睡蓮の長いまどろみ (下)

  • 文藝春秋 (2000年10月13日発売)
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感想 : 9
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本 ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784163196008

感想・レビュー・書評

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  • 読み終えて、決してすっきりするものではない
    それだけは伝えておきたいな、と思います。

    だけれども読み終えて、決して生みの母は
    悪くない、最初に抱くであろう順哉を捨てたというわけではないということは理解できると思います。

    だけれども彼女が抱えていると(思い込んでいる)
    彼女に関わると…のことは
    順哉にも遠回りの形で巡り
    とばっちりを与えてしまいました。

    ただし、これに関しては決して彼女の罪ではないです。
    たまたまかかわってしまった子が
    もろい部分があり、
    ある日完全に崩壊してしまっただけ。
    たまたま、ほんとうにたまたま。

    でも意外なのは生みの母は順哉には
    実は初対面時で気付いています。
    わかるんだろうね…

  • 好き

  • 40数年ぶりに知る1歳の時に別れた産みの母と父の秘密。そして母との正式な名乗り。数万年を経ても美しい花を泥の中に咲かせる睡蓮の種がキーワードとなり、仏教的な無常観と時空を超えた感動を産みの母、父、育ての母、そして自死した少女、その他の人々との結びつきがもたらしてくれます。蓮と睡蓮の違いがよく分かりませんでしたが、蓮は泥が汚ければ汚いほど美しく咲く、また妖艶なような、清楚なような登場するヒロイン(母!)の象徴でもありました。

  • 下巻は一気に読めました。
    上巻で描かれていた事の真相が全てここに書かれてあるからです。
    何故、母は夫と離婚し主人公を捨てたのか。
    誰がウェイトレスの女性にいたずら電話をしたのか。
    謎の手紙の差出人は誰なのか。
    全てが解きほぐされてゆく。

    それでいうと、この下巻は因果でいうと「因」、上巻が「果」だったのかもしれません。
    「因果具時」といい、蓮の花は花果同時に咲くために、因果の両方をもつ例えに使われています。
    皮肉にも主人公の母はその蓮の花と睡蓮を混合し、それが決意をするきっかけになるのです。
    勘違いから生まれた結果-。
    それが正しい選択だったのかどうかは誰にも分からない。
    ただ、結果だけを見ると、それは「森末村」という恵まれない子供たちを救う施設として形を結んでいる。

    また、その母親の中での睡蓮のイメージがそのままこの本のイメージとなっているように思いました。
    不幸せな境遇、苦労の連続、人に言えない秘密、誤解や嫉妬といったもの全てを泥として、そこからあるがままに咲く蓮の花を自分自身とするなら-。
    睡蓮とは手をかけて育てても花の色、形といった優劣には影響がない花なのだそうです。
    だから園芸家にとっては妙味がないのだとか。
    それはそのまま、その人間のあるがままの姿、魂の姿を象徴しているように思えました。
    登場人物が何気なく言った、
    「気のきかないってはのは、持って生まれたもんなんですよ。どんなに教えられても、気のきかない人ってのは、気のきく人に変われないんです」
    という言葉が何故か心に残りました。

    唐突と思われる出来事にもそれまでに積み上げられた原因がある。
    そしてそれはほんのちょっとした出来事がきっかけとなり、その人間にある決断をさせる。
    その辺が自然にさらっと描かれていて、それでいて深い話だと思いました。

  • 読了日不明

  • あまり面白くないけど読みやすい。ここが作品の不思議な所です。
    中年の主人公、目の前で自殺した喫茶店の女性から絡んだ糸と、彼の実の母の話。何気なく描きながら、実はしつこい。で、細かいかと思えば彼の子供とか奥さんは気がつかないくらいに流している。主張をちゃんと盛り込んでるし、人物の描き方は感心するのですが、落ちが抜けてるぞ〜、ってとこもある。
    ともあれ文章もしっかりしてるし、中味も深みがあり好きになりそうです。ただ、連続で読もうとは思わないなぁ(゚ー゚)(。_。)

  • 複雑・・。人間模様も何も。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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