宇宙の春 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 早川書房 (2021年3月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784153350526

作品紹介・あらすじ

いま宇宙は真冬であり、わたしは宇宙最後かもしれない星に向かっている――宇宙を漂う放浪者がその滅びゆく美しさを想う表題作など10篇を収録。『三体』などの中国SF翻訳者・紹介者としても活躍する短篇の名手ケン・リュウが贈る日本オリジナル短篇集第4弾

みんなの感想まとめ

宇宙を舞台にした短編集は、独特な視点と叙事詩的な雰囲気が魅力です。特に、中国系米国人の著者による作品群は、東洋文化とSFが融合し、読者に新鮮な体験を提供します。中でも「ブックセイヴァ」や「歴史を終わら...

感想・レビュー・書評

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  • 日本オリジナル刊行のケン・リュウ作品集
    ◎◯□△☓の順で


    1「宇宙の春」□
    中国での企画「春節SF祭り」にて発表されたとのことだけれど、そうと知らないで読むと2002年の科学論文から着想された膨大な時間経過を宇宙の四季に見立てたのが美しい。本文最後の言葉は短い作品なのにも関わらず旅をし終えたような気持ちになる。相変わらずこの人、言葉選びセンスが抜けてる。ただ「春節SF祭り」という企画で書かれたと知ってしまうと…まあ、こういう風になるよねっていう


    2「マクスウェルの悪魔」◎
    な、なんだこれ。凄すぎる。よく見るタイトルでつまらなさそうなのに笑
    沖縄から米国に来た日系移民2世で第二次世界大戦中に日系米国人強制収容所に収容されている女性科学者が主人公。ちょっと、ヨダレ出てきませんか?
    というか訳者あとがきにもありますけど、どう考えても日本人の為に書いたような内容を中国系米国人の作家が書いているということ、こりゃ凄いぞ
    頭からおしりまで読む価値あり。


    3「ブックセイヴァ」□
    導入が面白い。【千夜一夜】という1001語毎に超低額の決済をするブックサイトがあった。そこにはユーザーが自分で設定出来るプラグインがあり、例えば【画面読み上げ】【速読者用にテキストを再フォーマット】【イラスト表示にウィキペディアから合う画像を引っ張ってくる(ラノベのように読める)】【見たくない表現を自動で削除、書き直ししてくれる(ジェンダーや人種、性的指向など)】
    つまるところ作家の著作(権)vs読者のより良い読者ライフ の問答が読める
    AI技術の行く末と読書という行為。書かれている文字以上に考えたことはたくさんあった
    何より本文の最後、どう思ったかで読書観が出る。クリエイト側の答えは多分、これだろう。でも怖い未来像だ


    4「思いと祈り」△
    自由銃社会、AR,VR,MR技術が日常に溢れているアメリカ、ある家族の姉妹の姉が音楽フェスティバル会場で銃乱射に巻き込まれ死亡する
    これだけの要素で心情をベースにこの文量書かれていることがすごいと思うけれど、はて。なんでこんな暴力的な民衆しか出て来ないのだろう
    もし、デジタル技術が今以上に日常化したらこうなると思うんです という発想が出発点なのなら僕はまったくそうは思わない。多分違うとは思うけど…よくわからなかった。設定と話が噛み合ってないような。何か、読み間違いしたと思う


    5「切り取り」□
    ミステリ作家がアンソロジーで書いた筒井康隆
    という印象。こういうノリは好き


    6「充実した時間」□
    ドラミちゃんが主役の映画【アララ♡少年山賊団】という映画でセワシ君が壁に向かって「イス、テーブル」と言うとウィンウィン!と出て来てそこに座りSWのライトセーバーのように持ち手しかないナイフをシュッと出しホットケーキを食べるシーンがある
    滅茶苦茶幕間のどうでもいいシーンなのだが、未来はこんな風になるのかと幼少時震えるほど興奮した。そしてこの話、そういうシーンが出て来る
    そして滅茶苦茶どうでもいいシーンである。ちなみに僕はトマトが大嫌いだったがそのドラミちゃん映画のおかげで食べられるようになった。傑作だ(映画が)



    7「灰色の兎、深紅の牝馬、漆黒の豹」◯
    このタイトルを見て、はっはーん三国志ね
    とわかる人なんているのか。少なくとも日本人は難しい。しかし本国の作家による三国志オマージュ、何気に読んだことが恐らく今までないので大変興味深かった。やはりかっこよくなっちゃうのな


    8「メッセージ」△
    あれっ??これ、訳しきれてない何かない??気のせい??欠陥過ぎない?そんなミスする著者じゃないと思うからやはり翻訳?でも中国語読めないし確認出来ない 無念


