最後の将軍―徳川慶喜

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163170404

作品紹介・あらすじ

その英傑ぶりを謳われながらも幕府を終焉させねばならなかった十五代将軍の数奇な生涯を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 司馬遼太郎と言えば幕末の小説、
    幕末と言えば徳川十五代最後の将軍徳川慶喜。
     
    ということで、これはNHK大河ドラマの
    原作にもなった『徳川慶喜』を綴った物語です。
     
    徳川慶喜という人は、最後の将軍になってしまった
    悲劇の人だとか、時代の流れから為す術がなかった
    まさに時代に翻弄された人、という印象がありました。
     
    しかし、司馬遼太郎の『徳川慶喜』像は
    そういった印象とは違うものでした。
     
    頭が良すぎて周りの人がついてこれないくらい。
     
    未来が見えすぎて、徳川家の頂点に立つ
    存在でありながら、幕府がもうもたないことを
    どこか冷めた目で見ている、
    司馬遼太郎の『徳川慶喜』像は
    そのような印象だったようです。
     
    司馬遼太郎ファンはもちろんのこと、
    『徳川慶喜』像の一考察として
    読んでおくことをおすすめします。

  • 普通の文庫本一冊にまとまった、内容濃く読みやすい慶喜本。
    とにかくもう歴史のイベントが目白押しで、目の回るような忙しさだけれども、
    多分これでも、目一杯要領よくまとめてあるのだろう。

    慶喜の通説的な評価を一言で言えば、「一人大阪城を逃げ出した腰抜け」かな?
    この本を読めば、そこに至るまでの慶喜の熟慮の過程もよくわかるし、
    側近を次々奪われ、どんどん孤立無援に陥って行きながら、
    周囲の過剰で無責任な期待ばかりが重くのしかかっていく様子は気の毒なくらい。
    でも、本人がそのことをさほど深刻に受け止めてなさげなのが、救いといえば救いですか。
    大局を俯瞰する眼力がありながら、好まざる敗軍の将を担う羽目になる世紀の貧乏くじも、
    悲愴に陥らずに、結構さばさばとやり遂げてしまっているようにも見えます。
    ほんとうに高貴な心のお方なんですねぇ・・(笑
    何でもできる英邁な人でもあり、他人の心に斟酌しない、生粋のお殿様でもあり。

    前述の「大阪城バックレ劇」のとき、会津藩主で新撰組の親玉・松平容保だけは
    純粋に慶喜を心配して、護衛についてくれるのですが、
    「よ、よかった。まだ慶喜に味方してくれる人がいた・・・」
    などと、こっちは今までの孤立っぷりにハラハラしてた分、少しホッとしたのに、
    そもそも容保を連れて出たのは会津に対する人質に過ぎなくて、
    しかも無事江戸に着いたら彼のことは邪魔だから捨ててしまう、とか。おい(笑
    さすがにここは「ヒデー(笑」と、声に出してしまいましたよ。
    優しい人ではないですねぇ。そうそう人間的魅力に溢れたヒーローとは行きません。

    女性なしでは一晩もいられない、エロ殿様ぶりも苦笑しちゃうし、
    まぁそもそも、父親の斉昭公もそうだったみたいだけど。
    京の宮家からお姫様を正妻にもらうのはいいけど、
    ついてきた女官に手当たり次第に手をつけまくってしまい、
    次々におなかが大きくなる彼女達を見て、正妻の姫が、
    「どうしたみんな、病気か?」と心配したという・・・ってこれは別の本だったかも(汗
    やはり京から来た、才色兼備の女官「唐橋」も、
    手をつけちゃったら大奥にあげられなくなるからと言って慶喜は我慢してたのに、
    斉昭公にお使いに出したら、ついでにぱっくり食べられてしまった、とか、
    ここいらへんはもう、ヒド過ぎて滑稽で笑うしかないですわね。
    食い散らかされた女の人たちには申し訳ないですが。

    将軍に就いてわずか2年で、慶喜は政権を返上して表舞台から姿を消しますが、
    その後は趣味三昧で楽しく暮らしたというあたり、凡人と違ってて素敵ですな。
    権力なんか、ぜんぜん執着ないんですもんね。
    徳川16代当主になる家達さん(44話に出てた亀君?)と、
    引退後はそれぞれ別のルートで静岡に移るらしいのですが、
    お供が多くて経済的に四苦八苦する家達サイドの家来達を尻目に、
    珍し物好きな慶喜が自転車に乗って遊んでいて顰蹙を買ったとか。
    そういうのってほんと、すいませんが笑っちゃう。堂々とKYを貫く男。素敵(笑

