わが夫 啄木

  • 文藝春秋企画出版部 (2018年12月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (376ページ) / ISBN・EAN: 9784160089464

作品紹介・あらすじ

石川啄木の死の1年後、同じ肺結核で死の床にある妻の節子の回想で始まる小説で、全編を節子の視点で描き、二人の錯綜した愛を掘り下げます。互いに14歳のときに出会い、結婚し、故郷を追われて漂泊し、貧窮の中で生きた二人。27歳で若き命を散らす啄木の生涯に重ねて、節子の救われ難く見える一生にスポットライトを当て、その心情に寄り添います。これまで節子は、世に埋もれた天才歌人を支え続けた健気な妻と言われてきましたが、果たしてそれが本当の節子の姿だったのだろうか、という思いが作者・鳥越碧さんの執筆動機です。確かに節子は、結婚後も短期間しか一緒に暮らせず、啄木からの仕送りもわずかで、彼の母らと共に貧乏のどん底に突き落とされます。啄木が釧路に単身赴任して芸者とわりない仲になったときには、煩悶し嫉妬もします。ようやく東京で同居できるようになったときも、すさまじい嫁姑の諍いを起こし、社会主義へと走る夫からも取り残され、孤独感をつのらせます。ついには、極貧の中、自ら結核を患います。しかし、明治という時代に、初恋を貫き、親の反対を押し切って夢を追う無職の夫に嫁いだ節子です。自分の意志をしっかり持った女性であったに違いありません。そうであればこそ、姑とも激しく対峙し、親身になって相談にのってくれる夫の親友、宮崎郁雨に揺れる心をも制御できたのではないか。夫婦に溝が生じ、愛が冷めたかのように思えたときも、夫の看病を通じて静かに心を通わせることができたのではないか。たとえ世間的には不幸に見えたとしても、彼女にとってはキラキラとした誇らしい一生だったのではないか、というのが作者の節子への思いです。死の床で節子は一生を振り返ります。そして、最後に頷きます。後悔はしていない、誰でもない自分の意志で、己の一生を生き切ったのだからと。『雁金屋草紙』で第1回時代小説大賞を受賞した作者の、究極の愛を描く渾身の力作です。

感想・レビュー・書評

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  •  啄木の金銭感覚のなさ、女癖の悪さ、自堕落さは大体知ってはいましたが、妻節子に対する立ち居振る舞いに腹が立ち、(姑カツのいじめも相まって)途中何度かもう読むのを止めようと思いました。鳥越碧さんが、妻節子の目線で啄木を描いた書です。「わが夫(つま)啄木」、2018.12発行、373頁。参考文献27冊。27歳で逝った夫を困窮生活の中で支えた妻節子。その1年後、同じ肺結核で28歳で没。人間的には本当にダメな男だと思いますが、歌は素晴らしいですね!やはらかに柳あをめる北上の岸辺目に見ゆ泣けとごとくに

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著者プロフィール

1944年、福岡県北九州市生まれ。
同志社女子大学英文科卒業。商社勤務ののち、90年、尾形光琳の生涯を描いた「雁金屋草紙」で第一回時代小説大賞を受賞。
主な作品に、「あがの夕話」「後朝」「萌がさね」「想ひ草」「蔦かづら」「一葉」「漱石の妻」などがある。
また、近著の「兄いもうと」では、妹・律の視点から正岡子規の壮絶な生涯を描き切り、子規の解釈にも一石を投じた。

「2014年 『花筏 谷崎潤一郎・松子 たゆたう記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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