クリスマスの思い出

  • 文藝春秋
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本棚登録 : 523
レビュー : 61
  • Amazon.co.jp ・本 (79ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163122106

作品紹介・あらすじ

「イノセント・ストーリー」シリーズ決定版。最も愛された名作。

感想・レビュー・書評

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  • 60歳を超えた老婆を「わが友」と呼ぶ7歳の「僕」。この2人は「それこそ思い出せないくらい昔からずっと一緒に暮らしている。」
    この不思議な関係は、だけど、裏にはこういうことが隠されている。
    -僕が両親とはいっしょに暮らせていないこと。
    -僕にとって友だちと呼べるのは同じ年代などには全くいなくて、この老婆だけなのだということ。

    日々の喧騒のなかで暮らしている(暮らさざるを得ない)自分たちにとって、この作品のように、自分たちの生活からかけ離れたような物語を読むのは、無意味なのだろうか?

    答はNO。確かにこの作品は「コロナの時代を予知していた」とかのあおり広告が付けられるような今風の内容ではないかもしれない。しかし例年のばか騒ぎのようなクリスマスでなかったこの時代こそ、静かに読めるこの作品を薦めたい。

    この本は本編が75ページの短いストーリー。そして69ページで現れる、老婆が僕に語り継ごうとするかのような場面がとてもいい。とにかくそこまでは読み進めてほしい。

    -彼女は長い人生が燃え尽きようとする直前まで、神様の姿を見るためには、死ななければならないと思っていた。
    でもそれは間違いだった。
    人は人生の最後の最後に、ぱっと悟るのだ。神様は前々から私たちの前にそのお姿を現していらっしゃったのだということを。
    物ごとのあるがままの姿、それは私たちがいつも目にしていたもの、それがまさに神様のお姿だったのだと。
    それがわかった今では、ここでぽっくりと死んでもかまわないと思う-

    振り返って今の私たちはどうか?目の前の不幸に悪態をつき、呪い、誰も見たことのない来世ばかりを気にしている。
    たしかに人間にとって本当の生きる喜びは目の前にある、ということを実感するのが難しいのは重々承知。
    だけどこんな時だからこそ、この作品を読んで、ほんの一瞬だけでも“明かり”を目にしたような気になれたらいいのではないか。

  • 美しいリボンを飾って贈り物にしたいようなお話です。

    先に「ヌレエフの犬」という本を読みました。オブローモフと名づけられた犬は、ニューヨークのトルーマン・カポーティのパーティに紛れ込んで、床で酔いつぶれたカーポーティと同じ皿でウイスキーを舐めていたのです。そしてヌレエフが気に入って彼の犬になったというお話でした。

    トルーマンカポーティとヌレエフが交差した時があったということを知ったのですが、トルーマンカポーティは昔「冷血」というとても刺激的な本を読んで、彼は何か偏った嗜好のものを書く人かと勝手に思い込んでいました。
    調べてみると、有名な「ティファニーで朝食を」の著者で、他にも美しい短編を残しているとのことでした。
    中でも名作と言われているこの本を読んでみました。前おきが長いですが、あとがきで村上春樹さんが言い尽くされているように、とても暖かい、善意に溢れたとても感動的な物語でした。

    親戚から疎まれ貧しい小屋で、老いた遠縁のいとこと犬のクイーニーと暮らしている7歳のバディーのお話(すでに思い出になっています)です。

    毎年11月が来ると「フルーツケーキの季節が来たよ!」とわが友(いとこ)が高らかに叫んで、クリスマスの用意が始まるのです。貧しい貧しい中から節約して溜めた、中味は殆どコインの財布を持ってケーキの材料を買いに町に繰り出します。ペカンは農場の木の下で拾ってきます。必需品の高価ウイスキーは瓶に一本分けてもらいます。そして出来た31個のフルーツケーキは、毎年知り合ったひとたちや子供に送ります。大統領からもお礼の便りが届きます。

    そして、クリスマス用のモミの木は背丈の三倍の高さと決まっています、それを切り出して2人で雪の上を曳いてきます。紙で作った飾りと古くなった電球で飾ります。交換するプレゼントは凧です。2人は草原に寝転んで高く舞う凧を眺めます。クイーニーには骨付き肉をプレゼントすると、いつも草原の土に埋めています。

    こんなクリスマスの風景は、彼が大きくなって寄宿舎に入るまで続きます。無邪気な汚れを知らないような二人の日々が、クリスマスの出来事の中から伝わってきます。
    カポーティの少年時代と重なっているそうですが、大人になった後もいつまでの心の隅にあった風景なのでしょう。まさに平凡な言葉ですが珠玉のような思い出、カポーティは荒れた晩年を過ごしたそうですが彼の心の中にいつもこんな幸せな思い出が灯っていたのかもしれません。

  • 話も美しいが、挿絵の銅版画も美しい。
    手に取って何回も読みたくなる素敵な本。

  • 冬の暖炉みたいな、優しくてあたたかい空気。
    こういうことはたぶん自分にはなかったのに、ノスタルジックな気持ちになるのはなぜなんだろう。
    満たされるような、幸せな気持ちになれる。

  • もう題名のとおりです。ただ手に取って、ゆったりとした気持ちで読んでください。外は寒いけれど、台所ではケーキの焼ける香りがし、ちりちりと燃えるストーブの音も聞こえてきそうです。山本容子さんの銅版画は素朴であたたかく、クリスマスにちなむささやかな小物たちや、少年と老女の佇まいが愛しい。コンパクトでとてもおしゃれな装丁なので、贈り物としても最適です。

  • 村上春樹訳。これは英文で読んだ方が良さそうだ。山本容子さんの版画がたくさん掲載されててステキ。クリスマスプレゼントにも良さそうです。

  • 友人から勧められて読んだ。たぶんヒロインは彼女に似ている。語り手の少年は私に似ているかもしれない。

  • 7歳の僕、ラットテリアのクィーニー、60歳を超えた遠縁のいとこの彼女との3人の日々。

    11月のある朝、それは始まる。
    僕らはベッドの下から1年間貯めてきたお金を出してきて、30個のフルーツケーキを作る。
    森の奥の秘密の場所からもみの木を切り出してきて、ツリーを飾る。
    そしてお互いに相手へのプレゼントを準備する。

    淡々と語られるクリスマスの準備。
    質素で慎ましい生活なのにとても豊かで幸せを感じる。
    山本容子さんの絵も繊細でユーモラス、クリスマスの度に開きたい。
    最後は想像通りの寂しさなんだけど、思い出がとても暖かくて読後もじんわりする。
    脆くて儚いけれど、強くて強烈な思い出。

    村上さまのあとがきは、本を読んですぐには読みたくなかったな。
    別物のエッセイとして違うタイミングで読みたかった。

  • ワクワクしてたクリスマス、また見つかるかなぁ。

  • 心に優しく響く文章でした。そして哀しい何かが残りました

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