龍秘御天歌

  • 文藝春秋 (1998年5月1日発売)
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本 ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784163176802

感想・レビュー・書評

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  • 朝鮮からつれられてきた陶磁器職人たち(渡来人)の葬式に纏わる衝突(日本式との)を描いた作品。

    初代は自分らは朝鮮人であるという自覚が強い。日本式の葬式とクニの葬式は全く違い、日本式でやることはクニでは不敬なことと見做され、逆もまた・・といった感じで、二重の葬儀を挙げることになる。

    冠婚葬祭ってそれまで隠されていたものがあからさまに問題点として表出してくる。葬儀の様式だけではなく文化の衝突というか異文化の中で自分らはいかにして生きてきたか、何を殺して何を生かしたかという選択のお話として描かれていたように思う。

    3代目(孫)の立場だとわれわれはこれからも日本で生きていく日本人だから婆の気持ちもわかるけど日本式にして欲しいという意見が強く出てきたり、折り合いの付きにくい気持ちを殺したり。

    どんどん形だけのむなしいものになる日本式の葬式。
    儀式はたんなる形式としか私は思ってないからこんなもんかな、とは思うけど、やはりしっかりと送り出したいという気持ちの強さが現れている婆のクニ式の葬儀はどこか滑稽だけど華やいで見えた。

  • 秀吉の二度の朝鮮出兵で拉致されてきた陶工たち。日本で様々な苦労をしながらも窯元としての地位を築きあげた辛島十兵衛(張成徹)が死んだ。朝鮮人として朝鮮式葬儀で送ろうとする妻・百婆と、参列する藩重臣や今後の生活を考え和式の葬儀を執り行おうとする長男・十兵衛の争い。
    それにしても海峡を一つ挟めば、これほど違うものか。静かに感情を抑え込ますような日本式の葬儀と、感情を高ぶらせるための儀式である半島式の葬儀。
    物語として見た時に、葬儀後と前が入り混じってたり、人物が朝鮮名・日本名で出てきたリ、多少掴みにくい所がある。一方で百婆夫婦が粘土を捏ねるシーン、女たちがシーソーのようなもので遊ぶシーン、そして最後の百婆と十兵衛が取っ組み合うシーンなど、鮮やかに記憶に残る情景がある。

  • 2009.01.20. 百年佳約の前作。百婆、ものすごく生きてます。婆とは思えぬほど強烈で力強く生きてます。こちらのテーマは、お葬式。本当に国(年代もか)が違うと、こんなにも違うのか。登場人物たちは、それぞれの思惑の中ですごく生きています。

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著者プロフィール

1945(昭和20)年、福岡県北九州市八幡生まれ。1987年「鍋の中」で芥川賞を受賞。1990年『白い山』で女流文学賞、1992年『真夜中の自転車』で平林たい子文学賞、1997年『蟹女』で紫式部文学賞、1998年「望潮」で川端康成文学賞、1999年『龍秘御天歌』で芸術選奨文部大臣賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞、2014年『ゆうじょこう』で読売文学賞、2019年『飛族』で谷崎潤一郎賞、2021年『姉の島』で泉鏡花文学賞をそれぞれ受賞。ほかに『蕨野行』『光線』『八幡炎炎記』『屋根屋』『火環』『エリザベスの友達』『偏愛ムラタ美術館 発掘篇』など著書多数。

「2022年 『耳の叔母』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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