- Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163173900
作品紹介・あらすじ
古代、ナギミヤの太陽神は翼のある蛇であったと言われている。蛇は天から来た竜によって翼を奪われ、妖怪へとおとしめられた。竜は暦を支配し、水と気温を統治し、生まれる子の運命をも決定した。その竜と蛇との間に生まれた女・滝波八雲は、はたして神話の破壊者となりうるか?ナギミヤ神話の誕生。
感想・レビュー・書評
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表題作と、続編の「竜女の葬送」収録。笙野頼子は最近の作品ほど私小説感が強くなっているように思うのだけど、90年代半ばに発表されたこちらは、まだ「小説」として読める距離感がちゃんとある。
とはいえ、特殊な宗教観に支配された故郷ナギミヤ、竜神に征服された蛇神の一族、架空の恋人(太陽神)に嫁ぐ「単身婚」の儀式、竜女という種族に属する母親の強い呪縛、やおい作家の主人公の名前「滝波八雲」など、笙野頼子臭はすでに全開。
珍しいなと思ったのはこの滝波八雲の外見が180センチ50キロというモデル体型であること。つまり作者の自己投影が薄いのかなと思っていたら、彼女のハトコとして登場した異実(ことみ)というキャラクターが、わりと定番の笙野キャラぽかった。
表題作では「単身婚」の儀式が描かれているけれど「竜女の葬送」は入院した母親を看取るまでの話で、ありていに書けば闘病記・看病日記みたいになってしまうのだろうけれど、これをおかしな宗教と幻想で味付けしてファンタジー化してしまうのが笙野頼子。のちの「金毘羅」に繋がるものを感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
現代にわだかまる、神話という名の足かせにとらわれた人々と、そこからの離脱をはかる主人公、といった感じだろうか。征服神の側である(と本人たちは思い込んでいる)「竜女」たち巽姓の者と、征服された蛇神の側である滝波姓の者の依存関係は、まるでねじれた糸が絡み合っているように複雑で、互いへの屈折した愛憎の念は読んでいて息苦しくなるほどだ。呪縛からめでたく逃れた主人公はずぶといほどにたくましい冷徹さを感じる一方で、とても大事な自己の一部を失ったように見えてならない。
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2011/1/9購入
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古代この地の太陽神は翼のある蛇だったが、天から来た竜により翼を奪われ妖怪へと貶められ、竜は暦、太陽、水と気温、生まれる子の運命を決定する閉鎖都市、凪刀之宮市、通称ナギミヤの竜の子孫巽姓の母を持ち、蛇の子孫滝波姓の父を持つ滝波八雲。2世代毎に蛇の太陽神の妻になる事が決定づけられている滝波の女。その婚姻の話『太陽の巫女』と蛇神の妻として、娘として、「竜女」である母を看取る『竜女の葬列』の2篇収録。
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図書館で借りた。
蛇の一族と龍の一族の反目しながらも依存し合っている姿、
蛇の一族にある神へ嫁ぐ儀式、がメインとなる物語。
1部が神へ嫁ぐ儀式について、2部が1部で嫁いだ女性の母親の死にまつわる話。
家に支配されている一族の話を読んでいると気が滅入った。
全体的に暗い。