- 本 ・本 (520ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163193502
感想・レビュー・書評
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クライム・ウェイブ
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エルロイの連作集。
読み終えた後、なんとも落ち着かなくなる
居心地の悪さみたいなものがたまらなく好きです。 -
●エルロイは10歳の時、母親を殺されている。
犯人はまだ見つかっていない。
長い間、彼は母親の記憶を封印し、
母親とその死から、目をそらし続けていた。
しかし、ふとしたきっかけで母の殺人事件に関する調書を読む機会を得た事から、あらためて母と、母に似た女たちの記録と向き合って行く。
●・・・と言うのが、最初の『ボディ・ダンプ』(=死体遺棄の意)と、それに続く一章分の短編の概要。
ここらあたりは、愛憎半ばする母親に対する受容の自伝的記録(・・・)って感じですか。
まったこの殺されたエルロイのかーちゃんてのが、ミス石鹸(←・・・違ったかな)だかなんだかになるくらいの美人な上、息子の目を気にせず男を引っぱり込むような人だったんで、エルロイ少年としてはあんまり好きではなかった模様。
母と似たもの同士で女好きだった父親は、息子の前ではまだしも控えめだったので、彼としては父の方が好きだったみたい。
母の死を聞かされても、ほとんど衝撃を受けなかったようですし。
ここは「表面的には」ってエクスキューズを入れるべきなんでしょうが。
●だからって、これを読むとエルロイの作家としての資質のベースが見て取れる、なんてことは言わない言えない。
確かに大きな影響を受けてはいるだろうけど、父親から聞かされた50年代ハリウッドゴシップや、ジュニアハイスクールの記憶や(←この頃の話も入ってます)、作家になるまでの経歴や、他諸事情もありましょうし。
むしろ肝心なのは、現在のエルロイが作家としてやって行く上で、母親の死を十二分に意識している、と言うことなんかねえ、と思ったのでした。
「それこそ作家的資質だ」と言われると、そうなのかもしれないけどさ。苦笑。
●エルロイ好きなら面白い短編集です。しかし、エルロイのおかげで、殺人とか暴力とかレイプとかヤクとか言う活字にすっかり慣れたなあ・・・。
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