毛利一族

  • 文藝春秋 (1997年1月1日発売)
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本 ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784163167800

感想・レビュー・書評

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  • 「二の丸様誘拐」…輝元側室二の丸様にまつわる話
    「陰謀の山河」…大阪夏の陣の佐野道可にまつわる話
    「騎士アンヘルの望郷」…ザビエルに同行した騎士と青景左馬介の話
    「沼城の桜」…山崎興盛父子の沼城籠城の話
    「老将」…隆元死去に際する元就の話
    「暁の霜」…吉川元春の話

    「二の丸様誘拐」と「陰謀の山河」は、『異聞関ケ原合戦』で
    「輝元をめぐる秘話」として書き直されていると思われますが、
    こちらのほうが先に書かれたものだと思われ、
    こちらのほうが面白いです。

    「老将」は、おそらく、『覇道の鷲 毛利元就』で後半に描かれたものを
    書き直し(もしくはその逆)したもので、内容は被ります。

    吉川元春のことが描かれる小説は初めて読みましたので、
    「暁の霜」が面白かったです。

    古川薫さんは、小早川隆景がお気に入りで、
    輝元・秀元・広家の従兄弟三人もお好きなのでしょうか。

    ※2012/5/17追記
    『覇道の鷲 毛利元就』でも須々万沼城で切腹した
    山崎興盛父子のエピソードが特筆されていたよう。(忘れていた)
    「沼城の桜」と内容を同じくする部分があるかもしれない。

  • ・二の丸様誘拐
    いきなり現代設定です。あらすじとしては「歴史作家と歴史好きな警部が二の丸様誘拐の事件を追い、現代の裁判にあてはめて「誰にどんな罪があるか」と検証するという話。ひたすら「どの文献にどんなことが書いてあるか」と書いてあって「え、どの文献が何?」と読み返すことになりました(笑)。次第に文献のくだりはすっとばして読んでいきましたが。二の丸様誘拐事件とは『二の丸という美人を好きになった輝元。しかし輝元に輿入れすることをよく思わない二の丸の父が、さっさと他の男に二の丸を嫁入りさせてしまう。諦めきれない輝元。それを見かねた家臣が二の丸を誘拐』という話。輝元のボンボンぶりと隆景さまのスパルタぶり炸裂(笑)。しかし輝元の情けなさは隆景さまじゃなくても腕をねじりあげたくなります。が、隆景さまは「馬鹿な子ほど可愛い」らしいです。いいんですか、それで。最終的には「二の丸様は可哀想な人だった」で終わりました。

    ・陰謀の山河
    輝元世代、大坂の陣の折に毛利の武将を一人、軍資金と共に大坂に送ったという佐野道可事件について。輝元・秀元側からの視点(特に秀元)なので福原広俊・吉川広家が余計憎たらしく思えます(笑)。柳生宗矩の武人っぷりがかっこよかったです。切腹させられた道可の息子たちが憐れ。

    ・騎士アンヘルの望郷
    修道騎士の日本移住物語(笑)。大内・ザビエル・村上水軍の様子がなんとなくわかります。個人的に戦国キリシタン物というと山風の盲僧秘帖なのですがね。
    話としてはザビエルと共にやってきたが陶の謀反に巻き込まれ、そのままなし崩し的に村上水軍の一人となり、島の長になった修道騎士の物語を子孫が語る、という感じです。オルゴールと時計は珍しがられたのですよ。

    ・沼城の桜
    陶が立てた大内氏(ほぼ大友だ)側の武将の話。負け戦と知りつつ、主君への忠義を立てた城主とその息子と嫁。息子と嫁は篭城中に死ぬとわかっていて結婚し、二人とも果てます。あの戦国という特殊な観念の時代にあって、元就の仕官のすすめを蹴っての忠義立ては確かに立派です。 城攻めに際して小早川軍が散々な目にあっていました。

    ・老将
    元就がどれだけ隆元に執着していたかの話(笑)。
    隆元が暗殺されたに違いないと疑心暗鬼な元就は、疑わしきは罰せよとばかりに誅殺。それを見た桂元澄は「元就終わった」とひそかに思ったりするものの、最終的に一番疑わしい人をまたしても厳島で誅戮。元就はよくよく厳島に血を流す人でした。
    隆元死後の城攻めでのんきに矢文合戦していて、「それでいいのか」と思い、堅固な山城を攻めるにあたって穴掘っていくという原始的な手順で城までたどり着いたことに驚愕。


    ・暁の霜
    三矢の教訓を受けてから臨終までの元春物語・ダイジェスト版。これだけ読むと隆景はうまく世の中を渡っていったけど、元春はまっすぐすぎて渡れなかった感があります。疎まれていると察しつつも父上が大好きな元春。あんたいい人だ。元就の血を引いて文人気質な一面も見せてくれます。陶と義兄弟になったいきさつが、ひどく軽くてがっかりしました(笑)。しかし陶からのハートフルプレゼント・太平記は後世の役に立ちました。
    耄碌元就のために元春・隆景が苦労した一面も。

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著者プロフィール

作家

「2017年 『西郷隆盛 英雄と逆賊 歴史小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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