闇の精神史 (ハヤカワ新書 014)

  • 早川書房 (2023年10月17日発売)
3.16
  • (4)
  • (11)
  • (13)
  • (5)
  • (4)
本棚登録 : 323
感想 : 22
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

本 ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784153400146

作品紹介・あらすじ

19世紀末ロシア、独立直後のジャマイカ、サイバー空間――様々な時と場所に現れた、「宇宙」をめぐる思想。分子となって銀河に散らばる全祖先の復活を唱える者、自らのルーツを土星に見出し異形の音楽を創り出す者……。果てなき頭上の漆黒に、人は何を見るのか?

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 未来を人質にとる? イーロン・マスクを駆り立てる「長期主義」という特異な倫理観――木澤佐登志『闇の精神史』まえがき全文公開|Hayakawa Books & Magazines(β)
    https://www.hayakawabooks.com/n/nf46ba5df1a2a

    木澤 佐登志 Satoshi Kizawa | 現代新書
    https://gendai.media/list/author/gendai-shinsho/satoshikizawa

    闇の精神史 | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015597/

  • とりあえず、言葉が難しい
    著者の知識量は素晴らしい
    もっと知りたい、とおもえるけど
    もう少しわかりやすい言葉を使って欲しかった
    サルベージ、オルタナティブ、パラフレーズ
    ジャンクヤード、プリシェヴィズムなどなど
    初めから???な単語の連発で
    わからないところをすっ飛ばして読んでも
    興味深い内容だったので、もう少しわかりやすく書いて欲しかったと思います。
    なので、感想としては、難しい、、、
    けどへーなるほどーな感じです。
    ちょっと眉唾的な笑
    笑えるとこもあります。

    すっ飛ばしつつ読んだ、SF初心者の感想として

    多くの今までの文化、社会の中で、哲学者や、歴史に名を残すような人が、
    本気でそう思ってるの?
    本気でそんな世界を信じてるの?
    って思うような主張をし、
    そこに、社会の流れがついてきて、
    思想がうまれてきた、
    本当にどこまでが事実なの?
    SF小説なのー?と思う事実を知り、
    驚きました。
    馬鹿げてるってことは世の中にないんだわー
    そして、
    SFが事実に基づく背景の上に描かれてるからこそ、
    SF小説の中に、現在や、ほんの少し先の未来を想像し、
    それぞれ読む人の価値観で作り上げられる、
    新しい世界、社会を自分で空想し、創っている、
    それがSFの読むのが楽しい理由のひとつなのかなー
    と思います。
    そこから、信念を持って、何かに突き進む
    人たち、イーロンマスクみたいな、、、
    ひともでてくるわけだし。

    また、
    どんな時代や社会、環境に生きた著者がかいた本かって
    いうところも、結構影響してるんだなーと
    つくづく感じました。
    それでも、名作と言われる本が時代、場所をこえて
    名作になるには、人間の共通の何かが
    あるんだと思います。
    いろんな思想や、やり方、あると思いますが
    それが、誰もが幸せになるような何かで
    そこに誰もが憧れ、願い、向かっていると
    信じたいです。

  • 新年初めにCESが行われました。報道を見ると今年はAI、AI、AIで、AIをテーマにした企業同士の連携、提携の話題ばかりが目につきました。そもそもはコンシューマー・エレクトロニクス・ショーとして最先端のテレビがお披露目される見本市だったと思うのですが、インターネット、データ、AI,という流れの果ては、いけてる技術を「見る」イベントから、世界中のテクノロジーに「見られている」ことを見せつけられるイベントになっているような気がします。個人をエンパワーするはずのテックの行く末…本書で「規律権力」から「環境管理型権力」へのシフトに触れられた時、ワクワクしなくなったCESを思い出したりしました。このように本書は今起こっていることとある種のユートピア発想を結ぶ補助線がいっぱい引かれています。冒頭では現在進行形の戦争について「大ユーラシア主義」という補助線が引かれます。マイルスにも、ガチャにも、SNSにも、メタバースにも引かれます。ものすごく頭をシェイクされそしてものすごく整理された気分です。とはいえまだぐるぐる中なので上手く思考の回路が生まれるかどうか、わかりませんが…とにかく近代史と現代史を結ぶ一番太い補助線はサブカルチャーとかユートピアとか中心にないもの、ということだと思っています。今日はここまで!

  • ソビエトが、西洋の近代を、西洋由来のイデオロギーとアメリカの資本を使って乗り越えようとしていた。
    へぇぇぇ。
    VtuberやVRなどサイバー空間に体を移し、肉体を超越する思想を実現するためには、空間に入り込むためのデバイスを装着して認知出来る健常な身体が必要という矛盾。
    所々話が分からないまま読み進めた。また読み返したい。

