ステッセルのピアノ

  • 文藝春秋 (1993年1月1日発売)
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本 ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784163141404

感想・レビュー・書評

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  • 深く傷ついた人には、美しい物語が必要なんだ。
    その一言につきる。

  • イエスキリストのために、そして囚人救済のために、教育と伝導の決死隊を選抜するという発想がまことに明治人らしい。微苦笑を誘われると同時に、その一直線な情熱に心を打たれるところがあるというのは古風な感想だろうか。

  • 五木寛之、「ステッセルのピアノ」を読む=
    年末にNHKで、放映されていた「坂の上の雲」を観ていて、そう言えば、昔、いつだったか、忘れてしまったが、以前に、購入して、読んでいなかったこの本のことを、想い出した。司馬遼太郎の「殉死」や、「坂の上の雲」は、既に、若い頃、読んでいたので、その映像化は、あらすじも含めて、特に、驚くべき物はない。むしろ、乃木希典とステッセルの水師営での会見は、亡くなった母などは、歌で、子供の頃から、知っていたが、私の世代などは、歴史的な知識として、そのアラブの愛馬や、ステッセル婦人愛用のピアノが、送られたことは知ってはいても、加えて、日本海海戦に向けて、バルチック艦隊に、乗せられ、ピアノも共々、はるばるロシアから、その後は、戦利品として、日本へ、送られたことは、あまり、知られていない。そして、それらが、パリ・ペテルスブルグ・大連・旅順・金州・金沢・旭川・遠軽・水戸・浜松と、その数奇な運命とともに、伝説の謎を追って、ピアノを媒介にして、その当時の乃木やステッセル、或いは、明治という時代に、生きたロシアや日本の関係者の人々の想いを、日露戦争で、亡くなった人々の鎮魂の意味も込めて、問いかけるものである。未だ、武士道や騎士道が、残っていた時代、或いは、人一人の命の値段が、とても安かった時代、20代で死んでいった若い兵士や、幼子や、若妻を残して、逝ってしまった人々と、乃木・ステッセルの伝説と虚像を、この本では、言及している。日露戦争の中でも、ひときわ凄惨を極めた203高地の攻防の中で、多大な犠牲を出した旭川の第7師団、金沢の第9師団、等も、決して、このピアノ伝説と無縁ではないし、偶然でもない。北海道紋別の遠軽(エンガル)にある生活学校の創始者、留岡幸助の明治期のキリスト教の考え方、ステッセルのスをとり、寿号(すごう)と名付けられて、その後、軍馬育成に、供せられた寄贈愛馬等の逸話は、明治という時代を、生きた人達の考え方・生き方を、ピアノというモノ(戦利品)を通して、各地を旅する中で、改めて、垣間見られたような気がする。因みに、なでしこ・ジャパンの沢 穂希(ほまれ)選手のの希は、成る程、乃木希典(まれすけ)の希と同じである。

  • 金沢などを舞台とした作品です。

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著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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