    薩摩だけは生涯キライだった、っていうのも、個人的にはよく気持ちがわかりました。
    長州は初めから倒幕を掲げていて、爽やかなほどはっきり敵だったからキライじゃなく
    薩摩は、味方みたいな顔をしていてだまし討ちをしたからキライ、というのも、
    価値観がわかりやすくて好感が持てますわ。
    勿論、手段を選ばない力強さで目的を遂げた薩摩は凄いのですが、
    慶喜視点で見れば、極悪人は二枚舌の薩摩なんでしょう。いいじゃん、それで。

    そんな感じで、知りたいことがいろいろ勉強できた、面白い本でした。
    慶喜はいい奴じゃないかもですが、やっぱり私はわりとスキです。
    「篤姫」の慶喜の、あまりのマイナスオーラに当てられてこんなに勉強してしまいましたが、
    あの暗い俳優さんも、これから私、少し追っかけちゃうかもしれないですねえ。
    ほんとここまで来ると、私ってやはりゲテモノ好きなのか?という疑問も再燃か。
    それはそれでいいじゃん!(開直

  • 徳川慶喜の生涯。過去の歴史は、衰弱した権力を決して自然倒壊させていない。権力の倒壊は朽木のように風倒木のように自然に倒れる事はない。新興の者がいずこからかおこり必ず天使を擁し、過去の秩序に賊名を着せ、それによって天下を糾合して寄ってたかって討とうとする。将軍になれば、慶喜はその討たれ者の役になることを知っていた。

  • 何度目かわからないくらい読んでいる。もうちょっと詳しく書いて欲しかったなぁ

  • 第15代将軍徳川慶喜 自分が思っていた人物像と全く違った好印象を持った1冊になりました。
    以前に永井路子著作の「天璋院 篤姫」を読んだ時に徳川慶喜に不快感を持ったのですが、この本を読破してその奥の根底にあるものを突き止めることができました。
    この先は幕末に関する本も読んでいきたいと思っています

  • いつもの司馬遼太郎の作品とはまた違う感じがした
    最後の将軍、徳川慶喜を題材にした作品。
    水戸藩の徳川家は変わった人が多いのかしら…光圀しかり。
    知識人で教養もあり、なかなかいない将軍像。
    激動の徳川幕府から大政奉還もあり
    なんだかんだで生きて大阪城から江戸へサラッと逃げたのも、また彼の運もあればズルいとこでもあるわけで。
    慶喜が1番の明治初期立役者なのかもしれない。

  • 慶喜の聡明さが爽快と悲愴をひきたてる。しかし人の心を読む未熟さは若さと貴族らしさを感じさせる。
    大政奉還は慶喜でなければできなかっただろう。
    徳川幕府の歴史の終末を語る一冊。

  • 昔から慶喜が好きなのはこの本が原作になった大河ドラマの影響もある。
    司馬遼太郎で幕末といえば、『燃えよ剣』『竜馬がゆく』なんだと思うけど、司馬遼太郎が多くの人に読まれるのは、「慶喜」的なものを否定せずむしろ積極的に何かを書こう、もしくは書かなければならないというべつの一面があったからという気がする。
    一方で、芯を曲げないとか何ものかに殉ずるという英雄を書きながら、相反する性質をもった人物をわるく書かないのは、そうした人物を大目に見て、いわば「ダメなやつのこんないいところ」というのではなく、そもそもダメなやつとは一切思っていないところからくるんだと思う。
    だからこそ、最後の最後で慶喜が松平兄弟にする仕打ちは、書いていて相当苦しかったんじゃないかという跡が見られるし、そういう形跡やあとがきににじむ無念さを見ると、立て板に水とはどうしてもいかない部分こそ、凡百の歴史小説とは一線を画した、司馬遼太郎ならではの魅力につながっているのだと思う。
    作中でも役者・慶喜が下々相手に見事に弁じたてる場面がハイライトになる一方で、言い淀んだり、絶句したりする場面もあって、それこそが見せ場だともいえるし、劇的で鮮烈なイメージはむしろそっちの方にあるという気がした。
    日本のハムレットと言ってわるければ、幕末のハムレットと言っていいかもしれない。

  • 同じ幕末でも、新選組や坂本龍馬などに比べると、徳川慶喜に関する小説は少ないように思います。政治が絡むと話が固くなりがちであり、慶喜は捉えにくい部分が多いため、題材としては難しいのでしょうか。

