- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163174204
作品紹介・あらすじ
「うちを連れて逃げてッ。」尼ヶ崎、大阪天王寺、赤目四十八瀧をさ迷う男と女の道行の果ては…。直木賞受賞。
感想・レビュー・書評
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過去を振り返る話であり今も主人公が無事なことは物語の始まりでわかってはいるのだけれど、主人公生島の行く末が気になりすぎて一気に読んでしまった。「アマ」の裏社会の闇が深くて広くて、彼と一緒にどきどきしているしかなかった。
雇い主のおばさんが気を使ってくれていること以外、登場人物が何を考えているか、生島にはわからない。彼らは言葉を操るなんてことはしないし、わかりあえるとも思っていない。わが身を差し出すことでしか表現できない、肉体しか持っていないひとたち。お金で解決しない底辺。
そんな「アマ」の世界に圧倒される一方で、自称「すかたん」の生島についての感想。最後の待ち合わせで喜ぶアヤちゃんにイライラするって、そうとう自分ばっかりの男ですね? けれどそれを隠そうとしてないから読んでいて奇妙な爽快感があって、どこかかわいい男なんだろうという気がしてしまう。これは作者の技量なのだろう。堕落願望を抱える読者がふらふらと吸い寄せられてしまう、こんな世界を書き上げてしまうとはいけない人である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2018/03/19
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桜庭一樹「少年になり、本を買うのだ」より、K島氏が大傑作と評していたので、気になって読んだ。
文章は平易で朴訥としており、大変読みやすかった。
なるほど、純文学(に類するヒューマンドラマ)を好んで読む読者層が多いのは頷ける。本を読むとは本来こういうものなんだなぁ、と思わされる。生活の中の所作が細やかに描かれて、まさに彼らの生き様を覗いている気分になった。
だけど、アヤ子と「私」生島の関係には眉をひそめるしかなく、「もうお前ら勝手にやってろ……」という気持ちになってしまった。アヤ子は男の思い描く女、という感じで、読んでいてげっそりしてしまう。
彫眉の変態親父発言も気持ち悪い。変態なだけの文学は読む必要がないと思っているので、ちょっとキツイ部分があった。
生島の小説を書く云々の話はどこへ行ったのだろう……とまあ色々釈然としない部分もあるが、現実とはそういうものなのかもしれない。
終わり方は、そう閉じるしかないか……とやや安易さを感じてしまい、少し目を覚まされてしまった。
文章を読む分には面白かったが、登場人物がどうも気持ち悪いし、舞台も展開も好みではなかったので、★3にした。★4に近い★3である。 -
請求番号:913.6/Kur
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私の生きてる世界とはまったく違う世界で、
それを理解、吸収するのにかなり難しかった。
人間って着飾って美しく見せようとする部分もあれば、
それとはま逆の見せられないどろどろした部分もある。
そういった隠れた部分が表現されてる。
なかなか評価が高いようだが、
まだまだ私は甘いんだろうな。。。 -
なんかしら期待はかけられるけど、結局誰からも当てにされない、そんなしょうもない男の話。
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映画の印象が強烈だったが、原著の雰囲気をよく出しているように思う。原作を読んでみると、素晴らしい。
独特のほの暗い雰囲気が醸し出され、自分もそのシチュエーションに嵌まり込んでしまったような錯覚を起こさせる。 -
暗い小説だったけど、主な舞台となる昔の尼崎の情緒が上手く描けてたし、登場人物もみんな魅力的だった。特に主人公のダメ男ぶりが群を抜いている。金遣いが荒いとか、女癖が悪いとかじゃない。意欲がなさ過ぎて、仙人の域に達している(でも、性欲はある)。そんな主人公が謎の多い女と関係を深め、わけあって心中の旅に出るんだけど、それが全然ロマンチックじゃない。月9からは一億光年ぐらい離れている。
読んでみて、好きな人は凄いハマると思うけど、顔をそむける人もいると思う。ちなみに直木賞受賞作品。 -
すごかった。こんなに印象深い作品を読んだのは本当に久々だと思う。落ちきれない人間の悲しさと無様さみたいなもので胸が熱くなった。
もうタイトルで結末が知れちゃってるんだけど、それでもこういう結末か、と驚くと同時に切なくなった。アヤちゃん側の感覚で読むとまたまったく違うんだろうけど。 -
人生を踏み外して零落。読んでいていちいち痛い。
あまり感想が書けません。