本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
本 ・本 (168ページ) / ISBN・EAN: 9784163194301
感想・レビュー・書評
-
間違った電車に乗り着いてしまった終点の町。その不思議な雰囲気に定住してしまった画家の主人公。
一昔前が舞台か(百円札が出てくるし…)温かい人々、温かい空気、自然、何もかもが心地よかった。素朴な町で少し不思議な体験もし、身も心も癒されていく。
人々が普通に助け合い、生も死も普通の事と受け入れる。古き良き日本の姿。今もこんな場所あるんだろうか。自分の中にある日本人の根本みたいな物が、体験したことのないはずの昔の生活に対し懐かしさでいっぱいになる感じ。
小学生のチサノちゃんが大人びた(どちらかというと、おばあちゃんっぽい)口調で訥々と人生を語ったりするのが愛おしく微笑ましい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
〔!〕ダイノ岩森のすべてにつながってちょっと不思議な山里の四季
〔内容〕逃げ出したオカメインコを連れ戻し猫のミーコは顔を洗った/ノートンとともに眺めるやまざくら/梅雨明けをチサノに告げた雨坊主/ほおずきを持たしてくれたおたまさん/いちばんに春を見つけるつるねえや/ブランコを漕いでた女夢のよう賢い犬とともに消え去る/夢うつつミーコ案内妻と会う。
〔感想〕表紙絵が気に入って、読んだ/最も好きなタイプでした。〔Ⅰ〕ちょっと不思議〔Ⅱ〕短編連作〔Ⅲ〕あっさりしてる〔Ⅳ〕会話に味ある〔Ⅴ〕ちょっと可笑しみ〔Ⅵ〕ちょっと哀しみ〔Ⅶ〕ほどよくテキトー。
■簡単な単語集
【雨坊主】渓流のそばに住んでいて梅雨入りと梅雨明けを教えてくれる。疎開できていたが溺れ死んだ少年らしい。水の精という説もある。
【大蔵】もと石炭屋の親父。町長。けちんぼうらしい。ミチコに入れあげているらしい。
【オカメインコ】チサノの家にいる。町で英会話を教えているノートン・ホワイラーさんにもらったそうだ。「グラフタヌン」としゃべる。一度逃げたがミーコが捕まえてきた。
【おたまさん】二百メートルくらい離れたところに一人で住んでいるおばあさん。
【シロ】おたまさんが飼っていた名犬。
【白い糸】ダイノ岩から生物も含み森の中のあらゆるものに延びている。
【常蓮寺】住職はお経をあげながら居眠りするような人。
【せいさん】製材会社の社長。ぼくの絵画教室の生徒で、ノートンの英会話教室の生徒でもありわび助の馴染みでもある。高橋政治という名だが「せいさん」という呼び名は製材会社のせいらしい。名の方は政治と書いてしょうじと読むらしい。人を楽しませるのが好き。
【ダイノ岩】駅から半里、チサノの家までの途中にある。観光案内では大主岩と書かれている。まずこの岩があり、木が生えて、鳥や獣がやってきて、人間が住み着くようになったそうだ。
【タケクマ先生】チサノの学校の先生。
【竹山先生】医師。
【チサノ】ヤマスソ・チサノ。小学生。いずれ奉公に出てお嫁さんになる予定。
【チサノ記録】《かもしれないことでしんどい思いをするのは、嫁にいってもないのに後家さんになった心配をするようなもんだ》p.10。《手間をいとうなら最初から飼わないことだ》p.38。《英語なんか身につけたって、嫁入り道具にはなりゃしないけど》p.42。《女は若いうちにこうして苦労になれている方が嫁にいったときにいいんだよ。》p.64。《女は損だ、小さいうちは頭の苦労、大きくなったら嫁の苦労》p.66。《手間をいとってちゃ女はやっていけない》p.80。《まったく横着者がうらやましい。マメな性分に生まれついた者は一生苦労する》p.99。《いくら学問のためでも、感心なわたしだっていやになる。なのに一銭にもなりゃしない》p.153。
【ノートン・ホワイラー】英会話を教えている。美しい詩をまるごと暗誦するという教え方。アイルランド出身。十五年日本にいる。太い方から見ても細い方から見てももとが小さく見える不思議な望遠鏡を持っている。《どんなウィスキーも存在する資格があります。胸を温めますからね。》p.33。《こうしてこの池を眺めることによってわたしは他のいろいろな物もまた眺めているように思います》p.103。《わたしはいろんなところにいきましたが、たとえわたしがどこにいようと、心の中に故郷を入れて運んでいるようなのです》p.104。《生命のもとは一つではないのだろうか、ということです》p.150。
【風景】《歩き始めたときは見慣れた景色だが、そのうちその「見慣れた」という感覚が薄れてくる。「見慣れた」と思ったのが錯覚のように思えてくる。》p.122
【風景画】ノートン《いい風景画は、モデルになった風景の魂を伝えているのではないか、と》p.77
【ぼく】画家。チサノの家に下宿することになった。十年以上前に妻を喪っている。
【ミーコ】チサノのうちの猫。ぼくは気に入られたようだ。
【ミチコ】ブランコを漕いでいた女。芸者ではないが水商売。気持ちのいい食べっぷり。
【よろず屋】ぼくが下宿することになった家。チサノとおばあちゃんがいる。
【わび助】この町一番の売れっ子芸者。三十代半ばの陽気な人で、よく飲みよく笑う。ホワイラーの思い人だが結婚している。 -
大事な、でも、もう会うことのできない人に会うことができるとしたら・・・。
個性的な人々が暮らす村にさまよいこんだ主人公「ぼく」。村での日々が遠い日の悲しみをゆっくり癒してくれる。
居候先の弁のたつ小学生「チサノ」にも注目です。 -
ほんわかとしたかわいい一冊でした。挿絵がすごく好き。グラフタヌンとつぶやくオカメインコの大ファンです。
-
少し切ないファンタジーと言ったところでしょうか・・・
何か懐かしいモノや切ない感じを思い出させる話。
急がず騒がずのんびりと流れる日常。
こんな所があるなら住んでみたいですが、こんな所に住もうと思ったら
現状全てを捨てないと住めないんだろうな・・・ -
読書相談室で「異界と現実との境目がはっきりしない」本として紹介されていたので、オール讀物連載時に読んでいたのですが、再読してみました。で、§^。^§ §^。^§実にいいです。単行本で一気に読めたせいか、連載時とはかなり違った印象をもちました。主人公の画家が汽車を乗り違えて着いてしまった山の中の村。実際に存在するのかどうかさえ曖昧な書き方なのですが、どこか懐かしい感じのその村にそのまま住むことになり、穏やかな毎日ながら、不思議なことが次々に起こります。下宿しているお宅の孫娘チサノの妙に世慣れた台詞がおかしいような、せつないような。「一度ゆっくり楽がしてみたいけど、手間をいとってちゃ女はやっていけない」なんて言うんですよ。なんて小学生だ、と思いながら、その場の空気にしっくりなじんだりしてね。安井寿磨子さんの絵がまたいい味わいを物語に付け加えてくれて、気持ちのいい夢の中にいるような、ゆったりした気分にさせてくれます。芦原すなおさんは、「青春デンデケデケデケ」が最高だと思っていたのですが、全く違った作風のこの作品もいい!優しさ溢れる異界のお話、大事な一冊になりました。
-
オカメインコが好きなので思わず手に取ってしまいました。
著者プロフィール
芦原すなおの作品





