人質カノン

  • 文藝春秋 (1996年1月1日発売)
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感想 : 43
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  • 本 ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163160702

感想・レビュー・書評

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  • 1996年刊行の短編集。初出は1993年から1995年の雑誌掲載。そう昔でもないと思いながら手にしたのに、既に言い回しや小道具に時代の流れを感じることを発見。
    たとえば、網棚の雑誌を拾ったことから始まる物語(「過去のない手帳」)。兄妹の会話で、女子高校生が「アンアン」「ノンノ」を読むと宣言しているあたりや、そもそも若者が拾ってまで雑誌を読むという行為に時代を感じる。また言い回しでも「電話番号をダイアルした(「過ぎたこと」p179)」という表現も今はなかなか見ないもの。
    時間の流れが一番影響している話は、祖父が二・二六事件の決起兵士だったという「八月の雪」。現在ならば祖父は100歳を超えていて、小説中で描かれたような過去との出会い方は難しい。もう一世代昔の出来事になってしまったのだと思い知らされる。
    別にこの時代を記録しようとか思って書かれた訳でもないだろう、普通のエンターテインメント小説が、結果として時代のサンプルになっているのは面白い。

    一方小道具が古くなっても、描かれる人間の心理はリアルでまったく古さを感じない。人質にされた他人同士に芽生える妙な連帯感、裕福そうな他人への嫉妬等、このシチュエーションならこういう気持ちになるだろうなぁ、と思える。小説としての面白さは変わらないところが凄い。

  •  短編集。表題作の人質カノンは、好きになれなかった。殺された青年があまりに哀れで。深夜の学校に潜り込む話は軽快で、結末に希望があっていい。

  • さすが、さすがの宮部だ。ミステリー度は少ないものの、一篇一篇のていねいなつくりは余人の立ち入る隙はない。いじめもの三篇、フラレもの二編となんとなくの一貫がある。表題作が秀逸。コンビニを軸とした人間関係の距離の描き方はこれが永らくスタンダードになるということでいいのでは。

  • 今の日本が抱えている問題を実にたくみに取り込んだ短編集。

  • サクサク読める短編集。が、内容は半月で全て忘れてしまう類いの話ばかり(>_<)。
    生きることに前向きな話ばかり。それはいいんだけど、一つ二つの出来事で人生変わるほど人間て単純じゃないもん(>_<)。
    あんなことで自殺やめるような人は、元から死ぬ気なかったんだろうなと思う。本気でない人の煩悶には共感できない(>_<)。
    生きることの優等生が書いた、先生に褒められそうな小説。
    浅い......

  • 昔読んだ本。内容は忘れてしまった/(-_-)\
    リスト作成のため。

  • 宮部みゆきの作品は比較的どれも好きだけど、今回の作品はどれもあまり好きになれなかった。
    「つまり、何?」という感じの読後感が多かったような気がする。

  • 第4話まで読みましたが、どれもハマらず断念。
    いいことを言っているのですが、なんだか中身がないような…。

    宮部作品はハズレがないとよく言われますが、
    どうも私には当たり外れが多いように感じます。
    文体はとても丁寧で読みやすいです。

  • これもまた何度読み返したかわからないくらい読み返したもの。
    表題作の「人質カノン」は初めて読んだときは「カノン」の意味がわからなかった(今はわかる)。コンビニ強盗事件に巻き込まれた人たちの、つかの間の関係性が面白くて、悲しい。犯人に仕立て上げられた青年の人間像も悲しい。
    一番好きな作品は「八月の雪」。前半の、主人公の怒りがいつも胸に迫る。人生に生きる価値があるのか。ここまで踏みつけにされても、それでも生きる価値があるのかどうか教えてほしい、という思いは他人事には思えないから。
    それが、祖父の古い遺書を見つけたことから、立ち直っていくさまは、何度読んでも胸が熱くなる。結局そういうことなんだよ、と思う。そうやって生きていくことそのものが価値なんだろうと今になるとしみじみと思えてくる。
    他の作品も、人生の一瞬をあざやかに切り取っている。人の心の裏側に潜む、ひやっとした暗いものが、見事に描き出されていると思う。

  • 短編集

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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