折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)

制作 : ケン リュウ 
  • 早川書房
4.07
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本棚登録 : 538
レビュー : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153350366

作品紹介・あらすじ

三層に分かれた折りたたみ式の北京を描いた■景芳による表題作、中国に史上初のヒューゴー賞をもたらした劉慈欣『三体』の抜粋「円」など7作家の13作品を、『紙の動物園』著者のケン・リュウが選び収録。いま一番SFが熱い国・中国の粋を集めたアンソロジー。(■は赤へんにおおざと)

感想・レビュー・書評

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  • 「紙の動物園」を読んで中国SFに関心が高まっていたこと、以前知人にオススメされていたこともあって手に取った(三体もそのうち読もうと思いつつなかなか手が出ないのが恥ずかしい)。

    アンソロジーのいいところは何かしら自分の好みにあった作品がひとつは見つかるということと、表題作目当てで読んだら思わぬ出会いがあるということが挙げられると思うが、これもまさにそのようなアンソロジーだった。

    そのような観点からでは、「円」と「童童の夏」が良かった。前者は何といっても人間コンピュータを使って円周率を求めようとするというSF要素に古代中国の歴史ネタを混ぜるという壮大な設定に面食らったが、ハッタリもここまでくれば大いに楽しめるというものだ。後者は頑固な祖父を苦手に感じていた孫娘が、家にやってきた介護用ロボットを通じて祖父と距離を縮めていく様子が短いページながら情緒豊かに描かれていていた。家族という主題は「紙の動物園」に共通する所があり、そちらが好きな方に是非おすすめしたい。

    もちろん主題作である「折りたたみ北京」以外にも、「1984年」への意識が随所に感じられる「沈黙都市」や、工場から脱走した遺伝子改変ネズミの駆除隊に所属する青年の直面する日々が淡々と進む「鼠年」など、読みごたえがある作品が多く収録されている。硬質で安易なハッピーエンドにならない話が多い印象を受けたが、このあたりは中国だからというよりも、現代社会の矛盾に直面し科学技術の好ましくない側面を目の当たりにした時代性が反映されているのではないかと思った。

  • 現代中国SFのよりぬきアンソロジー。本全体から受けた印象は、とにかく人が多く、資源の配分が偏っていて、もらえない人が辛く、将来が見えないということ。急速に発展中の国の人たちが書いたのに、重苦しい読み心地の作品が多かったは意外だった。でも、ここで自分の受けた印象を眺めると、現代中国の問題意識が強く反映されているということになるようだ。前書きで編者が「中国特有のテーマの作品群と思ってほしくない」というようなことを書いていたと思うが、やはり、国の個性は出ているのではないかな。

    ということでSFに浮遊感と驚きを求めたい者としては「ぜんぶおもしろかった!」とは言い難いが、テクノロジーが難題を解決するさまが爽快な夏笳の「童童の夏」と、中国の物量作戦ここに極まれりという感のある劉慈欣の「円」がよかった。「円」は『三体』の一章を抜き出して改変したものだそうなので、『三体』もぜひ読んでみたい。

  • 貴志祐介の「新世界より」アニメ版の絵が頭に浮かんでくる『沈黙都市』。もう少しスラップスティック色を強めれば筒井康隆の初期作品に比肩するような『折りたたみ北京』。中国古典文学の大仰さを現代に持ち込んだような『円』。そして小粒だけれど強い印象を残す『コールガール』など、宇宙ものは無いけれどバラエティに富んだSF作品を集めた一冊。これは面白い!

  • 既視感なのか。
    設定、小道具、テーマに手垢がついた、とまでは言わなくとも、あったような、ありそうなものが多かった。

    SF小説のアンソロジーとなると、1つの世界観や設定を理解して、さあ用意ができたぞ!って頃に次の作品。
    そうするとなんだか、個別の作品の理解というより雰囲気が全てになってしまうのは僕だけなのだろうか?
    もしかするとSF初心者なので、楽しみ方が分かっていないのかもしれない......

    そんな中でゾワゾワ!っとしたのが、
    劉慈欣の「神様の介護係」
    神様の目的と最後の会話が作品の中にとどまらず、読後の空想妄想を引き立てた。
    「円」は、三体の一部に同じ設定が使われている。
    しかし、「神様の介護係」も「三体」の設定の土台に生きている。
    三体の第二部が発売された2020.6.18に読了。
    三体第二部への期待がとても高まってしまった!

