クリスマスの思い出

  • 文藝春秋 (1990年11月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (80ページ) / ISBN・EAN: 9784163122106

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

クリスマスをテーマにしたこの作品は、7歳の少年と60歳を過ぎた遠縁のいとこ、そして犬のクイーニーが過ごす特別な日々を描いています。彼らは心を込めてフルーツケーキを作り、手作りの凧を贈り合うなど、ささや...

感想・レビュー・書評

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  • この本は、すべてが美しい。
    まず、装丁が美しい。
    村上春樹の日本語が美しい。
    だから、きっと原文のカポーティの英語も美しい。
    本文のページの余白が美しい。
    山本容子の版画が、心がこもっていて美しい。
    そしてそして、このストーリーのイノセント(無垢)な世界が美しい…。
    雪の日のダイヤモンドダストのように。

    バディと呼ばれる七歳の少年は親戚の家に預けられているのだが、家の中に一人の親友がいる。
    それは六十歳を超えた従姉妹の女性だ。
    十一月も終わりに近いある朝、彼女は窓を見て「フルーツケーキの季節が来たよ」と嬉しそうに叫ぶ。
    毎年のことだった。彼女のその一声で、彼女とぼくは荷車(ぼくの乳母車だった)を押して、犬のクイーニーを連れて、森にピーカンの実を集めにいった。家に帰って夜までかかって二人でピーカンの実を剥いた。
    そして翌日に二人はなけなしのお金を出し合って、サクランボ、シトロン、ジンジャー、バニラ、パイナップルの缶詰、果物の皮…小麦粉、バター、卵などを買い出しに行った。それらを買うために二人は家の人がたまにくれる雀の涙ほどの小遣いを貯めたり、がらくた市を開いたり、手作りのジャムやりんごゼリーを売ったり、お葬式や結婚式のために花を集めて売ったりしてお金を貯めていたのだ。
    そして、フルーツケーキを30個も焼いて、「一度しか会ったことのない友達」や「一度もあったことのない友達」に贈った。
    全てのケーキを郵便局に運び、空っぽになった台所で、ケーキの材料としてインディアンに頂いたウィスキーを二人でスプーンに一杯ずつ飲んで、楽しく歌い踊っていると、親戚の人たちに怒られた。
    どうやら二人はこの家で邪魔者らしい。彼女は子供のようにめそめそ泣くが、ぼくに慰められ、気を取り直して、翌日にはぼくと森へクリスマスツリー用の木を切りにいった。
    海のようにクリスマスツリーが何エーカーにも渡って茂っている中でとびきりのを見つけて切り、それにひいらぎの葉や赤い実も沢山集めて、家まで二人は一生懸命引っ張っていった。ツリーを僕の描いた絵やチョコレートの銀紙で作った天使で飾りつけ、家の人たちに手作りのプレゼントを用意し、お互いには手作りの凧をプレゼントとして用意し、犬のクイーニーには二人でお金を工面して骨付き肉を用意し、ワクワクしながらクリスマスを迎えた。
    クリスマスの日、彼女は「神様は死んでから会えるのではなく、自分たちがいつも目にしていた物が神様のお姿だったんだ」と悟った。
    それが、僕と彼女が過ごした最後のクリスマスだった。

    誰もが子供の頃に待っていた「イノセント」な心は誰もが大人になるにつれて無くしていく。
    大人になり、働いて、お金が出来てもこの時の貧しかった僕と60歳も年上の親友とが過ごしたキラキラした時間は二度と来ない。それが神様からのプレゼントだったのだ。
    そんな「宝物」をカポーティが大切にしまってくれたこの本をクリスマスの時に開きたい。








