- Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163135106
感想・レビュー・書評
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「シャーロック・ホームズは実は女性だった」という設定のもと、そんな彼(彼女)が過去の因縁、そして自分自身の生き方とに決着を付けるお話。
性別を逆転させること自体にはさほど真新しさを感じなかったのですが、何故ルーシー・ホームズという一人の女性がシャーロック・ホームズという男の探偵として生きることになったのか、という点については序盤で割かし丁寧に説明されていたのですんなりと入ることが出来ました。
ただこのルーシーという女性、中性的と解釈すればいいだけの話ではあるとは思うのですが、外見描写がそれなりに正典のシャーロックに近い感じだったので頭の中でどう想像しながら読み進めたものか若干戸惑った感じはあります(途中からはそこまで気にならなくはなりましたが……)
というか50歳近くなるまでよく女性だとバレなかったなあ、特にワトスンなんかン年も一緒に住んでいて、いくら寝室は別々とはいえ色々無理があるのでは? と思わないでもなかったのですが努めて気にしないようにしました。
女性に「変装」して敵の本丸に潜入する中盤以降の展開にはそれなりにハラハラさせられたので、そこは面白かった。
自分の本当の性別を知らないワトスンとのやり取りにうら若い乙女のような反応をするルーシーの構図が要所要所で見られるのですが、地の文の彼女の語り自体が必要以上に感情を表に出さないので印象としてはそこまでくどくはないです。
ただ逆にワトスンに深い友情以上の感情を抱いていたならそのあたりの葛藤をせめて地の文でくらいはもう少し色濃く出してくれても良かったんじゃないかなあとは思いました。が、これまで自分の信条の為に恋愛感情をシャットアウトしてきた人なのでこのくらいの濃度なのが一番いいのかも。
オチと設定以外で一番人を選ぶのがワトスンの描かれ方で、いくら「三大陸の女性を見てきた」「女性は君の領分だ」なワトスン先生でもここまでアレな人だったかなーといった人物に描かれています。
いくら妻に先立たれて心にぽっかり穴が空いていたとしても、(言葉は良くないですが)ポッと出の若い娘にたぶらかされて鼻の下伸ばして、挙句の果てにホームズとの友情よりその娘との結婚を取って(苦渋の決断であったにせよ)彼に実質的な絶縁宣言をする。にも拘わらずホームズが殺人容疑でヤードに追われている時には「彼がそんなことをする筈がないことは私が一番よく知っている。彼の力になりたい」みたいなことをルーシー(≒シャーロック)の前でいけしゃあしゃあと宣うワトスン先生にはうーん……ナンダカナー
この本はルーシーの心情を思いながら読むとかなりフラストレーションが溜まる気がしますし、そもそも語り部がルーシー本人なので読み手としては彼女の心情を思わずにはいられない。うーん……。
そのワトスン先生がお熱な相手がホームズ因縁の相手、モリアーティの娘さんなのですがこっちもこっちでどうにもツメが甘い印象で、若さと色気を武器にしているだけに見えてしまうのも勿体無い。ルーシーと同様に強い自立心を持った娘さんなのでもうちょっと魅力的に描いてほしかった……。
全体的に決して退屈な作品ではなかったのですが如何せん心に引っ掛かりを覚える登場人物ばかりだったのでどうにも素直な気持ちで読みきることが出来ず、最後に起るとある悲劇も「これで一応話を丸く収めたな」といった印象しか抱けず……せめてワトスン先生がもうちょっとお馬鹿さんに描かれていなければなあ、と、素材は面白かっただけに若干の不完全燃焼な気持ちが残るお話でした。
悲恋なら悲恋で良かったのですがもう少し恋させてあげて……それが彼女の選んだ生き方だとはいえ、何だかルーシーがひたすらに報われない印象でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いわゆるホームズのファンフィクション。ワトスンってあんなおバカさんだったっけ。そして、ホームズが特に謎を解いてない。ホームズ物としては微妙。
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シャーロックホームズのパロディ、二次創作作品。
まさかのシャーロックホームズは女性だったという設定。
