タマリンドの木

  • 文藝春秋 (1991年1月1日発売)
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本 ・本 (216ページ) / ISBN・EAN: 9784163125008

感想・レビュー・書評

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  • 芥川賞作家の恋愛小説。

    日本企業のエンジニア兼営業の野山隆志は、運命的な出会いをする。タイのカンボジア難民キャンプで働く、樫村修子…野山の会社が作ったエンジンを、難民のために寄付してほしいと。

    2人は恋に落ちたが、濃密な時は限られている。

    本棚に長らく積読していた1991年の初版本。当時、池澤夏樹氏を推す友人に感化されて購入したのだと思うが、代表作でも、芥川賞受賞作でもない。

    30年以上前の紛争が背景にあるが、男女間の葛藤は今と変わらない。タマリンドの実、食べてみたい。

  • (1994.05.03読了)(拝借)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    人は結局は自分のために愛するのかもしれない。自分らしい自分のために、自分以外の誰にも愛しようのない相手を選んで―。池沢夏樹はじめての恋愛小説。

  • 大手メーカーで大型エンジンを扱うセールス・エンジニアの野山隆志。タイ-カンボジア国境の難民キャンプで幼稚園を運営する樫山修子。出会いは、修子が古いエンジンの寄付を求める団体の一員として野山の会社にやってきた時、応対したのが野山だったことから。その後も、寄付記念のパーティーで、形見の時計を持ってきてほしいという口実を作っての会食、そして、警察に保護された修子を引受けにいったことで、決定的にふたりの距離は縮まり…。しかし、東京とタイ。どちらも大事な仕事を抱え、逡巡するが、結局は…といったところ。かかえているものの大きさ、それを擲ってまで突き進めるかどうか、大人の恋愛小説なんだろうな、と思う。以下抜粋。/冷蔵庫を開けて牛乳を出し、小鍋で沸かす。ティーバッグを一つほうりこみ、バターを一片落としてから砂糖を多めに入れる。煮立ったところでティーバッグを取り出す。大きなマグに注ぐ。「飲みなさい。元気が出るから」(p.50)/「あのね、『デヴィッド・コッパフィールド』を読んでいたの。ミコーバーさんて大好き」(p.79)/「もしも可能なら、毎週金曜の晩の飛行機でタイに行って、月曜の朝の飛行機で戻りたいとさえ思う。だけど、それでは足りないんだ。一緒に暮らすというのはそういうことではないから」(p.92)/しかし、この先は競争かもしれない。彼らは互いに相手を愛し負かすというゲームをはじめたのかもしれない。(p.100)/「いつも変なところへ来てもらうわね。警察とか病院とか」「そう、愛の救援隊。どんな遠方でも駆けつける」(p.113)/今日の幸福のために明日の自分を人質にとって実のない約束をしてはいけない。それは二人ともにとってよくないことだ。(p.119)/「たぶんね、園の庭にあるあの木よ。タマリンド。タイ語ではマッカムと言うわ。幹がまっすぐ伸びて、ずっと上の方から枝が出ている」(p.148)/自分に対する彼女の気持ち以外に二人を結ぶものはない。そして、人は恋だけで生きることはできない。恋は人と人を引き寄せるが、そうして作られた仲を維持するのは恋ではない。もっと別の、もっとしっかりした根を張るもの、日々の生活によって満たされるもの。もっと永続的な力。(p.163)/「夢中になった相手はいつだって特別に見える」(p.188)/そばにいる。一緒に暮らす。日々の体験を夕食の席で話しあい、お互いの判断を認め合い、苦難を前に二人で困惑し、解決し、生きてゆく。日本の安楽が与えてくれないものをそういう形で獲得する。この二人にしかできないことだから、それをやってみる。そちらの方へ自分は今誘われているのだ。(p.201)

  • 嫌いじゃない。けっこう好き。わかるところもけっこうある。

    でも、やっぱり男の人が書く恋愛小説、というか女性像は苦手だ。

    どこか、ひっかかるし、そんな風に上手く立ち回れない自分に劣等感みたいなのを感じて苦しくなる。

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著者プロフィール

1945年生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか多数受賞。他の著書に『カデナ』『砂浜に坐り込んだ船』『キトラ・ボックス』など。

「2020年 『【一括購入特典つき】池澤夏樹=個人編集 日本文学全集【全30巻】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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