生まれ変わり (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

制作 : 牧野 千穂  古沢 嘉通  幹 遙子  大谷 真弓 
  • 早川書房
3.52
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本棚登録 : 140
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (558ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153350434

作品紹介・あらすじ

悪しき記憶を切除する技術をもつ異星の訪問者により、人類は生まれ変わった。表題作ほか、アジアの工場で過酷な労働に従事する少女の不思議な体験を描いた「ランニング・シューズ」など20篇を収録、現代SFのトップランナーによる日本オリジナル短篇集第3弾

感想・レビュー・書評

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  • 宇宙人との共生、電脳世界など人間のあり方とはなんなのか考えさせられた短編集。ケン・リュウ氏のあたたかな描き方がほっとさせられる。他に2冊短編集を出版しているがやはり面白かった。長編の「蒲公英王朝記」を読んでないので読んでみたい。

  • SFだけでなく伝奇的な隠娘もよかった。

  • 「生まれ変わり」★★★
    異星人に侵略された人類の未来を描く。制圧がほぼ完了すると、殺戮を繰り返していた異星人(トウニン人)は慈愛の心を持ち、冷酷な性質を封印する。生き残った人類は物理的にも精神的にもコントロールされ、心に秘密を持つこともできない。わずかに残るレジスタンスのリーダーであったらしい主人公(ジョシュ)はその記憶を封印して異星人の部下となるが、すべてを見透かされて最期は自爆し、自らを断つ。少なくともその瞬間だけは「自らが自らに下した」意志であると受け止めつつ…。
    「介護士」★
    絶対評価(すべての作家に共通の評価)という意味で★1つというわけじゃない。ただ、ロボットのなかに人が入っていた(正確には遠隔操作されていた)という、あまりフェアではない仕掛けを使うなら、それが必然となるように、操作をしていた低所得労働者であるメキシコ娘を、もっと象徴的かつ深くなぞるべきだろう。どこにも救いのない、ただ暗いだけの展開で終わったことにもやりきれなさが残る。
    「ランニング・シューズ」★★
    わずか8ページの超短編だが、それなりにストーリー感はある。一家全員(兄は違うらしいが、惨めさは似たようなものだろう)がブラック企業に搾取され、いつ一家心中してもおかしくない状況のなか、工場での事故によって死ぬベトナム出身の女の子の物語。いつか工場で作る靴を履いて歩いてみたい。鳥のように軽やかに爽やかに大空を舞ってみたいと思った彼女に待ち受けていたのは、靴に縫い込められた自分だった…というのはひとつの哲学なのかもしれない。
    「化学調味料ゴーレム」★★
    少女と神さまのかけ合い漫才。それなりに評価したいが、これはむしろリアル世界で、たとえば演劇かお笑いで行う方がよい。なぜかと言えば、神に絶対的な権威を持たせないがゆえに、あるいはその一部を垣間見せないがゆえに、神が神であることのレゾンデートルを表現できていないことによる。アイデア倒れと言われても仕方がないだろう。
    「ホモ・フローレシエンシス」★
    きわめて稀少なホモ・サピエンスの近縁種を発見したという前提で、その生態を観察発表することの先にあるだろう栄光の人生と、引き換えに失うだろう彼らの人生の間で生じる葛藤を描いた短編。申し訳ないが、これは小説ではなく、エッセイに過ぎない。ストーリー仕立てになっているが、メッセージのみで終わるようではフィクションとは言えないのではないだろうか。
    「訪問者」★★
    宇宙から飛翔体が到来し、地球上の膨大な地点で空中停止した。世界は緊張したが、彼らはなんら次の行動を起こさなかった。会話も成立しなかったため、各国は次第にその存在に注意を払わないようになっていった。主人公は恋人が若いアジア女性の性奴隷という人身売買を知ってひどく落ちこんでいた。これを解決する秘策として飛翔体の力を借りるという粗筋なのだが、彼らが反応するのかさえ分からない状態で、彼らがいつ反応するのか? それはどの程度のものなのか? 何の前提条件もないなかで、それらがうまく機能するだろうという作戦は白々しい。偶然に期待するのなら偶然という言葉を使うべきだろう。世界的な弱者の問題に光を当てるという発想は良いが、SFとしてはいただけない。
    「悪疫」★★
    地球環境が破壊され、わずかな数の特権階級はドームを建造して生き延び、それ以外の多数はほぼ絶滅した。しかしわずかな数が進化を続けながら生き残る。ドームで暮らした若き青年を正義心からドーム外の人たちの「人間性」を取り戻し、融和的に生きる道を模索して交渉する。しかし自分たちの価値観の一方的押しつけが反発を食らい、青年はコロされる。わずか5ページの短編としてはダレることなくうまく構成されている。ただ、この作家の個性ではあるのだが、全面にメッセージを出しすぎで、物語というよりエッセイに近い場合がある。ここでは物語に終始しているせいで、辛うじて説教臭さを隠している。
    「生きている本の起源に関する、短くて不確かだが本当の話」★
    本の持つ意義とその歴史を綴る話。ほとんど説明だけの短編。これは明らかに小説ではない。エッセイを書きたいのなら、事前にそれを伝えるべきだ。
    「ペレの住民」★★☆
    比較的オーソドックスな展開の物語。人類が地球に存続するのが困難になりつつある近未来、すべてを託されたアメリカ主体のロケットが居住可能な惑星へと旅立つ。目標に到達した後、地球からのメッセージには国家のさまざまな思惑が込められた指令があった。しかし、数十光年の彼方から届いたメッセージの送信者はすでに存命かどうかさえ定かではなく、指令に意味があるかを疑うようになる。一方、国家のしがらみで仕方なく加えられた中国の乗員はお荷物と思われていたが、彼女の発見が新しい惑星での根本的な視点を教えてくれる。感覚や時間の流れが根本的に異なる結晶体に近い物質もまた生物であり、彼らなりの価値観で生きているということを…。
    「揺り籠からの特報:隠遁者──マサチューセッツ海での四十八時間」★★
    地球の温暖化が究極まで進み、人類のほとんどは母星を離れてしまった。しかし一部はそこに残り、頻繁に起こる嵐を避けるために海上と海底とを移動しながら新しい価値観とも言える海底の都市残骸の美しさを楽しみながら生きていた。価値とは何かを問う小品。
    「七度の誕生日」★★
