントのさ迷う世界がとても恐ろしい。周りで起きていることが意味不明だし、彼の深い喪失感のせいか周囲の人間ときちんとコミットできず常に孤絶感が漂う。大切な誰かを失うこと、失っても永遠に求め続ける痛みが全編を貫いているように思えた。

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