オカメインコに雨坊主

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 68
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (165ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163194301

作品紹介・あらすじ

ちょっぴり怖くて、あたたかい。見知らぬ人が懐かしい。ここは生者と死者が出会う場所。

感想・レビュー・書評

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  • 間違った電車に乗り着いてしまった終点の町。その不思議な雰囲気に定住してしまった画家の主人公。
    一昔前が舞台か(百円札が出てくるし…)温かい人々、温かい空気、自然、何もかもが心地よかった。素朴な町で少し不思議な体験もし、身も心も癒されていく。
    人々が普通に助け合い、生も死も普通の事と受け入れる。古き良き日本の姿。今もこんな場所あるんだろうか。自分の中にある日本人の根本みたいな物が、体験したことのないはずの昔の生活に対し懐かしさでいっぱいになる感じ。
    小学生のチサノちゃんが大人びた(どちらかというと、おばあちゃんっぽい)口調で訥々と人生を語ったりするのが愛おしく微笑ましい。

  • そもそもここにきたのはうっかり乗る列車をまちがえたせいで、ほんの偶然なのだが、今はそれが偶然ではなかったのではないかと思っている。つまり、ちゃんとうっかり乗りまちがえるような心の傾きがぼくにあったのだと、そんな気がするのである。

    絵を描くのが仕事のぼくが「ちゃんとうっかり」間違えて出会った山間の町での暮らし。
    「一度ゆっくり楽がしてみたいけど、手間をいとってちゃ女はやっていけない」
    「まったく横着者がうらやましい。マメな性分に生まれついた者は一生苦労する」
    なんてぼやく小学生、チサノに冷たく手厚くお世話されながら。
    薄緑の桜の下で、ノートンさんのアイアラン(アイルランド)の思い出を聞きつつお酒を飲み。
    梅雨の山奥の清流で、雨坊主に出会い。
    帰らぬ息子を待つ、近所の女性の育てたほおずき。
    迷った雪山でぼくを助けてくれたヒト。
    鮮やかなツツジの中のブランコ。
    移り行く季節の切り取り方にうっとりする。
    夢か現か。
    戦争の名残があるのでちょっと昔のお話のようだけど。
    電子音のない暮らし。車の音さえ聞こえない。
    グラフタヌンというオカメインコ
    尻尾がサッサッと揺れるミーコ
    セミの声をうるさいと思いながら、スイカの汁の香りをかぎつつ、汗にまみれて昼寝をしたい。
    夏休みを過ごしたくなるそんな町。

  • なんとも不思議な世界。偶然たどり着いた町で小学生のチサノに出会ってうちに来ればいいと言われ3年。主人公は絵を描きながら町に溶け込んでいく。その間に町の知り合いがなくなったり、亡くなった妻に会ったり、死の世界は怖くないんだよ、こんなにも身近で隣り合っているんだよと言われたような感じだった。チサノのおばあちゃんみたいな話し方がおもしろかった。

  • 大事な、でも、もう会うことのできない人に会うことができるとしたら・・・。
    個性的な人々が暮らす村にさまよいこんだ主人公「ぼく」。村での日々が遠い日の悲しみをゆっくり癒してくれる。
    居候先の弁のたつ小学生「チサノ」にも注目です。

  • たまたま、電車でたどり着いた町に引っ越してきた主人公を 町の人たちは温かく受け入れます。 少し不思議な事もおこりますが、すんなりと受け入れられる。 小学生のチサノの言動が、大人びていて愉快です。 見知らぬ人に親切にできた、隣近所仲がよかった、 少し前の日本に思いをはせます。 今でも田舎はこうなんだろうか?! そうだとしたら、とても素敵なんだけど。

  • ほんわかとしたかわいい一冊でした。挿絵がすごく好き。グラフタヌンとつぶやくオカメインコの大ファンです。

  • 少し切ないファンタジーと言ったところでしょうか・・・

    何か懐かしいモノや切ない感じを思い出させる話。
    急がず騒がずのんびりと流れる日常。

    こんな所があるなら住んでみたいですが、こんな所に住もうと思ったら
    現状全てを捨てないと住めないんだろうな・・・

  • 読書相談室で「異界と現実との境目がはっきりしない」本として紹介されていたので、オール讀物連載時に読んでいたのですが、再読してみました。で、§^。^§ §^。^§実にいいです。単行本で一気に読めたせいか、連載時とはかなり違った印象をもちました。主人公の画家が汽車を乗り違えて着いてしまった山の中の村。実際に存在するのかどうかさえ曖昧な書き方なのですが、どこか懐かしい感じのその村にそのまま住むことになり、穏やかな毎日ながら、不思議なことが次々に起こります。下宿しているお宅の孫娘チサノの妙に世慣れた台詞がおかしいような、せつないような。「一度ゆっくり楽がしてみたいけど、手間をいとってちゃ女はやっていけない」なんて言うんですよ。なんて小学生だ、と思いながら、その場の空気にしっくりなじんだりしてね。安井寿磨子さんの絵がまたいい味わいを物語に付け加えてくれて、気持ちのいい夢の中にいるような、ゆったりした気分にさせてくれます。芦原すなおさんは、「青春デンデケデケデケ」が最高だと思っていたのですが、全く違った作風のこの作品もいい!優しさ溢れる異界のお話、大事な一冊になりました。

  • オカメインコが好きなので思わず手に取ってしまいました。

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著者プロフィール

1949年香川県観音寺生まれ。早稲田大学大学院博士課程中退。1990年、『青春デンデケデケデケ』で第27回文藝賞、翌91年、第105回直木賞を受賞する。著書に『スサノオ自伝』などがある。

「2010年 『青春デンデケデケデケ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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