光源

  • 文藝春秋 (2000年9月12日発売)
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本 ・本 (360ページ) / ISBN・EAN: 9784163194806

感想・レビュー・書評

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  • 近頃の新型コロナ禍のせいで、図書館で本を借りることができなくなってしまった。図書館が臨時休館しているからではなく、心理的に、不特定多数の人が触れたものを手に取ることに躊躇うようになったのだ。
    仕方がなく、本棚から、かつて読んだ本を引っぱり出して読む。桐野夏生『光源』の奥付を見ると平成12年9月とある。札幌に越した年の秋、まだ独身だった僕は何の気兼ねもなく、気になる作家の新刊が平積みになっていたら買っていた。映画を撮る側の、それもシナリオを書く若い藪内、撮影監督の有村、女性プロデューサーの玉置。20年前にこの本を読んだ時は、若い藪内にシンパシーを感じていた。もう50も半ばとなると、藪内の青さが鼻につく。どうにか、周りを懐柔して、その場を収めようとする玉置の視点が近いのかもしれない。
    学生映画はスタジオやセットなどないから、どのシーンもロケだが、低予算の劇場公開映画もオールロケで、その様が詳しく書かれている。アメコメが原作で、SFXを駆使すれば、なんでも可能なハリウッド映画より、人の手で丁寧に紡いだような、低予算映画の質感が好きな僕にはたまらない。物語を追っている間だけ、20年以上前に時間が遡った気になる。しばらくは本棚を漁ってみよう。

  • 何なのこの顛末⁉︎驚きのストーリー

  • 映画制作に携わる人達の思惑は面白かったのに 後日談は俳優より有村の話しにして欲しかった

  • この世界のことはよく知らないけど、これってあるある話っぽい。
    桐野さんらしからぬあっさり感で、拍子抜けした。
    やっぱり桐野作品には、日常を突き抜けた刺激を求めてしまうのです。

  • 映画を作る個性的な人たちの愛憎人間模様を生々しく描くドラマです。過去の苦い思い出を引きずるヒロインの女プロデューサー、その元恋人の一流カメラマン、駈け出しの新人監督、元はヤクザ映画の冴えない脇役からヒロインのお蔭で今をときめくスター男優。そして元アイドルが今やヘアヌード写真集で話題を狙うぶりっ子女優。ヒロインの夫(元映画界の大監督)とその別れた老妻、男優の異母妹もからみ、それぞれが持つ心の傷を浮き彫りにしていく。ある男性の死という事実に魅せられた人々が集まって、彼を主人公とした映画を作るという設定の下で、その死と虚しさ、そして漠然とした罪悪感を意識せざるをえないという重いテーマのフィクションでした。映画を作る環境がリアルでよく分かり興味深いものがあります。

  • 映画を作るうえでのお話でした。
    カメラマン、プロデューサー、監督、助監督、脚本、俳優、プロダクション。
    最初は、全く知らない映画界のお話で浸透するのに時間が
    かかるが、中盤から味が出はじめる。
    出はじめるんですが!!
    納得できないフィニッシュに個人的には残念でした。

    人間的な弱い部分と夢へ向かい人生を切り開こうとする
    想いと行動が描写されている・・・

    でもなぁ・・・・・・

  • 桐野さんの書くものは基本全部興味深く読むのだけど、これはちょっとだけ退屈感が…。
    特に最後のその後のはなし。
    他にも書いてるかたがおられたけど、
    私も要らないと思った派。

    あの二人にそれほど興味が無かったのも確かだし、知りたくなかった感じもある。

  • 一つの映画を作り上げていく過程に、それぞれの立場の思惑を絡めた作品。

    いい映画を作りたい、と集まった人間たちだが、
    それ以上に、裏ではプライド、出世欲、色恋、孤独、嫉妬、羞恥心、損得勘定、が渦巻いている。
    当然と言えば当然のこと。

    みんなが自分を出せば、絶対に成立しない世界。
    誰を「立てる」かで方向性も変わってくる。

    映画製作ってこんななんだ!て言うのも面白かったけど、
    うまいこと隠していた裏の感情が噴出し始めてからが、
    さらに面白かった。

    しかし、最後の主演俳優の隠された物語は、蛇足感があったな・・・

  • 「いい映画を作る」
    そのことに妄執を燃やす人間たちの物語

    ミステリでもなく、サスペンスでもない。
    衝撃もない

    え?これ、桐野夏生作品だよね?って確認しちゃいました。
    誰も死なないしw

    ただ、たんたんと話が進み
    人それぞれの「映画への想い」が絡まりあう話。
    なのに、いつのまにか引き込まれてしまう
    そんな不思議な作品でした。

  • 映画の世界なんて興味ないなあと思ってたのに
    出勤前の5分から寝る直前まで手が出てしまった。
    まるではまってしまったロープレ。
    もう、桐野夏生さんすごい。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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