    9「古生代で老後を過ごしましょう」◯
    実に、実に星新一の世界観。
    老後どこで過ごしたいか。月?火星?低重力で関節にも優しいですね、でも再利用された空気吸いながらガラスのドームの中で生活送りたいですか?
    この冒頭の台詞がたまらん。そしてオチもキュート。愛おしい。とても美味な小品


    10「歴史を終わらせた男−ドキュメンタリー」◯
    どっかで読んだことのある読み心地だな、と思ったらあとがきで判明、テッド・チャンだ
    この手法、というか書き方まだまだ面白いパターンありそうだなあ。特にSFとは相性よさそう


    ほぼ全て平均以上。良い読書でした

  • ケン・リュウのハヤカワの新書は全部買っているけれど、これは私の中で「紙の動物園」に迫るかも。ただ、第二次大戦でアジアを支配していた日本の話が2篇あるので、とても重い。初期の短編集に「歴史を終わらせた男」を入れなかったという判断もわかる。


    「マクスウェルの悪魔」
    戦時下の沖縄ユタの血筋の日系アメリカ人、かつ女性で科学者の主人公。
    どこの土地でも余所者・敵地人として不当な扱いをされ、戦争も地獄の様相を見せる中、それでも人が拠り所とする故郷について描かれる。
    重ねて出てくる「それが戦争ってものじゃないか」が重くのしかかる。


    「歴史を終わらせた男」
    ここで731部隊の話を突きつけられるとは。
    タイムマシンによって直接歴史を見聞きできるようになったとき、「歴史」が過去の死んだものではなく今扱える生きたものとなったとき、当時の出来事をどう見るのか、責任の所在はどうなるのか。
    そういうSFを土台にしているけれども、話中で人体実験の現場を訪れた観察者同様、731部隊の話が終わった過去でなく、実際にそこに在った事実として辛い。

    もちろん日本が行った反省すべき戦争犯罪だという認識はあったけれど、たかだか100年前に、医療の発展のためにという名実で「必要なこと」として行われ、それが実際に医療データとして利用されていたというのは、こう読むと相当なショックだった。

    乗り越えて終わった過去でなく、今もその出来事と連続して今いるのが自分なのだと。
    100光年離れた星の、100年前の光が今届くように、過去発せられた光は今の光景であり、時間による差はあまりないのかもしれない。

    ロシア・ウクライナ戦が始まり、戦争とはすでに乗り越えた過去のものと漠然と考えていた自分の能天気さを恥じたけれど、発売当時に買ったままだったこの本を今読んだというのも、本に呼ばれたのかもしれないなあ。


    「切り取り」
    こういう技巧が凝らされた上に、儚さの感じられる物語は大好き。

  • 縦長のペーパーバックは軽いし気軽に読めていい、という形の感想は置いといて、中国系米国人の作者によるSFが10編入った短編集で、特に期待せず読み始めたが、まぁこれがなんとも目新しいというか独特で、「三体」といい中華四千年の歴史の半端なさを感じさせられる。個人的には「ブックセイヴァ」がベスト。

  • 読書備忘録620号。
    ★★★。
    う~ん。私の感性が衰えたのか・・・。
    叙事詩的な雰囲気をもったケン・リュウのSF短編集にあまり感じるものが無かった・・・。
    何篇かに触れる。
    「宇宙の春」宇宙には春夏秋冬があるというお話。
    「ブックセイヴァ」作者が必ず入れてくる図書もの。
    「灰色の兎、深紅の牝馬、漆黒の豹」なんか知らんけど文明が滅んだ後のファンタジー戦争モノ。女性3人が人間と動物の形態をとって戦う?
    「歴史を終わらせた男-ドキュメンタリー」過去を覗き見ることが出来る技術開発。大日本帝国陸軍731部隊の真実を暴く。中国人らしい作品。
    紙の動物園が素晴らしかっただけに、ちょっと期待してしまった。
    自分には合わなかった。
    さて次を読みまっせ!

