真夜中の自転車

  • 文藝春秋 (1991年1月1日発売)
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感想 : 4
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  • 本 ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163127903

感想・レビュー・書評

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  • 世の中の隙間から外をじーっと見ているような女たちが登場する、91年の短篇集。「~だわ」「~のよ」みたいな話し方をする女って身近で見たことがなく、どうしても違和感がぬぐえないのだが、これって年の差なのだろうか。

  • ・図書館で、たまたま「自転車」という語句が目に入ったので借りてみた。特別自転車の本というわけではない。わりと古い本のようやけどまだあまり傷んでない。あまり借りられてないのかもね。
    ・著者の名前は知ってるけど読んだことはなかった。
    ・12の短編が収められている。読みやすい。
    ・全体を通した感想としてはどこかかすかに「奇妙な味の小説」ってとこだった。
    ・「トムとメアリーの丘」は看護師が医療の学習をするときに使っていた三体の人形。《だって、かれらは正しい人形だもの》p.24
    ・「真夜中の自転車」は自転車に乗りたくなった小学生の娘の影響で自分も乗りたくなった女に夫は・・・
    ・「耳の塔」は難聴の父と補聴器を買いにゆく。
    ・「電信柱」は親戚の酒乱の男たち。《「地獄は死んでから行くところやと、おばあさんが言うとった」「馬鹿。死んで行くのはあの世だ。ここよりほかに地獄があるものか」》p.91
    ・「南瓜」は腐り始めたお化けかぼちゃを剥製にしようとする同棲中の男女。
    ・「竜の首」はかつて海洋構造物の設計をしていて今は二人の子どもの子育てにいそしんでいる女と顔馴染みの巨大クレーン船。
    ・「贈物」は終焉を迎えた商店街の老いた店主たちと喫茶店で働く娘さん。この話はけっこう好きやなあ。《「昔は手に職を持った者が勝ちだったが、今は反対だね。職能者ほど飯が食えなくなる」「そうそう。右から左へ物を移す人間が、いちばんいい目をみるんだ」》p.153
    ・「春の蛇」は蛇や虫が苦手な女が庭の草むしりをしなければならないので虫が苦手ではない娘に協力をあおぐ。
    ・「天昇り」は恐ろしい斜面たち。《そうか。斜面は人生の話になるのだ、とわたしは歩きながらおもった。》p.207
    ・「山頂区」は犬とともに山に滞在。
    ・「海の地図」は父の勤める会社の海の寮に来た少女と地図好きな弟。
    ・「蟹杉」は。杉林の中のバンガロー村に泊まる恋人たちと消防車の集団。ところで蟹という漢字はゲシュタルト崩壊起こしやすそうに見える。

  • 12の短編集。
    男子大学生と同棲している女子大学生が語り手という村田さんの作品では珍しく感じるシチュエーションの「南瓜」。いずれ別れるんだろうなと思いながら読んでいくと哀しい結末。
    「竜の首」幼い二人の子供の手を引いてない時の両手の自由さにはっとする心境、つい些細な意地悪が口を衝いてしまう密かな残酷さ、ラストの巨大なものを間近に見る爽快感、等伝わってくる。
    看護学校の女性教員が十代の生徒達を見つめる「トムとメアリーの丘」、『八幡炎炎記』へと変奏されていく「電信柱」、他「贈物」「春の蛇」「山頂区」が印象に残った

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著者プロフィール

1945(昭和20)年、福岡県北九州市八幡生まれ。1987年「鍋の中」で芥川賞を受賞。1990年『白い山』で女流文学賞、1992年『真夜中の自転車』で平林たい子文学賞、1997年『蟹女』で紫式部文学賞、1998年「望潮」で川端康成文学賞、1999年『龍秘御天歌』で芸術選奨文部大臣賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞、2014年『ゆうじょこう』で読売文学賞、2019年『飛族』で谷崎潤一郎賞、2021年『姉の島』で泉鏡花文学賞をそれぞれ受賞。ほかに『蕨野行』『光線』『八幡炎炎記』『屋根屋』『火環』『エリザベスの友達』『偏愛ムラタ美術館 発掘篇』など著書多数。

「2022年 『耳の叔母』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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