- 本 ・雑誌 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784160086449
感想・レビュー・書評
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一冊まるごと藤沢周平。文春はもう何冊も藤沢周平特集を作っているはずなのだが、汲めども汲めども尽きぬ源泉が藤沢周平なのだな、と再認識した。新たな発見多し。
おそらくファンには高値でついていたであろう、直木賞受賞作時の「オール讀物」1973年10月号から多くの記事を再掲していた。
まだバリバリの業界誌編集者だった頃の、「普通人」藤沢周平の矜恃みたいなものが、当時のインタビュー記事から垣間見える。
日教組を話題にしたら、「ハイ、支持しています。操のようなものです」完全な明言だった。ほおがしまって、「3年ぐらい前に、渡辺操先生という方が、火の中の子どもを助けにもどっていってなくなりましたね」目が光った。「あれです。現場の先生にはかなわないという気持ちがあります」(63p)
ー部下には厳しいか?
「ヤ、それが」(少し閉口)「甘くて、ダメです。ほんとうに」(略)
ーサラリーマンの厳守事項は?
(またばきしてから)「時間ってものを、きちんとすることでしょうね」(略)
ー好きなペット?
(きっぱり)「ありません」(感傷的でなく)「いまは、生きものがこわいんです。命のもろさが」
ーもし、娼婦にぞっこん惚れられたら?
(ごつい顔で)「誠意をつくすしかないですね」(65p)
これらの言葉にコメントすべきことがあまりに多くて省略する。
藤沢周平は、ほとんど現代社会に対して発言しなかった。1993年の城山三郎との対談では、わりと思い切ったことを喋っている。これもコメントし始めるとキリがないので省略する。
私の数少ない好きな女流作家の「藤沢周平ラブ」の記事が三本(あさのあつこ対談、上橋菜穂子エッセイ、宮部みゆき評論)あったのも嬉しかった。
確かに「完全保存版」だと思う。
2017年5月14日読了詳細をみるコメント0件をすべて表示