  • 現代中国の様々なSF作家の作品を集めたアンソロジー。傑作揃いで非常に読み応えがあった。
    全体的にディスピアものが多く、激しく変動する中国社会に苦悩する作家達が、世界に示したある種のアレゴリーとしても受け取れる。
    一方で、美しい詩的表現が目を引く作品もいつくかあり、詩歌(漢詩)の国 中国 の豊穣な蓄積が感じられた。

    以下、気に入った作品を軽く紹介。

    ・龍馬夜行/夏笳
    長い眠りから目を覚ましたロボット“龍馬”。長い年月の間に、地球から人類の姿は消えていた。“龍馬”はひとり、夜の旅をはじめる…
    幻想的な情景と、海子(中国の詩人)の詩の引用が、寂しい夜の旅を美しく描き出す。

    ・折りたたみ北京/郝景芳
    表題作にもなっている作品で、中国社会の貧富の差がSFに織り込まれている。
    来る日も来る日も厳しい労働に明け暮れる主人公の現実にやるせなくなる。
    胸を締つけるラストに、読んだ後もずっと切ない気持ちが続いた。

    ・蛍火の墓/程婧波
    SFとファンタジーを織り交ぜたような幻想的な世界観が、夢のように美しい。
    そのあまりに緻密な文章表現にひたすら魅了された。

    ・神様の介護係/劉慈欣
    壮大な宇宙スケールと中国古来のヒューマニズムが合わさった傑作。
    作者の想像力にただ圧倒される。

  • 百鬼夜行街、円、神様の介護係が面白い。特に人間3人を使って基本的な演算回路を作り、300万人集めて人力コンピュータを作るという「円」が素晴らしい。昔の日本のsfって、こういうセンスオブワンダーがあったんだよなー、と思いました。

  • 郝景芳「見えない惑星」
    「あなたが見てきて魅力的だった惑星の話を聞かせて」という会話ではじまる、この短編がよかった。

    南半球と北半球とで大きく標高が違い、惑星一周を赤道にそって急傾斜の崖が走りそこに市街地が形成された惑星ピマチェー。
    時間系が異なりお互いを知らないのけれど影響しあっている、二つの種族が住む惑星アミヤチ。
    惑星のどの形態にも知的で風変わりなエピソードが込められていて、そこに住む生き物たちの関係性は幻想的。
    幾つもの惑星間放浪をしたものには行き着いてみえてしまう、惑星の孤独なすがたがあり、2人の会話が効果的に挟まれてた。
    次の表現が好きだった。
    「建物のあいだの空間を埋める隠喩のように、解読不能の言語が断片的に残されていた。..
    「僕が話した惑星は宇宙のあちこちに散らばっているけど、ときどき一ヶ所に集まる。..
    いまは君も僕も語り手であり、また聞き手なんだ。」

    ほかの短編も読んでみたい。

  • これはみんな読むといい。SFにも中国にも興味ない人でもめっちゃ面白いはず!

  • 中国というバイアスをとっぱらって、素直にSFを楽しもうと思ったのだけれど、やはりなかなかそうもいかない。どうしたって人間が書いているのだから、現実の社会や環境、価値観が影響しないわけはないのだし、それでいいのだと思う。日本のSFもこのくらい盛り上がって欲しいものだが、それには日本の「三体」が必要だ。個人的には技術の進歩が人間の要請にそって希望がきらめいている「童童の夏」が可愛くて好きだった。

  • 知らなかった、赤い国じゃなく、熱い国だったんだ!

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    『紙の動物園』のケン・リュウが集めた中国SFの粋
    三層に分かれた折りたたみ式の北京を描いた■景芳による表題作、中国に史上初のヒューゴー賞をもたらした劉慈欣『三体』の抜粋「円」など7作家の13作品を、『紙の動物園』著者のケン・リュウが選び収録。いま一番SFが熱い国・中国の粋を集めたアンソロジー。(■は赤へんにおおざと)
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著者プロフィール

1984年、中国・天津生まれ。2006年に清華大学物理学科を卒業後、同大天体物理センターを経て同大経営学部で経済学の博士号を取得。高校在学中の2002年に30歳以下を対象とした「新概念作文大賽」で一等賞を受賞し頭角を現す。2006年からSF作品の執筆を始める。2007年、「祖母家的夏天(おばあちゃんの家の夏)」が銀河賞の読者ノミネート賞を受賞。社会科学に関心を抱きはじめ、博士課程は清華大学経済管理学院に学び、2013年に国際貿易研究で博士号を取得した。長篇小説『流浪蒼穹(蒼穹の流浪)』(2016年)、短篇集『去遠方(遠くへ行くんだ)』、本書『孤獨深處(孤独の底で)』(2016年)のほか、紀行エッセイ『時光裡的欧洲(時間の中のヨーロッパ)』(2012年)が単行本として刊行されている。
2014年に発表した本書収録作「北京 折りたたみの都市」は中国系アメリカ人作家のケン・リュウによって2015年に英訳され、2016年、ヒューゴー賞(中篇小説部門)を受賞した。

「2019年 『郝景芳短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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