レキシントンの幽霊

  • 文藝春秋 (1996年11月27日発売)
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本 ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784163166308

感想・レビュー・書評

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  • 『沈黙』が秀逸だった。回想的な語りの中でいじめの本質が綴られている。付和雷同的に強い者、いじめる側につく人達の無責任さ。それによって傷付き追い込まれる心理。唸ってしまった。私のイメージでは、春樹ワールドにはなかった作品だ。

    『氷男』はらしさ全開。他の作品も全部面白かった。
    喪失感を描く作品が多いのに読後感がもやもやしないのはなぜだろう。
    喪失感の数々は自分の経験とどこか共感をおぼえる。それを、スパッと割り切ってくれるからだろうか。非現実的なキャラクターがクッションになっているからだろうか。読後感はなぜか悪くない。

  • 1996年12月25日 第4刷 再読
    短編の方が好きかも知れない。
    大きな声で思うってフレーズは好きだ。

  • 短編集としては「TVピープル」よりもずっといい。最近の村上のひとつの傾向であるホラー小説っぽい「七番目の男」、人間の心の中にある闇の部分についての「緑の獣」、そして(これも村上のとくいとするところであるが)ファンタジーのような物語ながら、ふとしたことをきっかけにすべてが変わってしまい、もう元には戻れなくなってしまうという人間の運命の哀しみを描く「氷男」などバランスがよい。なかでもいわゆる「いじめ」という題材ながら(国語の教科書に載るのもわかる)、実は最後のところで鋭い日本人論になる「沈黙」(外側から日本を見てきた経験が活きているのか?)と、レイモンド・カーヴァーの作品のような深く静かな哀しみをたたえた「トニー滝谷」が良かった。

  • ノルウェイの森を読んでいて(また)、ワタナベ君が直子に「君が胸の手術で入院した時にキヅキとバイクに乗ってお見舞いに行ったよね」って話をしていることに気づき、このお話なんだったっけ…と調べ、出てきたのが「めくらやなぎと、眠る女」だった。長いバージョンを読んだことがあった気がして、かなり短く感じた。ノルウェイの森に収斂していく最後の物語なので、大切に読んだ。耳がときどき聞こえなくなるいとこの仕草が胸に残った。

  • 友人たちとの読書会のために、図書館で借りた本

    読書会では「沈黙」を課題本として、開催した!私は村上春樹あんまり読んだことなく、たしか1Q84が流行ってたときに読んだような??ぐらいのもので、あんまり知らん。

    読書会に向け、先んじて「沈黙」を読み、そしてそのあとほかの短編を読んだが……。こう、一冊読み終わると「沈黙」の異質さが際立つ。
    何も不思議なことが起きず、「え、お、お、終わった~~!?!?」ってとこで終わらず、「つ、つまりつまりつまり!?!?」「どどどういうこと!?!?」みたいな、わからんようでわかるような、しかしまったくわからんような読後感もなく、話が話として理解でき、終わっていく。
    村上春樹、いろんな文体を本当は書ける、小説家として文体を選択しているような、その自由自在さに、ほんまに筆力すごい人なんやな~と思わされた。いやあんまり村上春樹読んだことないけど(知らんけど、の意で)。

    それにしても、ほんまに喩えがすごすぎる、この喩え面白いな~、となんだかいちいちその喩えに痺れて、心地いいこそばゆい気持ちにさせられる。
    読んでいて気持ちいい。アニメーションで脳内再生される。とくに、七番目の男の、波が襲ってくるシーンの喩えは本当に素晴らしかった。私のなかの映像では、ジブリっぽいアニメーションで脳内再生された。

  • 村上春樹の短編集の中ではいまのところ1番好き

  • 沈黙が良かった

  • 20年ぶりくらいに読んだ。短編集。
    後半の3篇がよかったかな。表題作はよくわからなかった。
    単行本の表紙がいい。

  • 村上春樹を初めて読んだ。
    十年くらい前に、「トニー滝谷」という映画を誰が原作とか全然考えずに見て、けっこう好きだった。二年くらい前に元少年Aの「絶歌」を読んでいたら「トニー滝谷」のことが書いてあって、「トニー滝谷」って村上春樹が原作だったんだと初めて知った。それで、いつか村上春樹を読もうかなと思う時には「レキシントンの幽霊」を読もうと思っていた。
     
    私は、村上春樹の小説って主人公が「やれやれ」と言いまくるのかと思っていたんだけど、「レキシントンの幽霊」では全然言わなかった。

  • 読みやすい短編集。なかでも『沈黙』がよかった。
    会話している設定なのに聞き手については一切わからないし、話してくれる人が学生時代に受けたいやがらせに関する話。控えめに言ってかなり面白かった。

    人生には古い井戸のようなものがある。
    それは悪意を持って近づいてくる他者かもしれないし、防ぎようのない事故や天災かもしれない。それはまるで落とし穴だ。気づいた時にはもう遅い。近づかないのが一番良いけど、向こうからやってくる場合だってある。
    『沈黙』はそういったものに対する恐怖を感じる短編だった。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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