    世界観、舞台設定:★★★★★(5)
    ⇒やはり、司馬先生といったら幕末!といったかんじで、読んでいて安心感があります。
    ⇒実在の人物ではありますが、これは小説なので「実在の人物・事件を如何に上手く脚色しているか?」という部分も、歴史物の楽しみの一つですよね。司馬先生はその辺のバランスが大変お上手だと感じています。

    登場人物の魅力:★★★★(4)
    ⇒司馬先生の「慶喜」にするまでに、大変苦心なさったんじゃないかと思いますが、立派に司馬先生の慶喜像が出来上がっています。
    ⇒大変魅力的に描かれていますが、実際にこんな人物が身近にいたら疲れるだろうなぁ^^;なんて想像してしまいました。

    ストーリー:★★★(3)
    ⇒なんでも出来るインテリ将軍 慶喜。しかし、"水戸学"的な思想や世情から、その才能は十分に発揮されなかった…読んでいて「この時にこうしていれば、慶喜はもっと生き生きと活躍できたんじゃないか?!」とヤキモキしてしまいました。または、慶喜があと100年はやく生まれていたらなぁ…
    ⇒慶喜が「先をみすぎていた」という描写が随所に見受けられますが、その点だけは「そうかな?」と私は違和感がありました。
    ⇒日本史の中で一番時代が動いた「幕末」に日本の頂点にいた男が、時の波に揉まれて、やがては飲み込まれてしまうまでのお話・・・特に本の中盤で「迫りくる時代の波に飲まれまい」と足掻いている部分は、読んでいて苦しくなる程でした。

    読み返したいか:他の慶喜本を読んでから、戻ってくる予定
    文体:他の著作よりも固めな文章だが、歯切れは良い
    読後の気分:時代とは一体・・・と暫く思いを馳せてしまった

  • 静岡の人間には「徳川慶喜」という人物は馴染みが深い。
    写真を撮るのが大好きで、絵の才能も長けていた。
    当時珍しかった風変わりな自転車で町を走り、注目の的だったことも有名である。市民からは「けいきさん」と呼ばれ親しまれていたという。

    しかし、歴史をよく知る人たちの間ではすこぶる評判がよくない。
    戊辰戦争の時の大阪城でのことがあるからだろう。
    配下の者を簡単に見捨てて逃げた将軍。
    しかし、彼の本当の意図はなんだったのだろう。偏りのない目で見た徳川慶喜という人物はどのようなものだったのだろう。
    (私はテレビを見ないので、大河ドラマで徳川慶喜をやっていたことを知らないのだ)
    そんなことを考えていたとき、ちょうど職場の院長がこの「最後の将軍 徳川慶喜」を読んでいたので、読み終えてから貸してもらった。

    「偏りのない目」で書かれた徳川慶喜。
    私からはそういう印象だった。気持ちよかった。慶喜のよくわからない行動も、十分納得のいく書き方だった。
    彼はその聡明さから、時代に選ばれた人物だったのではないか。私にはそう思えてならない。

    慶喜の「よくわからん」さをここまで表現する司馬遼太郎はさすがだと思った。他の本も読んでみたい。

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著者プロフィール

司馬遼太郎は、1923年、大阪市生まれの日本の歴史小説家・エッセイストである。故人。
本名、福田 定一(ふくだ ていいち)。大阪府大阪市生まれ。筆名の由来は「司馬遷に遼(はるか)に及ばざる日本の者(故に太郎)」から来ている。
特に歴史小説の大家として知られ、代表作は「竜馬がゆく」「坂の上の雲」「翔ぶが如く」「燃えよ剣」「新撰組血風録」「菜の花の沖」「花神」「世に棲む日日」「梟の城」「関が原」「功名が辻」「国盗り物語」「街道をゆく」「十一番目の志士」「城をとる話」「風神の門」「二十一世紀に生きる君たちへ」他多数。その多くが大河ドラマ化、テレビドラマ化、映画化、コミック化などの形でマルチメディア展開されている。

司馬遼太郎は産経新聞社記者として在職中の1960年に、『梟の城』で直木賞を受賞。
1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞を受賞したのを始め、数々の賞を受賞。
戦国・幕末・明治を扱った作品が多い。
1996年2月に72歳で逝去。
2001年には、東大阪市の自宅隣に司馬遼太郎記念館が開館。

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