    • Macomi55さん
      へぶたんさん
      本当にこの本に出会えて良かったです!
      そしてこの気持ちを分かって下さる方がいて良かったです。
      そして、ワオ!へぶたんさんとは前...
      へぶたんさん
      本当にこの本に出会えて良かったです!
      そしてこの気持ちを分かって下さる方がいて良かったです。
      そして、ワオ!へぶたんさんとは前にミュージカルも一緒に観ていましたし、繋がってますねー!
      何処かで何度も会っているのかも?
      カポーティ、お薦めがあったら教えて下さいね。
      2025/04/01
    • へぶたんさん
      同じ空間にいたことあるかもしれませんね
      偶然が重なってなんだか嬉しい(*^^*)

      そしてほんとちょうど今...読んでる本の最後に『クリスマ...
      同じ空間にいたことあるかもしれませんね
      偶然が重なってなんだか嬉しい(*^^*)

      そしてほんとちょうど今...読んでる本の最後に『クリスマスの思い出』が収録されていたのです!
      まさかのびっくりです!今から読みますね!
      詳しくはレビューにて(笑)
      2025/04/01
    • Macomi55さん
      へぶたんさん
      レビュー楽しみにしてます!
      へぶたんさん
      レビュー楽しみにしてます!
      2025/04/01
  • 先日『草の竪琴』についてのレビューを書いた後、フォローさせて頂いている方が本書を紹介しているのを目にした。カポーティの作品についてあーだこーだと知ったような口で持論を展開しておきながら、こんな純粋無垢(村上春樹によるあとがきによれば、イノセントストーリーと呼ばれているらしい)な短編を知らなかったなんて恥ずかしい限りである。本当に私は無知なのだなと思い知らされた。しかし、無知故に、私は本を開く度に新鮮な喜びを享受することができる。馬鹿ゆえに幸せを実感できる。無知で本当によかったな、と心から思った。

    7歳の少年と60歳の老婆の組み合わせ、世間知らずだが人の幸せを心から願っており、異民族の秘薬の調合方法を知る女性の存在、これらの要素は『草の竪琴』を連想させる。両作品の関係性については調べていないのだが、幼少期の思い出を元に二作品も執筆してしまうあたり、少年時代の記憶はカポーティの心に強烈に焼き付いているのであろう。子供の頃の情景に取り憑かれていると言って良いかもしれない。

    本作はカポーティという人間を映し出す鏡だ。少年が彼の幼少期の物の考え方を代弁しているのは言わずもがなだが、老婆は執筆当時のカポーティを克明に映し出している。大人になりきれぬままに歳を重ねてしまった自分、歳を重ねているのにいつまでたっても現実との折り合いをつけられない自分、美しく無垢な思い出に浸り、著者の理想的な精神状態のまま自然に過ごすことのできていた少年時代の思い出と言葉を交わすことで今を生きようとする自分、これらの幼く孤独な感受性が湧き出すように散りばめられた本作は、心温まるものでありつつ、どこか物悲しい。人が誰しも持っていながら、社会とうまくやっていくために心の奥底にしまい込んでいた感覚を、本書は優しく撫でつつ、隙を見計らって強く呼び起こすのだ。以下に記す老婆の言葉が、本書の全てを物語っているといってよい。

    「大人だからこそ、人は泣くんだよ」
    「こんなに歳を重ねたのに、いつまでたってもまともになれないから」



    村上春樹訳のレイモンドカーヴァーを読んだ学生時代の私は、その描写や空気感の虜になって原文のペーパーバックを買って読んだ。そして、訳文と原文から受ける印象があまりにも違いすぎてショックを受けた。変わらずレイモンドカーヴァーは好きなのだが、以来村上春樹が翻訳を担当した作品を避けるようになった。ティムオブライエンも同じ理由から原文のみしか読んでいない。本書も村上春樹訳だったため最初は躊躇したのだが、結果的に読んでよかったと思った。

    色々言われることはあるのだろうが、元の英文とのギャップがありつつも村上春樹の翻訳は原書に繋がるような仕上がりになっていると私は思う。村上春樹の翻訳に幻滅することはあれど、著者に幻滅することはありえないのだ。だから本作に関しても、いつか必ず原文を読んでみたい。
    まじりっ気のないトルーマンカポーティの純な文章を、この目と心で心ゆくまで堪能したいと強く願う。

