- 本 ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163171807
感想・レビュー・書評
-
辻仁成氏が祖父をモデルに、筑後川の最下流、有明海に接する河口の島・大野島を舞台に描いた大河小説。
「何のために生きるのか」、「死とは何か」という生きていく中で誰もが必ず行き当たる命題を絶えず考え続けた主人公・鉄砲屋稔の人生が、淡々とした文章で彩られていく。
地味だけど退屈じゃない、一人の人間の生き様がそこに在る。
戦争で敵を殺したことに悩み続け、愛する者たちを失った先にたどり着いた、遺骨で仏を作るという試み。実際に大野島にそれがあるのですね。画像を検索して見たら、白くて綺麗な仏様でした。
作中で稔が至った死の境地、
「死とは常にそばに在ることだと思うとです。生きたもんのそばに在ること、それが安らかな死だと思うとです」という言葉に深く感じ入りました。
死が絶望なら生きる意味はあるのか?という彼の一生の命題に対する答えだったのでしょう。
穏やかで満ち足りた読後感を味わえる作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自らの祖父鉄砲屋をモデルにして、生と死、魂について書き上げた作品。
子供ん頃は死が分からんために恐ろしくて仕方なかったとです。ばってん今は違う。短かろうが長かろうが生を全うしたところに死という入り口があるとです。
死とは常にそばに在ることだと思うとです。生きたもんのそばに在ること、それが安らかな死だとおもうとです。 -
辻仁成さんの作品を読むのは芥川賞受賞作「海峡の光」含め7冊めとなりますがこちらの作品が一番好きでした。
終始、面白く一気に読み終えました。 -
作者が自らのルーツを探るため、鉄砲屋であった祖父をモデルとして“肉体と魂と死”を描いた作品。
筑後川に浮かぶ大野島の刀鍛冶屋に生まれた主人公の稔は、少年の頃から家族や友人、初恋の人の死に出会い、生涯を通して「死とは何か」を考え続ける。
場面場面がこわいほどリアルな映像となって読者に訴えかけてくる。そのためか、テーマが観念的でありながら非常に印象深い作品だ。民俗学的な側面が強いために海外の人の興味をひいて賞を受賞したのかも、と思った。
☆仏フェミナ賞 -
辻仁成、私的には五冊目。
デビュー当時の鼻に付く表現は、ぐっと影を潜めた。感情表現が、煩わしくなく、でも、ストレートに伝わってきた。
先入観なく(というかほぼ情報がない状態で)読みはじめたけれど、死を出発に生を思う主人公の人生に引き込まれた。
辻仁成は、角度を変えながら、生を語っているのかもしれない。
ただな、少し前に読んだ『右岸』とかぶるんだよな。だから、読むのは時々にしよ。生きることを真面目に考えたい時に(^^) -
「死とはなにか?」「残された者はどう生きたらいいのか?」を真摯に問い続けた男の一生。著者からの限りない尊敬が貫かれている。宗教臭さがまったくないのに、読後は祈りの気持ちになる。「作品の紹介」は的外れ。
-
2002/5/1読了
-
かなり好きです。
-
彼のお薦め、構想や視点が面白かった。一度読み終えてすぐに「最初はなんだったかな」って戻って読んでしまう本って、巧いなって思うんだけど‥そんな本だった。
著者プロフィール
辻仁成の作品