なんだか好き嫌いが別れそうな作品。
女性でもシャーロックらしい英国紳士さは残されていて、事件や推理は本家に劣るけど楽しめた作品でした。
ワトソンとの流れは案外サックリしていて…
有名小説の二次創作として初めて読んだけどこんなものかという感想。
ほかの二次創作もあったら読んでみたいかな… -
「もしもホームズが、実は女性だったら」という二次創作小説です。ホームズとワトソン君の絆に友情以上の幻を見てしまったことのある人にはお薦めです、途中までは!ホームズの言動は女性設定でもきちんとホームズっぽくて、それでいて、優しいダメ男のワトソン相手に、狼狽したり、脈拍が乱れる様子がホームズ主観で描かれていて、すごく可愛かったです。途中までは。
ただ、ホームズの推理力は本物と比べるとかなり下がっています。ストーリーの進行上、ホームズの聡明さは犠牲になったのだ…。ホームズならこんな事件、すぐ推理して解決まであっという間に持って行くはず。でもまあ、ワトソンとの旅行における萌えシーンやかわいいホームズを描くためだったのなら仕方ないかな、と思います。本気でBLはちょっと抵抗があるけど、ホームズとワトソンって萌えるなーと思う人は絶対読んだ方がいい1冊だな、と途中までは思っていました!途中までは!って書きすぎだけど、私はこの本に出会えてよかったなと思いました。
この本を読んで「途中まではよかった…」と思った人は『わがいとしのホームズ』というまた別の二次創作(別作者)があって、そっちはガチBLですがえっちなシーンはないし切なくて萌えるので、読むといいと思います。キンドルで買えるよ。 -
イメージ参照(http://blogs.dion.ne.jp/kentuku902/archives/6044379.html)
サントリーミステリー大賞特別佳作(1992/10回) -
少しネタバレしますので、注意!<br><br>
確かこれは婦人公論か何かに当時発売の広告が載っていて、気になって本屋へいったら平積みしていました。日本では有名ですが、海外だと今ひとつのようです。<br>で、これは好みはっきり判れると思うんですが、衝撃的な部分は何といってもホームズが実は女だったという設定。そしてモリアーティの娘にワトスンが惚れるという流れ。第10回サントリーミステリー大賞特別佳作賞作品ですが、推理モノ・ミステリーという分類でなく、これは間違いなく恋愛小説ですよ、えぇ。<br>で、モリアーティの娘なら知的な美人であるなら納得もいくんですが、武器が色気しかない若い娘って感じの描かれ方で、そんな彼女にワトスンが惚れるかよ…ってツッコミも、ホームズが「私は実は女だった」という告白部分の衝撃度で薄れてしまうというか。で、まぁ女性だったとはいえ、骨ばって背丈が大きいホームズですから、決して美人でもなければ、普通の女性としての平凡さもない。ちょっと容姿に無理ありすぎますが。どう想像力を豊かに働かせても、女装したホームズしか浮かびません。しかもなんかジェレミーで想像してしまうよ。そんな彼女(ホームズ)に迫ってきて、うやむやにキスしてくる男なんぞ居る訳ですが、そんなシーンちっともドキドキもありませんや。<br>
女性設定には正直「おいおい」って感じなのですが、ただワトスンへの友情以上の感情を必死にとどめようとする様子などはやはり切ないもの。当のワトスンは他の女にラブな訳ですから、余計に…。これで女じゃなければ…なって感じです。<br>
ワトスンも原作よりもちょっと男としてどうなのかって感じがするわけですが、モリアーティの娘に騙されているとホームズに言われて憤慨するシーンなどは、駄目オヤジぽくて、少し面白かったかな。<br>
いくら鈍感なワトスンでも、モリアーティの娘を思うあまり、ホームズをそこまでないがしろにするのかな…って思いますよ。これが例えばメアリさんだったとしても、女性側の肩は持つにしろ、ホームズのことも最後の最後まで信じていようと思うんじゃないかな、彼なりの解釈で。こんな単純な男じゃないはず。だってぽっと出てきた女性より、ホームズとの時間の方が長いわけですから。<br>
最後の結末は…、いくら贋作でもそこまでしていいの…?!という衝撃なラストな訳ですが、それは読んでのお楽しみで。<br>
この作品はホームズというより、同じ名前のキャラクターが出てくる、別作品という捉え方で見ると、案外すんなり読めるかと思います。これを読んだ後に原作を読むと、かえってほっとしたりも。 -
ホームズの二次創作小説