  • 7歳の少年と、60歳を過ぎた遠縁のいとこ、そして犬のクイーニー。彼らが過ごすクリスマスまでの日々。Macomi55さんのレビューを読んで、クリスマスシーズンに読もうと決めていた。

    11月のある日、彼女はクリスマスのためのフルーツケーキを作る時期が来た、と宣言した。
    さまざまな工夫をして1年間貯めたお金で二人は材料を買い、大切な人たちのためにフルーツケーキをつくる。しっかり吟味したもみの木を切り倒し、お菓子を包んでいた銀紙や自分たちの描いたスケッチを切り抜いて飾りつける。そして二人は心のこもった手作りの凧を贈り合うのである。
    ささやかだけど幸せな日々。それなのに、この幸せが近い将来終わりの日を迎える予感が物語を覆う。それは、二人と一緒に暮らす親戚の彼女への対応や、少年の成長を実感させる描写の中からそこはかとなく漂ってくる哀しい予感である。

    いつしか失われるであろう宝物のようなひと時。だからこそ、その思い出は清らかで美しい。

  • 私のクリスマスは良い思い出ばかりだと思う、きっとそうじゃない時もあったんだろうけど、、、結局、今はそう思う。
    だからクリスマスは凄い!

    クリスマス、苦手な人参が浮かぶ母の作ったスープを、それでも美味しい!とおかわりをしてしまうのがクリスマス。
    年に一度だけの特別な日、クリスマス。
    それくらいクリスマスはいつもご機嫌で大好きだった。

    今はもう大人になって、仕事や人付き合いで1日が終わってしまい、あの頃の特別感は薄れてしまったけれど。
    キラキラ光る木や車のランプが流れる道路、帰り道のそれだけでも少し気分が良くなる。
    だからやっぱり、、、クリスマスは凄い!!

    そんなふうに思える1冊。
    クリスマス前に読めてよかった。

    私の苦手な人参が入ったスープはあと何年飲めるのかな。
    大切なものすべてを抱えていけるだけの腕はないから、せめてクリスマスの思い出だけでもポッケに入れていけるといいなぁ、と思った。

    人参の可愛い色合いは好き^^

    • 韓子さん
      カポーティは暗い話しかないと思ってたんですが、こんな心あったまるような作品もあったんですね...。
      今度読んでみます!
      カポーティは暗い話しかないと思ってたんですが、こんな心あったまるような作品もあったんですね...。
      今度読んでみます!
      2025/12/20
    • れいなさん
      韓子さん!いつも本棚参考にさせていただいております!
      トルーマン・カポーティ、恥ずかしながら私は初めてこの作品で知りました。暗い作品の方が多...
      韓子さん!いつも本棚参考にさせていただいております!
      トルーマン・カポーティ、恥ずかしながら私は初めてこの作品で知りました。暗い作品の方が多い方なんですね…確かにその片鱗がありました!是非クリスマス近くに読んでください〜!
      2025/12/20
    • 韓子さん
      さっそく読んでみました。れいなさんのレビューがなければこんな素敵な本を一生知らずに人生を終えていたかも知れません...。ありがとうございます...
      さっそく読んでみました。れいなさんのレビューがなければこんな素敵な本を一生知らずに人生を終えていたかも知れません...。ありがとうございます!
      カポーティの作品は暗い作品が多く、読んでいて気分が落ち込むこともあるかもしれませんが、それを差し引いても得られるものが多いので是非読んでみてください。これからもレビュー楽しみにしています。
      2025/12/20
  • ずっと前に読んだ事があった。カポーティの作品というより山本蓉子の銅版画に惹かれて読んだと思う。
    7歳と60歳過ぎのいとこ同志。二人は気の合う親友で愛犬のクイーニーとともに過ごしている。毎年11月になるとフルーツケーキを30個も焼いて、友人や自分の好きな人に送る。そのために涙ぐましい努力で一年かけてお金をため、材料を買うのだ。クリスマスツリーのために森の奥に出かけて行き、大きなモミの木を切って運んで飾りつける。お互いのためにプレゼントの凧を作りクリスマスの日に凧揚げをする。それはそれは楽しい日々だった。
    しかし、それが最後になってしまう。僕は寄宿学校に入れられてしまい、数年後には彼女は亡くなってしまった。
    カポーティの一番有名なイノセントストーリー。
    素敵な二人の楽しい日々をそっと分けてもらった感じの語り。引き離されて寂しかったけど、きっと心はずっと繋がっていたな、と感じる。

