カウント・プラン

  • 文藝春秋 (1996年1月1日発売)
3.21
  • (2)
  • (7)
  • (16)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 50
感想 : 9
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

本 ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784163165806

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 初期の作品だけにアクは薄め。ただ黒川さんらしさはあちこちに見られる。
    計算症、ごみ蒐集マニア、変わった性癖の人々が出てくる話が面白い。
    思わせ振りでいて、最後にそう来るとは。

  • ・カウントプラン
    日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作品
    ・黒い白髪
    ・オーバー・ザ・レインボー
    ・うろこ落とし
    ・鑑
    5つの短編集。

    最後の「鑑」が面白かったかな。
    でも黒川作品は短編より、長編の方が面白く感じました。

  • 2016_06_20-0059

  • 日本推理作家協会賞の短編小説部門の大賞受賞作品。表題作の「カウント・プラン」は、毒物混入恐喝事件を扱っている。目についたものは何でもカウントしてしまう計算症の主人公の日常を描いている。「黒い白髪」という奇妙な題名の作品は、単純な傷害事件を扱ったものと思った意外な展開が良かった。「オーバー・ザ・レインボー」は色に拘る犯人が少女を誘拐する。「うろこ落とし」はこの短編集で一番気に入った作品です。「鑑」はハエ男の異常な趣味を中心に描いた作品です。

  • 大阪ドームと反対の方向へ歩き、八百屋、魚屋、乾物屋という昔ながらの店が並ぶ泉尾商店街を歩く。500mは続くと思われる商店街を抜けると、町工場と長屋が同居し下町風情が色濃く残っている町並みにぶつかる。この町が、黒川広行の『カウント・プラン』の舞台となった大正区三軒屋東で、この一画にモデルとなった鍍金工場もあった。
     この作品は、計算症という特異な疾病を持つ孤独な男を主人公にした短編推理小説で、1996年の日本推理作家協会賞(短編)を受賞した作品である。
     南大阪のスーパマーケットに、「ユトルリアの壺を買ったが、壺は欠陥品であり、度重なる抗議にも耳を傾けないから、私は貴社に懲罰を科することに決めた。バレンタインデーの店内で毒物が発見されるであろう」という脅迫状が舞い込む。
     店長は、何かにつけてクレームをつけてくるクレームマニアの嫌がらせとも思ったが、毒物という人名に関わることなのでしぶしぶ警察に連絡する。 
     1984年に発生した「グリコ森永事件」では、特徴のある脅迫状が20通も新聞社に送られている。第一報は「サンケイ」「毎日」に送られた。
    『けいさつの あほども え おまえら あほか 人数 たくさん おって なにしてるねん プロ やったら わしら つかまえてみ ハンデー ありすぎ やからヒント おしえたる 江崎の みうちに ナカマは おらん 西宮けいさつ には ナカマは おらん 水ぼう組あいに ナカマは おらん つこうた 車は グレーや たべもんは ダイエーで こうたまだ おしえて ほしければ 新ぶんで たのめ これだけ おしえて もろて つかまえられん かったら おまえら ぜい金ドロボーや 県けいの 本部長でも さろたろかに起こった毒入りチョコレートで企業恐喝をした』
     強迫状指定のバレンタインデー、警察の厳重な警備にも関わらずスーパー内のペットショップの熱帯魚が死亡。ドッグフードから青酸ナトリウムが検出された。
     警察は、青酸ナトリウムを使用している、金属精錬工場、電解工場、メッキ工場と青酸ナトリウムを使用している工場から聞き込み捜査を始める。
     やがて、一億円の解決金を寄こせという犯人からの脅迫状が淀川区西宮原の支店に投げ込まれる。その脅迫状の切手から指紋が発見され、大正区にある鍍金会社の従業員福島が容疑者として割りだされた。
     この作品のキーワードは計算症であるが、計算症とは、物を見ると計算せずにはおれないという。本人はあほらしいとも病的とも自覚しながら、数えられる物なら何でも数えないと苦悶に耐えられないという病気である。
     そんな馬鹿なことと思うが、人は誰でも脅迫と恐怖傾向をもっているという。それが度を越すと日常生活に支障をきたすようになるだけである。
     たとえば疑惑症という病気は、『自分の行為を病的に点検するもので、手紙を書いたときなんかは、字が間違うてないか何度も読み返す。それでも不安で封筒に入れられない。ようやく封をしてポストへ入れたら、ほんまにちゃんと入ったかいなと、ポストのまわりを点検する。それで封筒が外に落ちていないことを確認しても、ポストの途中にひっかかっていないか気になって仕方ない。理性では封筒がポストのなかにあることを認めながらも、理由もなく不安にかられる』という。私もそうだという人は多いと思う。
      刑事二人は、容疑者の福島を張り込む。毎日、同じバスに乗り同じ時刻の私鉄に乗り換え、同じ時刻に会社に着き、同じ時刻に会社を出て、同時刻のバスで帰宅する。このタイムスケジュールがずれることは一度もない。容疑者は、どのような方法で現金を受け取ろうとしているのか、刑事の緊張は高まる……。
     さて、大正駅界隈は安くて美味い物を食わしてくれる飲み屋が多い。本文中でもこう書いている。 
     『大正駅へ歩いて、ガード下の赤垣屋に入った。ここはもともと酒屋の倉庫だったが、二年前の七月、改装して立呑み屋になった。五十がらみの無口なおやじと、手伝いのおばさん二人で切りまわしている』
      黒川博行は1949年、愛知県に生まれる。1986年「キャッツアイころがった」で台4回サントリーミステリー大賞を受賞。大阪を舞台にした作品多数。主な著書に『封印』『切断』などある。

  • いわゆる「異常な性癖」を持つひとびとによりかく乱される事件の数々。
    舞台が大阪でなにわぶしでストーリーが進んでいくかんじが意外といい。視点がころころ変わるのでちょっととまどったけど。
    けっこうおもしろかった。 さとこ

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

黒川博行
1949年、愛媛県生まれ。京都市立芸術大学彫刻科卒業後、会社員、府立高校の美術教師として勤務するが、83年「二度のお別れ」でサントリミステリー大賞佳作を受賞し、翌年、同作でデビュー。86年「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞を受賞、96年『カウント・プラン』で推理作家協会賞を、2014年『破門』で直木賞、20年ミステリー文学大賞を受賞した。

「2022年 『連鎖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

黒川博行の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×