- 本 ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163163604
感想・レビュー・書評
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短編集。ちょうど一年くらい前に読んだ「ゆうじょこう」がちょっと変わっていて、主人公の女の子が使う方言の響もよく、面白かったので、こちらも読んでみた。「ゆうじょこう」のあっけらかんとした作風に通じる話、逆に不穏さを隠さずに匂わせている話とあって楽しんで読めたけど、どれも薄味だったかな...。ただ「春夜漂流」はとてもよかった。こういう話がもっと濃くて変にすごくなってとび抜けて怖くなると、吉田知子の「日常的夫婦」みたいになりそうだけど、こちらの不穏さや不気味さをあえて隠したようなけろっとした雰囲気もなかなか捨てがたい。
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幻想的で、でも不思議とあたたかな物語。村田喜代子さんにすっかりハマる。四冊目。
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5編を収録。
「耳の叔母」は耳が人のように服を着て踊るイメージがユーモラス。また語り手の中で叔母は「顔のない人」と記憶され、しんしんとした寂しさ、憐れを感じる。
「ワニの微笑み」は社宅住まいの妻が夫に語る、上階に住む妻仲間から聞いた、部屋に夜毎に訪れるというワニの話。上階の妻の妄想?夫にそれを聞かせる妻の作り話?何とも奇妙な心持ちにさせられる。
そして表題作。『八つの小鍋』で一度読んでいたがやはり面白い。連日やって来て語る女の話に作中の聞き役の医師同様、ひたすら耳を傾けてしまう。医師も指摘しているが、この語りの増殖性というか過剰性は一体何なのだろう。何処まで本当なのか判然とせず、遂には神話めいてくる女の話。女性の豊穣性や得体の知れなさをも描いて、これぞ村田喜代子という一作。 -
日常とひっそり共存する温い狂気。
著者プロフィール
村田喜代子の作品





