香水 ある人殺しの物語

  • 文藝春秋 (1988年1月1日発売)
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本 ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784163106601

感想・レビュー・書評

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  • 五感の中で一番説明のしにくい具体性のない、それでいて、印象を大きく左右する嗅覚。その匂いに超人的な才能を持つ男の一代記。
    人殺し云々という副題が付いていたので、とりあえずミステリーにジャンル分けしてみましたが、何だろう、ミステリーというのとも違うような…

    このブクログの一文クイズで先日 問題に出た本です。
    そこでキーワード『匂い』が何故か引っかかりこの本を探し出して読んでみました。ご紹介いただきましてありがとうございました。
    それによると映画もあるそうで。映画はどんな内容?興味深いものです。

    この本のレビューといたしましては、5章に分かれ、それぞれがある人物の死をもって一応の完結を見せてはいますが、ここでネタばれはしたくない。想像以上に芳しい濃い内容の本でした。

  • 映画がとても気になっていたけど、
    見ることもなく終わってしまったので、原作を読んでみました。
    最後の解説で、起承転結になってるって書いてあったけど、
    まさにそうです。
    最初はとても引き込まれる出だしで、
    中盤は主人公の孤独な時間が多くって何度も眠くなりました。
    でも後半はあれよあれよと、殺されていってしまう。。。
    香水も一種の麻薬ですね。。。

  • 前半はかなり退屈。
    やめようかと何度も思ったけど、前評判を聞いていたためなんとか読了。
    ラストは結構衝撃的。小説って、やっぱり面白いなぁ。
    映画の方も観てみたい。

  • あたり一面においのないものはない中において、唯一においのない人物が、理想のにおいを追い求めた話である。追求の仕方がかなり異常であるぶん、一見奇抜な物語に見えるが、つまるところ彼は「個」としての存在意義が欲しかったのではないか。究極のにおいを望みながら、「アイデンティティー」は決して手に入らない。その渇望と絶望が他人のにおいを通して綴られるというのが何ともやるせない。

  • 18世紀のフランスに生まれた邪悪な天才調香師、グルヌイユの一生。

    久しぶりに、こんな小説を書いてみたいと思う本に出会った。

    この本の最大の魅力は、登場人物のキャラクター造形にある。21世紀の日本人から見れば、邪悪か強欲または身勝手としか思えないキャラクターがほとんどだが、全員が必死に生きている。

    登場して2ページで首をはねられるグルヌイユの母は、名前さえないがあまりにも鮮烈だ。実家からの仕送りの途絶えた孤児を職人に売るマダム・ガイヤールも罪の意識はない。

    グルヌイユが関わったほとんどの人間は非業の最期を遂げるか望まない人生を送る。

    何かを調合する小説、と言えば高野和明「ジェノサイド」もそうだが、薬の調合がコンピューター任せなのは読んでいていも楽しくない。グルヌイユが手作業で香水を作り出していく過程は、知的好奇心も刺激されるし、読んでいて面白い。

    邪悪な天才グルヌイユは25人の美少女を使って(殺して)すべての人間をひざまずかせる究極の香水を作り出すが、その力が顕現した瞬間に、たったひとつの想いもかなわないことを知る。

    ――ありのままの自分を受け取ってもらいたい。自分に唯一まことの感情である憎悪に対して、しかるべき返答をもらいたい――

    誰もがグルヌイユの「香り」にひれ伏すが、それはグルヌイユではなく「香り」にすぎない。グルヌイユがどんなに大衆を軽蔑し憎んでいても、誰も「香り」の下の素顔を見ることができない。

    絶望したグルヌイユは、生まれ育ったパリにもどり、天使となって地上から消滅する。

    この本に出会えてよかったと思える、最高の読書でした。

  • 文字というもので香りという五感の一つに訴えるものを
    ここまで豊かに表現することができることができるなんて
    信じがたい偉業。
    香りそのもののが与える快楽と、それが人間にもたらす作用
    の追求のみに生きる、粗野な野生児であり、天才の調香師であり、
    悪意のない殺人犯でもあるグルヌイユの数奇な一生を描いた
    文学史に残る名作!!

  • ふむ

  • もう、すごい話だった、本当に。
    ほとんど一気読みしたので、まあ面白いと言えば面白かったのでしょうが、ひとくちに面白い!と言うには他にそう言った作品と並べられないような、なんともいえない小説です。
    終始あまりにも淡々とした三人称で語られるある男の一生。容姿について折に触れて語られるのに、まったくどんな人物なのかわからない、理解できない、淡々としているからこそ余計にその気味の悪さが際立って、嫌なものをつい覗きたくなるような気持ちで読み耽ってしまいました。
    人に愛されず、人を愛さず、むしろ憎み憎まれ生きてきた男に共感できるところはほとんどないのに、なぜか彼なら何かとんでもないことをするのでは、という興味をそそられる。していることは悍ましく恐ろしくとも、なぜか不思議な畏敬の念を覚えさせられる。
    この感覚をたくさんの人が呼び起こされているからこそ、ベストセラーとなったのだろうなあと思います。

    グルヌイユ。愛されず望まれずに生まれ、そして誰にも本来の姿を知られることなくあとかたもなく消えたこの男の名を、訳者あとがきによると蛙を意味するらしいこの男の名前を、もうずっと忘れられない気がします。

    それから、彼と関わった人物のほとんどが彼と道を違えた直後に悲惨な末路を遂げているのが、彼自身の不吉な存在を暗示しているようで印象的でした。
    今はただただ彼の起こした「奇跡」とその結末に呆然としていますが、いずれまた読み返し、その人生と、彼のもたらした魅了の香りについて考えてみたいと思います。

    誰もを魅了し、狂乱させ、人を憎んだ彼を愛によって殺すまでに至った香水。
    たぶん現実には永遠に現れない、現れてはならないであろうそれと、それを生み出す者の愛なき内面について、この文章を書きながらもたくさん考えているので。
    いやあ本当に……すごい小説でした……。

  • 類まれな嗅覚をもつが本人には匂いがない。という設定が巧すぎてページをめくる手が止まらなくなる。

    匂いを文章で伝える巧みさも書き出しや翻訳の巧さにも唸らされる。

    巧いだけではなくもちろん面白い。匂いに翻弄される人々の物語を騙されたと思って読んでほしい。

  • 第1回アワヒニビブリオバトル「時」で紹介された本です。
    2015.06.10

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