  • 知らないこと色々知れた。未来とかフロンティアとかそういうものに対する郷愁って不思議だけど納得感もあるな

  • ロシア宇宙主義、アフロフューチャリズム、メタバースと100年前から現在の思想に光をあてて、今の世を再考するきっかけとなればということか。本筋ではないかもだけど、「猫シcorp」を知れたことは大きな収穫、アルバムを何回しもしてしまい、耳に馴染ませた。気になったトピックは◆土星出身と称するサン・ラー。ルーツを奪われたことからの、ルーツの創唱。◆幸福な監禁、幸福な搾取◆なんのために?広告収益のために。すべては莫大な富のために◆人間は身体を捨てた「非肉体的存在」として、言い換えればデジタルな魂として、不死の存在に生まれ変わる◆我々は不可能なことをする必要がある。真実(可能なこと)は死と等しい、しかし神話(不可能なこと)は永遠と等しい◆現実を不変と見なしてはいけない。永遠の真理などというものはどこにもない。あるのは実験(いろいろな試み)のみである◆ここで危機に晒されているのは、近代以来のリベラリズムにおける大原則である、対等な者同士の合意に基づく「契約」の概念◆といったあたり。「デザインされたギャンブル依存症」は読んでみたいと思った。

  • ロシア宇宙主義から始まって、アフロフューチャリズムからサイバースペースまで、人間が夢見てきた「未来」や「ユートピア」はことごとく失われたのか…という話?

  •  手に入れやすい新書で新刊が出たと聞いて読んだ。以前に『闇の自己啓発』は読んだことあるものの単著は初めて。パースペクティブのオリジナリティに驚くしかなく読んでいてずっと楽しかった。点と点を線として捉える基本的な批評がふんだんに詰まっていて内容しかり方法論含めて勉強になった。本著をもっとも端的に示しているのはこのライン。かっこいい。

    *筆者が精神史のジャンクヤードに赴く理由のひとつがこれである。堆積した歴史と記憶と夢の残骸の中から朽ちた〈未来〉の破片をサルベージし、それに一条の光を当てる作業。そうしながら、〈未来〉が何の前触れもなく私たちのもとにもう一度帰ってくることを退屈しながら待ちわびるのである。つまるところ、本書で行われるのはただそれだけである。*

     「闇」という言葉が著者にとってのキーワードになっているからかタイトルに付いているが「闇」のムードは実際あんまりない。「フォーカスされていないこと=闇」というぐらいの意味合いだと思う。冒頭いきなりロシアの宇宙主義の話から始まって面食らうものの、読み進めるうちに自分のまったくあずかり知らない過去、現在、未来あらゆる時制における様々な議論が次々と目の前に広がっていく。そして知的好奇心のドーパミンが出まくるとでもいえばいいか。とにかく著者がリーチしている対象の多さに驚くしかない。点の量が並の読書量では到底なし得ないレベルで、しかもその線の結び方がユニークなので自分の知っている論点でも「そんなところいくの?!」みたいな体験が何度もあった。個人的に一番アガッたのはリー・ペリーの章。単純に一音楽家としてのストーリーとしてめっちゃ興味深かったし、ブラックホールにまで接続してスタジオエンジニアリングの話をしている点が最高だった。
     タイトルにあるとおり精神に対して人間がどのようなアプローチしてきたか、古今東西の議論がたくさん引用されている。精神の話をすれば身体の議論にもなるのは当然であり、その二元論さえも疑いにかかっていく形で複雑な話になっていた。終盤、繰り返し出てきた議論としては身体を捨てて精神のみになることで自由になれるかどうか?という議論。近年だとメタバース、VRといったテクノロジーはその議論の延長戦上にあるし、過去に遡ればLSDによるトリップやゲームへの没頭もその一つと言えると筆者は主張している。一事が万事こういった調子で風呂敷が広がっていきながら、終盤にかけて回収されていくところもあって(特に冒頭のロシアのくだりなど)一体どれだけの本を読んで、どんな発想でこんな文章を書いているのだろうか?著者のインタビューを読んでみたいと思ったし他の著作も読もうと思う。

  • 雑誌SFマガジンに連載したものを新書にまとめたものである。SF雑誌がすきならばおもしろいのかもしれない。あるいは、ウィリアムギビソンがすきならばこの本もその説明のひとつとかんがえれば、おもしろいのかもしれない。

  • 2025年3月19日、グラビティにてグラ友の東大生が投稿してた。帯に「イーロン・マスクはなぜ火星を目指すのか?」って書いてあり興味増した。

    「インターネットを使うなかで闇を見てしまうことはあると思う。インターネット空間でどのようにして私たちはアンダーグラウンドなものに足を取られず、深層を覗かずにどう生きていけるのか、その問題を考えるうえで木澤さんの本書はすごく役に立ちそう。
    この本は理論的にならず書いているので、頭を使ったり行間を読んだりする必要がない、議論の交通整理という意味でとても質の高い内容だと思います。
    人文学のサイエンスコミュニケーションも大事だと思う。本書を読んでそういうことも考えた。
    近年の「監視資本主義」やメタバースの言説に対する言及もある。ロシアの知性に対する言及もあるのでその議論に興味のある人も読むと良い本だと思う。」

全22件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

木澤佐登志 SATOSHI KIZAWA
1988年生まれ。文筆家。思想、ポップカルチャー、アングラカルチャーの諸相を領域横断的に分析、執筆する。
著書に『ダークウェブ・アンダーグラウンド――社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』(イースト・プレス)、『ニック・ランドと新反動主義――現代世界を覆う〈ダーク〉な思想』(星海社新書)、共著に『闇の自己啓発』(早川書房)、『異常論文』(ハヤカワ文庫)がある。『SFマガジン』にて「さようなら、世界――〈外部〉への遁走論」を連載する。

「2022年 『失われた未来を求めて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

木澤佐登志の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×