    カポーティがアラバマ物語の作者のハーパー・リーと幼馴染という事で、アラバマ物語の中に出てくるディルのモデルがカポーティらしいという事で読んだけど、アラバマ物語に出てくるディルは夏休みになるとやってくる少年で、ちょうど、7歳からアラバマにやってくるのよね。このクリスマスの思い出のあとくらいかな?

  •  季節はずれではあるが、初カポーティ。
     清らかで、眩しいが、その周りの闇も見える。
     (悪徳弁護士が暗躍する短編集のあとだったので、一瞬、読み方がわからなくてクラクラしてまった。)

  • 読みやすい短編。知らなきゃいいことって世の中にたくさんあるし、変な欲もなく純粋にいろんなことを感じられる心は素敵だと思った。

  • 一見、貧しくて外の世界と遮断された暮らしであっても、大自然の中から人生の機微を見いだし、外の世界とも繋がっているという心の豊かさに魅力を感じた。豪華な食事を前に、大人数で騒ぐクリスマスも良いけれど、静かな環境に身を置いて、人生に感謝しながら、自分を見つめ直す時間を与えてくれる一冊。クリスマスの前に、「物欲と多忙」な日常から離れて「自省と静寂」を日々の生活に取り入れたい。夜中、もしくは張り詰めたような寒い朝に、静かな部屋で読むと良い。

    クライマックスで発せられた「私たちが普段目にしている物体・光景が神様そのものである」という言葉は、自然と共生する素朴だけれども心の豊かな暮らしを象徴している。そして、この場面の直後には現実的で寂しい結末が描かれ、切なさと同時に「思い出」の美しさを強烈に突きつけられた。
    カポーティはこの短編がお気に入りで、何度も朗読していたという。何度も口に出すことで、年の離れた友人との美しい思い出を、創作力の根っことして持ち続けていたのだろうか。
    「私は年を取りすぎていろんなことを知りすぎた。目を無駄に使いたくない。」という、無邪気ながらも人生を精一杯生きた老女の言葉も、ずっしりと身に染みた。

  • ▼これ、カポーティさんもご自分で大のお気に入りだそう。<イノセンス・ストーリー>、まあつまり、素朴で子供向きのような平易さの人情噺…とのことで、きっと、「ええ話でグッとくるんだろうなあ」と思って読みました。
     その通りでした。

    ▼自伝的なのか自伝風なのか分かりませんが、恐らくは1940年代くらい?1920年台くらい?の、アメリカの片田舎の、恐らく貧しい村の、貧しい大家族の、厄介者扱いされている老女と少年の、交流と別れの物語です。短くて読みやすくて面白くて、痛くて泣けます。恐らく1時間くらいで読めます。

    ▼こういうのは、「クリスマス・ストーリー」ということで、出版文化華やかなりしころには、主に雑誌(特集号?)に書かれたんでしょうね。
     「新春スペシャルドラマ」みたいなことですね。

    ▼銅版画?なのか、挿絵も味わい深かった。素敵な作りの本でした。

  • いい。何度読んでもいい。読むごとの良さがある。
    一読目は現在形の物語として、二人と一匹のささやかな暮らしが少しでも長く続くよう願いながら、二読目からは回顧による過去の物語として、そう遠くない未来にそれぞれの離別が到来する予兆の痛みとともに読んだ。