    地球の環境を特異な視点から振り返る物語だ。申し訳ないが、この作家になぜ深い興味を持てないか分かってきた。書かれている事柄はフィクションだ。だからある点で荒唐無稽で良い。むしろその要素がどこにもない作品は面白くないだろう。ケン・リュウは頭脳明晰だし、出自に対しても敬意を払っている。環境問題にも科学にも思想と宗教にも同じアプローチを見ることができる。しかし彼は出だしでゴールを見せてしまっている。「おれはこれを、この流れで書くよ。それを確認するための覚え書きだよ」と言っているように見える。その最たるものがこの短編だろう。グレッグ・イーガンに似て非なるアプローチがここにある。
    主人公は世界を股にかけて飛び回る母に会えぬことが寂しい。父もまた同じだっただろう。母の考えに同調できず、自然のなかに生き、自然のなかに朽ちていく人生を好んだ。母は老いて認知症となり、自分が成したことさえ忘れ、若き頃の使命をうわごとのように繰り返すだけだった。娘である私はそのことに苦渋しつつも、自分にもそのDNAが流れていることに気づく。その後、彼女の時代になって意識をデータ化し、永遠に生きることができるようになった。新しい世代は地球を緑の惑星にするだけでなく、地球と似たような環境の惑星を見つけては、それぞれの歴史で滅ぼされた人類史や動物の歴史を際限していく。一度設定されると、それが望む時間を歩まなくても干渉することは控えた。明示的に書かれてはいないが、神の創造が行われていることと変わりない。そしてそれが人間の自己満足以外の何ものでもないことを知るのか知らないのかについては言及がない。著者の言葉を借りるなら「並行世界」を出現させているということなのかもしれない。しかしこの物語は冒頭からここに収束されるだろうことを見透かされている。「ああ、このように展開して、このように帰結させたいのだろうな」と思わせるのだ。それが「紙の動物園」でのあざとさに繋がる。この本は読了するつもりだが、この後によほど魂を震わせる作品に出逢わぬ限り、今後彼の新刊を読むことはないだろう。
    「数えられるもの」★☆
    この作品もまた最後まで透けて見えるような物語だ。数式や数字を象徴とする純粋世界と汚泥に満ちた現実世界を対比させようとしたいのだろうが、最初から結論が見えているという点で「紙の動物園」に良く似る。
    「カルタゴの薔薇」★★★
    奔放な妹と奥手の姉。すべてに自由な妹に憧れつつ、実は妹が消し去ることのできないレイプの過去から抜け出す唯一の手段として生きた脳をスライスしてコンピュータの世界に移し替えるという手段を選んだということを後で知る姉。身体を失うことは心をも失うことだということに気づき、デジタル世界でさすらっているだろう妹のために終生を共にすると決めた姉。この作品についてはそれなりに感じるものがあった。
    「神々は鎖に繋がれてはいない」★★
    天才的なアナリストのうち、事故死直後や病死の直前の当人の脳をスライスし、企業が当人たちの思考パターンのデータを取り出してビジネスに流用するという設定の物語。不完全な状態でコンピュータに閉じ込められた主人公マディーの父親は娘とのコミュニケーション手段として、テキストではなくアイコンを駆使してコンタクトを取ろうとする。続く2つの小品との3連作なので、それらをまとめて講評したい。
    「神々は殺されはしない」★★☆
    父は電脳のなかで2派に分かれた戦いの最中にあった。人類に苦虫を潰しつつもその未来を肯定する一派と、電脳として強制的に蘇生させられた人類に恨みを抱き、自分たちもろとも人類を壊滅させようとするグループだった。マディーは父が戦いに負けつつも、最後に奇策が効を成し見事な逆転劇を目にする。「~繋がれていない」から引き続く物語は、結末を想起するのが難しいという点で展開を期待できる良さはある。3作目の結末次第だろうが、それなりには読ませた。
    「神々は犬死にはしない」★★
    マディーに妹がいた。それは決して現実世界に戻ることができない仮想世界の父が創り上げたマディーの分身とも言えた。ミストと名づけられた妹が最後にマディーに見せたのはアダムと呼ばれる意識体(電脳世界の神のひとり)だった。これまでの神々が本人の意志とは無関係に取りこまれたのに対し、アダムは自らが欲して仮想世界の住人となったことだ。…ということで全3話は終わるが、3作目はほぼ解説に終始している。物語が自らを説明するのは、映画の登場人物が「自分の役割は…」と説くのに等しく、はっきりと言って興醒めだ。意識とはなんであるのかを説明するのではなく、なぜ肉体を捨て意識体となるのかを説明するのでもなく、物語の結末として読者が考えるべきことを先取りするから、結局は詰まらない結論を受け取る羽目になる。
    「闇に響くこだま」★
    冒頭こそそれなりの進捗があったが、あとは単なる解説に過ぎない。しかも敵との対話があまりにおざなりで何ら緊迫性も叙情性もない。これを小説と呼ぶには無理があるだろう。
    「ゴースト・デイズ」★★
    ひとつの鋤をモチーフにした飾りを巡る、遠く離れた3世代の物語。物語にはなっているので辛口評価はしないが、それぞれの占めるテーマが異なる点に違和感がある。時代を見据えた課題がそれぞれの登場人物にとってどのような価値を持ち、それがどのように変質して未来に繋がるかを明示的に表現すべきだろう。それと、これは難癖になるのかもしれないが、すべてが中国の文化と関わることにも違和感がある。中国のエンタテイメントを読むのであればそれはそれで良いが、20編ものショートストーリーのほとんどすべてが中国絡みであるというのは、アメリカSF作品としていかがなものだろう? であるなら、そのような表題なり副題にしてほしい。
    「隠娘(いんじょう)」★★☆
    物語としてはまとまっている。ただよくあるパターンであって、新規さを感じない。とくに「殺すのは2日待ってくれ」と暗殺ターゲットに言われて引き下がる理由が子供の存在と、ターゲット本人のプロパガンダにあるというのでは、語るに落ちるというものだろう。本編には元ネタがあり、それをリメイクしたものだと思われるが、であれば、著者にしかできない何かがあるべきだろう。本短編集ではすべてにおいてプロパガンダが強すぎ、作品の物語性が引っ込んでいる。ここを乗り越える必要があると強く感じる。
    「ビザンチン・エンパシー」★★★
    決して解き得ないパズル、というのは厭世的かもしれないが、この短編で対峙する2人の女性の立ち位置は決して面では触れ合えない。ピンポイントの集積はどこまで進めてもピンポイントなのだと知らされるだけだ。
    ジェンウェンは体感と感覚から、難民の置かれたシジュフォスの状況を打開しようとする。一方、友人のソフィアは理性と力学を駆使して難民問題を打開しようとする。決して交わらない存在証明を、世界の混沌が存在する究極の理由であると、著者は伝えたいのかもしれない。

