高丘親王航海記

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163098401

感想・レビュー・書評

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  • ガリョウビンガ 何のことだろう。
    聞いたことがあるような?高丘親王とは、クスコの思いにあこがれて、天竺を目指す。南下航海して、セイロン島(獅子国?)からインドへ達する予定であったものか。各章には難しい漢字が当てられている(伝説上の動物などの名であろうか?)物語が進むにつれて、親王はこれらの動物と出会う旅をする。ふと、現在からの視点のコメントが入る。それは、物語が夢、空想である事を示しているようだ。旅が終盤に向かっていくにつれて、奇想天外なことが起こる。老と病のために、目的地に生きて達することは出来ず。虎の肉となり、天竺へ行く。入滅を果たす。

    太古と現在、夢と現実、日本とアジアが交錯する。常人(現代の)創造を絶する、奇異な世界は何だろうと考えた。涅槃寂静とはこの世界であるのか?

  • ほろっと酔える至極の幻想文学



    初めての澁澤兄さんである。
    ミシマ好きは澁澤さんのことを当然知っている。何にせよ、サドといえば澁澤、のワンセットは王道だ。
    『異端の肖像』あたりはちろっと読んだことがあるのだが、創作物は初めてである。
    持っている本が豪華なケース付きのハードカバー版であるので読まずにほぼインテリアとなって本棚に飾られていたのだが、せっかくの本がもったいない話。ようやく手が伸びた。





    率直な感想は、おもしろかった。
    そしてエロかった。でも幻想的で、ユーモラスで楽しい物語。
    ストーリーはミコこと高丘親王が天竺、つまり今で言うインドを目指し唐から旅に出るというもの。
    その旅がまたものすごくファンタジーめいているのだが、このミコ様は実在の人物で甥は在原業平なのである。ストーリーもいわば史実になぞらえて書かれているのだから不思議なもの。
    話は7つのエピソードに分かれている。内容的には一話完結なのだが、流れは当然のことながら継いでいる。そしてその7つの物語がどれもこれも、先に言ったようにエロティシズムに溢れ、しかしそれがきれいなのだ。
    それはけして清潔、という意味ではなくて、何だろう、けしてさらりとそれを描写せず結構そのままなのにまるでそれが下品になりすぎず、きりりとしている。
    不思議ね。
    健全なポルノ、しかし文学より、とも言うべきか。
    いやそれが物語のすべてではないのだが、このエロティシズムがこの本の特徴の一つになるのだろうな、と思った。



    新鮮だったのがあまりにも自然にファンタジーが出現するところだ。
    人語を解する儒艮、頭が犬の男、鳥の下半身を持つ女たち、さらっとそんなものがでてきたり、平気でアナクロニズムを起こす(むしろ登場人物たちがそんな言葉を自ら口にする)。
    ファンタジーに慣れていない私は少し面食らうが、ファンタジーの世界では普通なのだろう。ノリがまじめなくせにさらっとそんな事をしてくるのから少し驚いた。
    とはいえ澁澤龍彦に関する知識をほとんど持ち合わせていなかった私が悪いのだろうが。



    どのエピソードもとてもおもしろかったのだが私の一番のお気に入りは「獏園」。
    薬子やマイナーだが儒艮も好きなのだが私はパタリヤ・パタタ姫がとても気に入っているのだ。
    獏園での彼女のイメージが強烈だったのだろうと思う。結局、それは薬子につながるのだろうが、薬子は物語中の肖像があまりにもいろいろな物に重なりすぎているため捉えきれていのだ。その点に関してはパタタ姫ははっきりとしているのだ。
    あっけらかんとしているのに艶っぽい。やはり健康美なのかしらん。
    夢心地、ではないが人を酔わせる魅力溢れる物語だな。

  • 澁澤の作品の中で一番好き。
    遺作・・・だけあって自らの死を意識していたのだろうか。恐ろしいくらい透明で神々しいくらいに美しい。むしろ宗教的な厳かさを感じる。墓場まで持っていくのならばこの作品。
    釈迦の逸話と重なっている部分があったなあ。

  • 内容は以下の通り。

    儒艮(昭和60年8月 発表)
    蘭房(昭和60年11月 発表)
    獏園(昭和61年2月 発表)
    蜜人(昭和61年5月 発表)
    鏡湖(昭和61年8月 発表)
    真珠(昭和62年3月 発表)
    頻伽(昭和62年6月 発表)

    装幀: 菊地信義
    地図: 著者

    冒頭の「儒艮」からして、非現実的な航海記である。現実と非現実の溷濁の仕方からして、著者の考えを存分に取り込んだ怪奇小説とも読める。ウェブ上で、著者の死生観が表れているという読み方があり、納得した。

  • 懐かしい本に再会した。澁澤龍彦はずっとお気に入りだったからこれも初版で読み、とっくに手放して久しかった。

  • 実在の高岳親王が,荒唐無稽ではあるが,ありそうな妄想や因習や風習などとも重なるような天竺への旅行記?天竺への道はやはり遠かった.鈴をつけた犬男,ラフレシアの上でミイラになる王妃,言葉を覚えた儒艮など想像できる不思議が多い.

  • 2.6

  • ファンタジーって言葉は英語?だし、じゃあ西洋のものなんかな?と思いつつ、でも水滸伝とか、中国のファンタジーもなかなか、なんじゃないか。水滸伝は読んだことないけども。。てかファンタジーの日本語訳はなんかな?
    いや、中国もののファンタジーって好きなものが多いのよね。日本人が書いた西洋もののファンタジーか。難点としては、漢字が難しくて読めなすぎ。まぁ雰囲気で読み進めてしまうけど。

  • この作家は評価が高いイメージだったが、
    あまり私には合わなかったように思う。

    ファンタジーが苦手なうえ
    冒険(?)ものも苦手でダメだなので
    序盤から頑張って読んだという感じ。
    幻想小説と聞いていたが、
    その要素も少なかったように思う。
    幻想小説は好きなのだが
    そうゆう小説を読みすぎたのかもしれない。

  • 学校の課題本で読む。自分では読もうと思わなかっただろうな。だから、新鮮。日本版ファンタジーでしたね。

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