    衰えを指摘されている訳者(村上春樹)の解説もさすがにいい。
    敬虔で善良な「子ども大人」のスック,クリスマスツリーに吊られた骨を「感に堪えかねて」見上げる愛らしいクイーニー,そして幼いようで大人の腹の内が見える聡明な坊やカポーティ。
    すべてが優しい世界,失われた世界。

  • 「フルーツケーキの季節が来たよ!」(P7)
    親戚の家に住んでいる7歳の僕は60歳を超えたいとこの老女、犬のクイーニーとずっと一緒に過ごしている。11月、二人は毎年フルーツケーキを作るためにピーカンの実を探し、少しずつ稼いだお金で買い出しをして、友人のために31個のフルーツケーキを作る。

    大変な準備をして穏やかな時間を過ごすささやかなクリスマス。神様のいるところを教えてくれる。

    12月、子供のテストに追われ終業式のすぐ後にクリスマス、年賀状の準備に大掃除にお正月の食事の準備…と用事をこなしているうちに新年が目の前にやってくる、ということをここ数年は繰り返している(汗)こんなにゆっくりとしたクリスマスを過ごしてみたいなぁ。クリスマスが年末年始の通過点になっちゃってます( ノД`)

  • 60歳を超えた老婆を「わが友」と呼ぶ7歳の「僕」。この2人は「それこそ思い出せないくらい昔からずっと一緒に暮らしている。」
    この不思議な関係は、だけど、裏にはこういうことが隠されている。
    -僕が両親とはいっしょに暮らせていないこと。
    -僕にとって友だちと呼べるのは同じ年代などには全くいなくて、この老婆だけなのだということ。

    日々の喧騒のなかで暮らしている(暮らさざるを得ない)自分たちにとって、この作品のように、自分たちの生活からかけ離れたような物語を読むのは、無意味なのだろうか?

    答はNO。確かにこの作品は「コロナの時代を予知していた」とかのあおり広告が付けられるような今風の内容ではないかもしれない。しかし例年のばか騒ぎのようなクリスマスでなかったこの時代こそ、静かに読めるこの作品を薦めたい。

    この本は本編が75ページの短いストーリー。そして69ページで現れる、老婆が僕に語り継ごうとするかのような場面がとてもいい。とにかくそこまでは読み進めてほしい。

    -彼女は長い人生が燃え尽きようとする直前まで、神様の姿を見るためには、死ななければならないと思っていた。
    でもそれは間違いだった。
    人は人生の最後の最後に、ぱっと悟るのだ。神様は前々から私たちの前にそのお姿を現していらっしゃったのだということを。
    物ごとのあるがままの姿、それは私たちがいつも目にしていたもの、それがまさに神様のお姿だったのだと。
    それがわかった今では、ここでぽっくりと死んでもかまわないと思う-

    振り返って今の私たちはどうか?目の前の不幸に悪態をつき、呪い、誰も見たことのない来世ばかりを気にしている。
    たしかに人間にとって本当の生きる喜びは目の前にある、ということを実感するのが難しいのは重々承知。
    だけどこんな時だからこそ、この作品を読んで、ほんの一瞬だけでも“明かり”を目にしたような気になれたらいいのではないか。

  • カポーティーのクリスマスストーリーを村上春樹の翻訳で。クリスマスストーリーといえど、華やかでキラキラしているわけではないけど、心温まるストーリー。

  • カポーティのとっても暖かい小品
    こんなにほのぼのとしたお話を書いてたなんてビックリ
    挿絵は山本容子さんの銅版画、これがまたとてもステキ!

    訳者の村上春樹さんのあとがきによると、
    カポーティには「イノセント・ストーリー」と呼ばれる
    いくつかの作品があって、これはその代表作だそうだ。

    「カポーティの文章的才気を余すところなく発揮した淀みのない、美しい、歌うがごとき文体である。例によってキレはいい。しかしそれは読者に傷を残していくような種類の鋭さではない。」と彼は書いている。
    そのとおりだ! 