  • ちょいキモな異星物との交流?、永遠に通じる電脳生活、中華ファンタジーetc.ずっしりと読み応えのある短編集だわ。
    ケン・リュウが色々と描ける作家なんだなぁと感心させられたけど、気に入る一編に到達する前にギブアップしそうにもなった

  • AI的な話が多くて少し難解なところもあるけれど、それは今の時代を反映しているからがゆえかと。久しぶりのSF、楽しめました。

  • いろんなテイストを楽しめる短編集。面白かった!!

  • ケン・リュウの短編集、第3弾。
    前の2冊は割と叙情性が強かったのだが、本書はテクノロジーを前面に押し出した短編が多かった、という印象。意外な……というか、これまでと違ったイメージのものが多かったのは嬉しいポイントだった。あと、ボリュームがあるので、読み応えがあるのもw
    どれか1編を選ぶとしたら、表題作にもなっている『生まれ変わり』かな〜。

    そういえば、読んでいて、何となくパオロ・バチガルピを連想させるモチーフが多かった。ケン・リュウ関係はコンスタントにハヤカワが版権を取っているが、パオロ・バチガルピの新刊は出るのだろうか……?

  • 「母の記憶に」早く文庫にならないかなぁ、、、

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    『紙の動物園』『母の記憶に』に続く珠玉の物語群 待望の日本オリジナル短篇集第3弾

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  • 著者:ケン・リュウ[劉宇昆]
    訳者:古沢 嘉通
    訳者:幹 遙子
    訳者:大谷 真弓

    【版元】
    価格:2,484 円(税込)
    ISBN :9784153350434
    刊行日:2019/02/20

    『紙の動物園』『母の記憶に』に続く珠玉の物語群 待望の日本オリジナル短篇集第3弾

    悪しき記憶を切除する技術をもつ異星の訪問者により、人類は生まれ変わった。表題作ほか、アジアの工場で過酷な労働に従事する少女の不思議な体験を描いた「ランニング・シューズ」など20篇を収録、現代SFのトップランナーによる日本オリジナル短篇集第3弾
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