  • ケン・リュウを読むのはこれで3冊目で、贅沢な言い方をするならば、その読み口に慣れてきてしまったなという気持ちはあった。特に、SFに東洋文化を絡めながらウェットな読み口に仕上げるような作品群において。

    その中でも光るものはやはりあって、今回で言えば『思いと祈り』『歴史を終わらせた男』の2編については、今の現実から地続きの近未来をドキュメンタリー形式で描きつつ、いずれもマクロな社会と個人の物語との対比というものをかなり残酷な形で描いていて痛烈だった。

    前者は銃乱射事件被害者遺族が、銃抗議活動の一端として、被害にあった娘の人生をVRで追体験できるコンテンツに仕立てたところ、つまるところ「炎上」「荒らし」に晒される顛末が描かれる。後者は731部隊の真相を明らかにするべく、「過去を実際に見る」技術を用いた歴史学者が、客観的な歴史研究と、個人の物語という主観との間で揺れ動く世論に飲み込まれていく。いずれも物語の構造としては近しいのかもしれないが、特に後者。731部隊を中国系の作家が描くとなると、日本人としては身構える部分があるし、実際それを危惧して翻訳を遅らせたとも書かれているが、しかし過度に政治的なわけではなく、絶妙なバランス感で仕上げられていて、非常に読み応えがあった。本書ではこれがベストだった。

  • 《目次》
    ・「宇宙の春」
    ・「マクスウェルの悪魔」
    ・「ブックセイヴァ」
    ・「思いと祈り」
    ・「切り取り」
    ・「充実した時間」
    ・「灰色の兎、深紅の牝馬、漆黒の豹」
    ・「メッセージ」
    ・「古生代で老後を過ごしましょう」
    ・「歴史を終わらせた男――ドキュメンタリー」

  • 楽しみにした三国志変の「灰色の兎・・・」はファンタジーが飛び抜けすぎていて、あと数回は読み返さないと理解できないかもしれないが、ケンリュウらしい流れ方が嫌ではない。攻略しておきたい本。挑戦的な試みが多い。

  • 良い。しかし重い。
    中国系アメリカ人が書いたとは思えないほど、抉るような日本の戦争の描写の作品が光る。
    日系米国人強制収容所に収容される女性科学者を通して描かれる沖縄の様子、「マクスウェルの悪魔」。
    過去を覗き見る技術と、人体実験で悪名名高い七三一部隊を中心に据えて、ドキュメンタリーが進む「歴史を終わらせた男 ——ドキュメンタリー」。
    軽い短編も挟まれつつ、なかなか重量級の作品ばかりである。しかし、それでも物語に引き寄せられてゆくのだ。

  • 「ブックセイヴァ」、「灰色の兎、深紅の牝馬、漆黒の豹」、「歴史を終わらせた男」が特に印象に残ってる話でした。
    中でも「歴史を終わらせた男」は、ウクライナ危機が始まった今、読んでとても良かったと思いました。戦争の当事者には様々な立場があり、たとえ同じ事実を目撃したとしても、目撃した人によってその解釈の仕方は全く違ってしまうという可能性があるということを、この話はとても上手く表現しています。ただ、起こった事実そのものは受け止めなければならないですし、特定の個人が感じた深い悲しみもまた事実ですので、それには添わなければいけないなと感じました。
    ただ、そこに永遠の謝罪を要求し争い続けることもまた間違いなのかも。南北戦争はアメリカ建国の歴史であり、ホロコーストはイスラエルの建国の歴史という言葉が良くも悪くも印象に残っています。今から、そこにある結果を、今から覆すことは困難ですが、暴力で問題を解決することは誤りだったと私達は学ぶことはできるはずです。
    同じことを繰り返さないために、過去に学び、最大限の努力をすることが、今最も大切なことかなと思います。今、この本を読んでとても良かったです。

  • 初ケン・リュウ。ブックセイヴァ、メッセージが好きな作品。中華系アメリカ人とは思えないくらい日本向けのお話なんじゃないかと思う。

  • う〜ん!イマイチかな

     父性愛あふれる「メッセージ」がいいかな程度で、戦争関係が多くて少し重苦しい。

  • 中国系アメリカ人作家の日本オリジナル作品集(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)その4。1・2集あたりはとても楽しくてワクワクしながら読み進めたのだが、前作、そして本作もだいぶ手こずった。難解そうな作品を後回しにしたのだろうかと思ったりもするが、この作家の奔放な想像力にこちらの老化した脳がついていけないだけのような気もする。

  • 読むのがつらい作品も。つらいというのは読みにくいとかつまらないとか言うのではなくて、かつて日本がしてきた史実を突きつけられるようで。

    星新一っぽい『古生代で老後を過ごしましょう』○

  • ちょっと難しいのもあったけど、期待通りに面白かった!特に最後の「ドキュメンタリー」は凄い。

  • さすが名手のクオリティ。特に最後の「歴史を終わらせた男」は、その内容からケン・リュウという作家が誤解されることを心配した選者がこれまであえて収録していなかったというだけあるインパクトの強い作品。著者の引き出しの多さが存分に楽しめる好編。

  • 確かに数冊読んでる後だからこその星5つ
    ハヤカワさんグッジョブ

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