    もう少し引用したい。
    「ここに描かれているのは完璧なイノセンスの姿である。・・彼ら三人(二人と一匹)は誰もが弱者であり、貧しく、孤立している。しかし彼らには世界の美しさや、人の抱く自然な情愛や、生の本来の輝きを理解することができる。そしてそのような美しさや暖かさや輝きが頂点に達して、なんの曇りもなく結晶するのが、このクリスマスの季節なのだ。」

    本当に、このとおりなのです。
    こんなチャーミングな短編(これも村上氏の言葉)をクリスマスの読めて、とてもしあわせ!

  • 美しいリボンを飾って贈り物にしたいようなお話です。

    先に「ヌレエフの犬」という本を読みました。オブローモフと名づけられた犬は、ニューヨークのトルーマン・カポーティのパーティに紛れ込んで、床で酔いつぶれたカーポーティと同じ皿でウイスキーを舐めていたのです。そしてヌレエフが気に入って彼の犬になったというお話でした。

    トルーマンカポーティとヌレエフが交差した時があったということを知ったのですが、トルーマンカポーティは昔「冷血」というとても刺激的な本を読んで、彼は何か偏った嗜好のものを書く人かと勝手に思い込んでいました。
    調べてみると、有名な「ティファニーで朝食を」の著者で、他にも美しい短編を残しているとのことでした。
    中でも名作と言われているこの本を読んでみました。前おきが長いですが、あとがきで村上春樹さんが言い尽くされているように、とても暖かい、善意に溢れたとても感動的な物語でした。

    親戚から疎まれ貧しい小屋で、老いた遠縁のいとこと犬のクイーニーと暮らしている7歳のバディーのお話(すでに思い出になっています)です。

    毎年11月が来ると「フルーツケーキの季節が来たよ!」とわが友(いとこ)が高らかに叫んで、クリスマスの用意が始まるのです。貧しい貧しい中から節約して溜めた、中味は殆どコインの財布を持ってケーキの材料を買いに町に繰り出します。ペカンは農場の木の下で拾ってきます。必需品の高価ウイスキーは瓶に一本分けてもらいます。そして出来た31個のフルーツケーキは、毎年知り合ったひとたちや子供に送ります。大統領からもお礼の便りが届きます。

    そして、クリスマス用のモミの木は背丈の三倍の高さと決まっています、それを切り出して2人で雪の上を曳いてきます。紙で作った飾りと古くなった電球で飾ります。交換するプレゼントは凧です。2人は草原に寝転んで高く舞う凧を眺めます。クイーニーには骨付き肉をプレゼントすると、いつも草原の土に埋めています。

    こんなクリスマスの風景は、彼が大きくなって寄宿舎に入るまで続きます。無邪気な汚れを知らないような二人の日々が、クリスマスの出来事の中から伝わってきます。
    カポーティの少年時代と重なっているそうですが、大人になった後もいつまでの心の隅にあった風景なのでしょう。まさに平凡な言葉ですが珠玉のような思い出、カポーティは荒れた晩年を過ごしたそうですが彼の心の中にいつもこんな幸せな思い出が灯っていたのかもしれません。

  • もう題名のとおりです。ただ手に取って、ゆったりとした気持ちで読んでください。外は寒いけれど、台所ではケーキの焼ける香りがし、ちりちりと燃えるストーブの音も聞こえてきそうです。山本容子さんの銅版画は素朴であたたかく、クリスマスにちなむささやかな小物たちや、少年と老女の佇まいが愛しい。コンパクトでとてもおしゃれな装丁なので、贈り物としても最適です。

