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本 ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784153400313
作品紹介・あらすじ
蒸し麺や揚げ麺に熱々の餡をかけて食べる「あんかけ焼きそば」。食卓ではマイナーな存在だが、その発祥はソース焼きそば以上に謎に満ちている! 探求の旅は戦前の東京、横浜・長崎を経てアメリカへ――。世界屈指の焼きそば通が解く、濃厚歴史ミステリ第二弾
感想・レビュー・書評
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前作「ソース焼きそばの謎」ほどは面白くないだろうと期待せずに読んだが、あとがきに書かれている通り前作の3倍面白かった。前作のソース焼きそばは経済や物流、本作はアヘン戦争や日清戦争といった国際関係や文化を背景に語られており、日本・中国・アメリカにあんかけ焼きそばのルーツを求めるなど、食べ物を巡る話とは思えないほどスケールが大きく読み応えがあった。
あんかけ焼きそばの来歴を探るため、あんかけ焼きそばと似た皿うどん、更にその元となるチャンポンのルーツ、カタ焼きそばのルーツでは19世紀のアメリカまで調査。作者の調査能力と熱意には脱帽。アメリカ人のカリカリ嗜好の実例としてではあるが、「焼きそば」のルーツを探る本にタコスやプリッツェルまで登場するとは!揚げ麺のルーツはアメリカに出稼ぎに行った苦力(クーリー)相手の中華レストランと判明するが、楽しいグルメ話だけではなく、当時の中国排斥運動といったに差別についても述べられている。トランプ大統領とその支援者の主張と、当時の中国人排斥運動の中核を担った政党の主張が大差ない事が恐ろしく感じた。そのような状況のアメリカから逃れた中国人が、揚げ麺やチャプスイといったアメリカで独自進化した中華料理を訪日して伝えたという本書の説は説得力がある。因果は予測出来ない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『#あんかけ焼きそばの謎』
ほぼ日書評 Day835
知人の読書評に触発され手に取ってみる。
戦後すぐまで、「やきそば」と言えば、今で言う「カタ焼きそば」(揚げ麺の)のことだった。
もともと中国には存在しない "揚げ麺を固いまま食する「カタ焼きそば」" のルーツはどこか?
同様にパリパリ麺が特徴の「長崎皿うどん」との関係は?
普通の柔らかい焼きそばが「カタ焼きそば」を駆逐した流れは?
巻末10頁におよぶ膨大な参考文献に加え、著者自らが各地の名店・老舗店を実食取材しての丹念な検証は、新書版ながら非常に素晴らしい。
(それを知ったからどんな意味があるのか?という無粋な問いは立てないで欲しい)
さて、柔らかい焼きそばの第一号は、「上海式焼きそば」。「上海焼きそば」とも通称されるが、本来は寧波炒麺と呼ばれるべきもの。これは神保町界隈の老舗支那料理屋がルーツ。なお、横浜中華街の萬来亭では本来の上海焼きそばが食べられるそうだ(太麺でたまり醤油を用いたコクのあるものだそうだ…行ってみたい)。
パリパリ「皿うどん」のルーツを探るパートだけでも、大正〜昭和にかけての41冊もの資料にあたるという徹底ぶり。
長崎でも元々の「皿うどん」は、太麺を使った "汁なしちゃんぽん" のことだったが、これがある時期から、今のような揚げ麺のに変わる。
ちなみに評者の推しは、新中野のちゃんぽん屋「球磨(くま)」。本来の太麺で柔らかい "皿うどん" が供されているが、ある程度馴染みにならないと、「普通の皿うどんと違いますけどいいですか?」と念押しされる。
そんな、かた焼きそばのルーツはアメリカにあり。シリアルやタコスなど、元はソフトなものだったのを、クリスピー好きなアメリカ人がハードタイプなものを開発し、それがメジャーになったものも多い。揚げ麺もその類。
終盤は、それがどのようにして日本に伝えられたのかの考証が主。背景となる歴史解説や古文書の読み解きのボリュームが多いため、やや読むのに難儀するかもしれないが、そこはさらっと進めよう。
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<目次>
プロローグ 明治二年の「鳥やきそば」
第1章 支那料理屋の「ヤキソバ」考
第1節 老舗「ヤキソバ」実食分析
第2節 戦前料理本の「ヤキソバ」レシピ
第3節 「上海風焼きそば」の真実
第2章 長崎皿うどんを解きほぐす
第1節 皿うどんのルーツ「支那うどん」
第2節 太麺皿うどんの起源に迫る
第3節 太麺から細麺へ~長崎皿うどん革命
第4節 細麺皿うどんとカタ焼きそば
第3章 「炒麺」(チャーメン)はどこから来たのか
第1節 アメリカ式中華料理「チャプスイ」
第2節 「チャウメン」の誕生と変容
第3節 アメリカでの中国人排斥がもたらしたもの
第4章 明治期の横浜居留地へ
第1節 南京料理屋列伝
第2節 横浜の欧米人と清国人
第3節 一三五番 南京ちゃぶ屋・会芳楼
エピローグ 会芳楼後日譚
<内容>
『ソース焼きそばの謎』の著者の第2弾というか、姉妹版というか。もともとセットでブログに載っていた記事らしい。理系の著者らしい章立て。緻密な調査と推測。ただ第4章はちょっと粗いか。そして文脈も「カタ焼きそば」のルーツ探しから、歴史的な横浜南京町(現中華街)のお話へ。まあ、カタ焼きそばが長崎皿うどんへ、そしてアメリカへ飛ぶあたりはなかなかでした! -
女子栄養大学図書館OPAC▼https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000072036
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