陰の季節

  • 文藝春秋 (1998年10月1日発売)
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本 ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784163180809

感想・レビュー・書評

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  • 表舞台にはあまり出てくることのない、人事等を担う警務部内の人間模様を描いた短編集。
    第一線で活躍する警察官たちの物語とは違い、犯罪者との華々しい攻防戦はないけれど、警察官たちの内面が丁寧に描かれてあり胸が締め付けられた。

    警察といえど体制は民間企業と同じ。時に人事異動に備えて大規模な人事パズルに頭を悩ませることも。地味な作業だけれど組織を創る上で決して欠かせない作業である。ここを疎かにすれば組織全体のバランスも崩れ業務にも支障をきたすだろう。
    縁の下の力持ち、という言葉がよく似合う今回の登場人物たちに共感を持った。

    表題作と『黒い線』が特に良かった。
    同僚たちから「陰の人事権者」と囁かれる警務課調査官のエリート警視・二渡真治が特に魅力的。いつも冷静で感も冴えていてクールな印象を持つ二渡が、同僚に対して時々見せる温かな眼差しに救われた。
    もっと二渡の物語が読んでみたくなる。

    それにしても、男社会の中に生きる少数派の婦警たちの苦労には胸が締め付けられる。
    鼻が利くとか絵が上手い等、仕事をする上での強みを持って男たちと対等に張り合おうとする婦警もいれば、敢えてマスコット的存在に甘んじて笑顔を振りまき男たちの間を無難に渡り歩く婦警もいる。
    どちらが正解かなんて野暮なことは言わないけれど、封建的で頭でっかちな男たちと共に仕事をすることは、特に日本国内ではどこの社会も大変なことだとつくづく思った。

    • mofuさん
      地球っこさん

      二渡さんのシリーズはこんなに続いているんですね♪
      人気がある証拠ですね。
      しかも仲村トオルに上川隆也と二人の俳優さんにも演じ...
      地球っこさん

      二渡さんのシリーズはこんなに続いているんですね♪
      人気がある証拠ですね。
      しかも仲村トオルに上川隆也と二人の俳優さんにも演じ分けられていて(//∇//)

      またこのシリーズは追いかけていきますね。
      たしか『顔FACE』は昔テレビドラマで見たような。。
      仲間由紀恵さんが主演だったかな?
      読んで確かめてみますね。
      ご紹介して頂いて、ありがとうございました(*^^*)
      2022/06/12
    • 地球っこさん
      mofuさん

      『顔』のドラマ、覚えておられましたか!
      私はあのドラマのオダギリジョーが大好きでした。
      ツンな感じもよかったけれど、最後の笑...
      mofuさん

      『顔』のドラマ、覚えておられましたか!
      私はあのドラマのオダギリジョーが大好きでした。
      ツンな感じもよかったけれど、最後の笑顔にやられました。
      でも、あのオダギリジョーが演じた刑事さんは小説にはいなくて、残念でした……

      mofuさん、私の書き方が悪かったのですが、二渡さんが主だって登場するのは、「陰の季節」と「刑事の勲章」だけだったと思います。
      あとの〈D県警シリーズ〉は、ほんのちょっとの脇役としての登場なんです。
      誤解させてしまったかも、ごめんなさい(^^;
      2022/06/12
    • mofuさん
      地球っこさん

      オダジョー!カッコよかったですよね〜♡
      朝ドラのほのぼのお父さんのオダジョーも良かったけど、刑事役もハマってますよね♪
      小説...
      地球っこさん

      オダジョー!カッコよかったですよね〜♡
      朝ドラのほのぼのお父さんのオダジョーも良かったけど、刑事役もハマってますよね♪
      小説の中には登場しないなんて…残念。
      でもあのドラマ好きだったので読むのが楽しみです。

      あと二渡さんは脇役でもいい味出してそうなので、シリーズを追いかけてみますね(^o^)
      2022/06/12
  • はっきりとは思い出せないが最近読んだ本か何かの中に本書が紹介されていた。警察物を変えた本。25年ほど昔の出版で、なるほど図書館の本でも珍しいほど劣化していた。
    しかしたった4編の連作短編の重みをずしりと感じる内容だった。「64」をはじめすごい長編はいくつも読んでいたが、これはすごいの一言に尽きる。

  • 半落ちや64は読んでいたのにデビュー作を読んでいなかったことに今更ながら気付いて読み終えました。

    警察組織の監察、鑑識、秘書課など今まであまり中心とされていなかった裏方の管理部門で起こった問題に焦点を当てた短編集。
    組織内の心理戦が多く謎が解明されても綺麗に終わることはなくどこかモヤっとしてしまうところもありましたが面白かったです。

  • 松本清張賞を受賞した表題作を含む、四編が収録された短編集。

    横山秀夫さんのデビュー作です。
    警察小説と銘打つ作品は数あれど、警務課、監察課、秘書課など、これまで取り上げられなかったと思われる部署にスポットを当てる、その着眼点が素晴らしいと思いました。

    殺人事件の捜査でなくとも、謎の提示から真相の解明に至る道筋は、ミステリそのものといった印象で、更に言うならこの作品集は、警察内部の日常の謎といった趣もあるのではないでしょうか。

    「新しい警察小説」という言葉にも納得の一冊です。

  • 警察の裏側を描いた話。
    内部の出世競争は激しく、みんなが人事に敏感だ。その人事権を握るエース。だけど、人間誰しも完璧ではない。出世ばかり気にして、友情も家庭も無くしてしまうのはあまりにも哀しい。

  • わけあり

  • 面白い推理小説ではある。読んでいて警察内部の組織の実情や登場人物の心情がよく描かれていて飽きない。しかし、陰の季節と地の声の2篇を読んで、残り2篇が読みたいとは思わなかった。推理に徹しまた描写が現実的であり、ユーモアや、ロマンスや、冒険、そういった楽しみごとがないせいだろうか。

  • (収録作品)陰の季節(松本清張賞(1998/5回))/地の声/黒い線/鞄

  • ⑧/101

  • これも横山特別基準で★4
    4.0点

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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