  • カポーティの作品の中で、もっとも愛された作品とも呼ばれるのが、
    この『クリスマスの思い出』という短編だそうです。
    この作品は『誕生日の子どもたち』という短編集にも収められていますので、
    ただ読んでみたい人は、そちらで読んでみてもかまわないと思います。
    しかし、この本は山本容子さんの銅版画で彩られた絵本というスタイルを
    とっていますし、1ページ1ページぜいたくに使って、文庫の短編集だと30pほどなのが、
    この本だと80pくらいに紙的にはボリュームアップしています。
    なので、金銭的にお得な文庫本をとるか、一冊の本としての完成度の高さがお得な
    本作をとるかはけっこうな迷いどころだったりします。
    僕はアホなので、どっちも買ってしまいましたが・・・。

    誰もが持っている、心の瑞々しさがあります。
    そういうのは、子どもの頃につちかわれた柔らかい心の土壌だったりします。
    それが、大人になって、知らず知らずのうちに死角のようなところに
    押し込められ、わからなくなっていたりする。
    また、社会生活をしていくうえで、主に働いていくうえで、
    そういうのが合理的でなく、機能的ではないので、邪魔っけにされて、
    使われなくなった心の部分として、いつか出番を待っていたりします。
    そして、幼く、弱いものとして嫌悪されたりもします。

    でも、そういったもののもつ純粋さ、美しさは偽物ではないはず。
    そういった心でしか見えなかったりできなかったりする、
    世界の美しさがあり、人の暖かさや情愛があり、生の本来の輝きがある。
    と、訳者の村上春樹さんの言葉も重ねて書いてみました。

    またそういった世界を構築する文章の完成度とセンスそして暖かさは、
    カポーティという天才的な文学人から発せられた唯一無二のものだと思います。
    日本語訳は、そういうところを損なわないようにされているのでしょう、
    読んでいても柔らかな凄さに圧倒されました。

    こういう本を読んで感じ入る心の部分っていうのは、
    人間の土台の部分だと僕は断言したいくらいです。

  • 山本容子さんの銅版画が本当に素敵。
    憧れと、現実と、家族の物語。

  • 少年と老いた従姉妹のクリスマスの迎え方

    1年前の忘年会の本の交換会で回ってきた本

    以下、公式の説明
    -----------------
    従姉のスックと犬のクイーニーとのささやかなクリスマス。画と文とが共に語りかける、カポーティの幼い日の思い出シリーズ最終作
    -----------------

    7歳と60歳過ぎの二人
    二人はいとこであり、気の合う親友でもある
    そして、愛犬のクイーニーとともに暮らしている
    毎年、クリスマス前にはフルーツケーキを大量に作って友人などに送る
    そのために1年かけてお金を貯めて材料を買う

    クリスマスのために森の奥まで行ってモミの木を伐ってきて
    お互いへのプレゼントを贈り合う
    そんな幼年期の最後の思い出


    終盤までは二人がクリスマスをどれだけ愉しく迎えようとしていたかに心が緩やかになる
    しかし、エピローグの結末としては、少年は寄宿舎に入り、老女は数年後に亡くなる

    ただ、読後感は悪くはない
    二人は離れても心は繋がっていなのではないかとも思える


    カポーティを読むのは初めてだし、作家性というものをよく知らないし
    他の作品も知らない
    でも、懐かしさを感じたい時に読む作家さんなのかもしれないと思った

  • 思いがけず涙。
    あーこういう人生に素朴に生きたおばあさん。近くにいて本当は1番大切な人を、成長の日々の速さが残酷に奪う。
    こののちの日々のやるせなさと、おばあさんと僕は最も幸せだったある1日の瞬間の対比が胸を締め付ける。
    20th century womenでも思ったけど、ある心が最も心臓まで近いところまで通い合うような一瞬って人生のうねる流れの中では本当に一瞬で。
    同じ人と同じ場所で同じことを話しても、その後の人生では二度と訪れえない瞬間てあるんですよね。
    そういう瞬間の刹那を成長して知った時初めて、それが失った瞬間であることに気づくんですね。

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トルーマン・カポーティの作品

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